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第一部 オーシュー王国編 1章
幕間2.とある宿屋の最終兵器(ちっちゃいの)
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こんにちはー!わたし、キャロルっていうの!おかあさんと2人でユーゲンダンジョンの近く村で宿屋をやってるの!お客さんはほとんどダンジョンに行く冒険者のひとたちなんだよ!
男のひとが多くて、みんなおかあさんにやさしくしてくれるの!どうしてかなぁ?おとうさんがいなくてかわいそうだと思っているのかな?
たしかに、少し前まではさみしい時もあったけど、今は全然さみしくないよ!すてきなおにーちゃんとおねーちゃん達のパーティーがおともだちをプレゼントしてくたから!
この、わたしの肩にすわってるのがおともだちの『カペラ』っていうの。かわいいようせいさんなんだよ!
◇◇◇
こんにちは。この宿の女将のルーチェです。娘のキャロルと2人でこの宿を切り盛りしています。数年前にダンジョンで主人を亡くして未亡人となりました。この宿は主に冒険者さんを相手にしていますので色々とあります。泣き寝入りする事も何度か有りました。でも、この子を育てる為です。泣きたい気持ちを耐えていつも笑顔でいるよう頑張ってきました。
そんな頑張りが報われたのか、キャロルはすくすくと素直で元気に育ち、冒険者のお客さんも私達を守ってくれる人が増えてきました。それでもいやらしい事を強要しようとしたり、代金を踏み倒そうとする人も中にはいます。屈強な冒険者相手に女1人で何が出来るでしょうか?私に出来る事は娘の前では笑顔を絶やさない事だけでした。
そんなある日、あの方達がやって来たのです。
◇◇◇
とある悪い冒険者
この宿だな。美人の女将が居るってのは。なんでも手篭にしても泣き寝入りするそうじゃねえか。ひひっ、おいしい思いをさせてもらうぜ?
◇◇◇
とある善良な冒険者
さて、ダンジョンは明日から潜るとして、今日はこの宿にしようか。へえ、綺麗にしてるしなかなか繁盛してるみたいだな。お?女将さんは美人だし小さいお嬢ちゃんも健気に手伝ってるのか。可愛いもんだな。
◇◇◇
とある噂を聞きつけてやってきた悪徳商人
ふむ、この宿ですね?例のものがいるというのは。なに、母娘の2人など赤子の手を捻るようなものでしょう。話によると母親は器量がよく、娘の方も愛らしい顔立ちだとか。どちらも高く売れそうですねぇ。うしししし。
◇◇◇
たまたま立ち寄った旅の商人
ここが料理が美味いっていう宿ですか。楽しみですね。ちょうど食事時なので混み合っていますがなんとか相席をお願いする事ができました。
同じテーブルで今から食べようとしているのは常連の冒険者のようですが。
「いただきます。」
と両手を合わせてから食べ始めるのです。他のテーブルでも常連と思しき人はみな「いただきます。」をしているようです。
それは何の儀式か尋ねると、少し前に近くのダンジョンを攻略したパーティーがいつもやっていた食材と食事する事が出来る事への感謝を示す行為だそうで。そのパーティーにあやかり冒険者達がマネをし始めたのだとか。それなら私も「いただきます。」
「ごちそうさまでした。」
え?食後もやるんですか!?
◇◇◇
とある善良な冒険者の目撃体験そして聞いた噂
あ、あのいやらしい笑みをうかべた客、女将の尻に手を…伸ばしたら手首が折れた!?
あ、あの人相が悪い客、転んだキャロルちゃんを蹴り飛ばそうとして…足が折れた!?
あ、ガラの悪い連中を引き連れた豚みたいな商人が宿に入って…これない!?何か見えない壁があるのか?
ん?キャロルちゃんの周りを何か飛んでるな…あ、肩に座った?
「ねえキャロルちゃん、その、肩にいるのは妖精さんかい?」
「えー、うん、おじさんカペラが見えるのー?カペラが見える人にはダンジョンでいいことがあるんだってー!よかったね、おじさん!」
俺はまだ若いんだけどなぁ…
「おい、にーさん。」
ん?なんだろ?
「なんだい?」
「ルーチェさんとキャロルちゃんを邪な目で見ちゃいけねえぞ?この宿にはな、妖精が住んでんだ。あの親娘に悪さする奴は痛い目にあう。ホントだぞ?それからな、妖精が見えた冒険者はダンジョンでレアドロップに預かるらしいぜ?」
翌日、ソロで一階層を探索していたが、ゴブリン倒してまさかの宝箱がドロップした。マジかよ。
◇◇◇
こんにちは。ルーチェです。カズトさんが来てからというもの、この宿は大繁盛です。不埒な輩もカペラちゃんが退治してくれるので安心です。いつかは噂を聞きつけた貴族が50人くらいの騎士を引き連れて来たようですがカペラちゃんの前に尻尾を巻いて逃げ帰ったとか。
それもこれもカズトさんのおかげです。あの日、3人でお風呂に入り一緒のベッドで眠ったあの日。誘惑したのですが抱いてもらえませんでした。でも、いつかこの宿にいらっしゃる事があれば感謝の気持ちを全身で、ええ、文字通り全身でご奉仕して差し上げなければ!
◇◇◇
こんにちは!キャロルです!カズトおにーちゃんがカペラをおいていってくれてから、毎日いいことばっかりだよ!たまにこわいお客さんがくるとおかあさんが悲しい顔をしていたけど、最近はこわいお客さんはなぜかケガをして宿からにげだしていく事が多くなったの!
おかあさんもしあわせそうだからキャロルもしあわせ!でも、おにーちゃんがいっしょにいたらもっとしあわせなのに。また来てくれないかな、おにーちゃん。
あ、お客さんだ!いらっしゃいませ!おとまりですかー!?
