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111話 新生ふぁむちゃんとその日常
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アダムとエヴァの行動範囲から考えて、エデンはそう遠くない場所にあるはず。
そう信じて、三戸達はローラー作戦を展開していた。一日に十キロ程度の速度で基地を移動させ、周辺地域を高機動車やLAVでくまなく捜索する。運転出来るのが三戸とアンジー以外にも、藤井、中谷、岡本が増えたのは大きかった。
三戸、アンジーのチーム。藤井、ジャンヌのチーム。中谷、関羽のチーム。岡本、サラディンのチーム。この四つのチームに別れ、基地を中心に四方へ散っていく。
リチャードとナイチンゲールは基地で留守番だ。リチャードは地形操作で基地を移動させる為に離れられないし、ナイチンゲールもアダムとエヴァの護衛の為に置いてある。これは、四体のデーモン達を指揮できるのはナイチンゲールしかいないからだ。
そして忘れてはならない存在がもう一つ。浮遊する火器管制システムこと『ふぁむちゃん』である。当初は丸みを帯びた、ファントムをデフォルメした姿だったのだが、今は戦闘モードのアンジーを二頭身半のマスコットキャラにデフォルメした姿になっている。
△▼△
「アンジーさん! このふぁむちゃん、これでも十分可愛いんすけど、アンジーさんの姿をちっこくしたようなのに