…わあ!!うそみたい!!おかーさーん!!お客さんなのー!すごいお客さんなのー!!
男のひとが多くて、みんなおかあさんにやさしくしてくれるの!どうしてかなぁ?おとうさんがいなくてかわいそうだと思っているのかな?
たしかに、少し前まではさみしい時もあったけど、今は全然さみしくないよ!すてきなおにーちゃんとおねーちゃん達のパーティーがおともだちをプレゼントしてくたから!
この、わたしの肩にすわってるのがおともだちの『カペラ』っていうの。かわいいようせいさんなんだよ!
◇◇◇
こんにちは。この宿の女将のルーチェです。娘のキャロルと2人でこの宿を切り盛りしています。数年前にダンジョンで主人を亡くして未亡人となりました。この宿は主に冒険者さんを相手にしていますので色々とあります。泣き寝入りする事も何度か有りました。でも、この子を育てる為です。泣きたい気持ちを耐えていつも笑顔でいるよう頑張ってきました。
そんな頑張りが報われたのか、キャロルはすくすくと素直で元気に育ち、冒険者のお客さんも私達を守ってくれる人が増えてきました。それでもいやらしい事を強要しようとしたり、代金を踏み倒そうとする人も中にはいます。屈強な冒険者相手に女1人で何が出来るでしょうか?私に出来る事は娘の前では笑顔を絶やさない事だけでした。
そんなある日、あの方達がやって来たのです。
◇◇◇
とある悪い冒険者
この宿だな。美人の女将が居るってのは。なんでも手篭にしても泣き寝入りするそうじゃねえか。ひひっ、おいしい思いをさせてもらうぜ?
◇◇◇
とある善良な冒険者
さて、ダンジョンは明日から潜るとして、今日はこの宿にしようか。へえ、綺麗にしてるしなかなか繁盛してるみたいだな。お?女将さんは美人だし小さいお嬢ちゃんも健気に手伝ってるのか。可愛いもんだな。
◇◇◇
とある噂を聞きつけてやってきた悪徳商人
ふむ、この宿ですね?例のものがいるというのは。なに、母娘の2人など赤子の手を捻るようなものでしょう。話によると母親は器量がよく、娘の方も愛らしい顔立ちだとか。どちらも高く売れそうですねぇ。うしししし。
◇◇◇
たまたま立ち寄った旅の商人
ここが料理が美味いっていう宿ですか。楽しみですね。ちょうど食事時なので混み合っていますがなんとか相席をお願いする事ができました。
同じテーブルで今から食べようとしているのは常連の冒険者のようですが。
「いただきます。」
と両手を合わせてから食べ始めるのです。他のテーブルでも常連と思しき人はみな「いただきます。」をしているようです。
それは何の儀式か尋ねると、少し前に近くのダンジョンを攻略したパーティーがいつもやっていた食材と食事する事が出来る事への感謝を示す行為だそうで。そのパーティーにあやかり冒険者達がマネをし始めたのだとか。それなら私も「いただきます。」
「ごちそうさまでした。」
え?食後もやるんですか!?
◇◇◇
とある善良な冒険者の目撃体験そして聞いた噂
あ、あのいやらしい笑みをうかべた客、女将の尻に手を…伸ばしたら手首が折れた!?
あ、あの人相が悪い客、転んだキャロルちゃんを蹴り飛ばそうとして…足が折れた!?
あ、ガラの悪い連中を引き連れた豚みたいな商人が宿に入って…これない!?何か見えない壁があるのか?
ん?キャロルちゃんの周りを何か飛んでるな…あ、肩に座った?
「ねえキャロルちゃん、その、肩にいるのは妖精さんかい?」
「えー、うん、おじさんカペラが見えるのー?カペラが見える人にはダンジョンでいいことがあるんだってー!よかったね、おじさん!」
俺はまだ若いんだけどなぁ…
「おい、にーさん。」
ん?なんだろ?
「なんだい?」
「ルーチェさんとキャロルちゃんを邪な目で見ちゃいけねえぞ?この宿にはな、妖精が住んでんだ。あの親娘に悪さする奴は痛い目にあう。ホントだぞ?それからな、妖精が見えた冒険者はダンジョンでレアドロップに預かるらしいぜ?」
翌日、ソロで一階層を探索していたが、ゴブリン倒してまさかの宝箱がドロップした。マジかよ。
◇◇◇
こんにちは。ルーチェです。カズトさんが来てからというもの、この宿は大繁盛です。不埒な輩もカペラちゃんが退治してくれるので安心です。いつかは噂を聞きつけた貴族が50人くらいの騎士を引き連れて来たようですがカペラちゃんの前に尻尾を巻いて逃げ帰ったとか。
それもこれもカズトさんのおかげです。あの日、3人でお風呂に入り一緒のベッドで眠ったあの日。誘惑したのですが抱いてもらえませんでした。でも、いつかこの宿にいらっしゃる事があれば感謝の気持ちを全身で、ええ、文字通り全身でご奉仕して差し上げなければ!
◇◇◇
こんにちは!キャロルです!カズトおにーちゃんがカペラをおいていってくれてから、毎日いいことばっかりだよ!たまにこわいお客さんがくるとおかあさんが悲しい顔をしていたけど、最近はこわいお客さんはなぜかケガをして宿からにげだしていく事が多くなったの!
おかあさんもしあわせそうだからキャロルもしあわせ!でも、おにーちゃんがいっしょにいたらもっとしあわせなのに。また来てくれないかな、おにーちゃん。
あ、お客さんだ!いらっしゃいませ!おとまりですかー!?
…わあ!!うそみたい!!おかーさーん!!お客さんなのー!すごいお客さんなのー!!
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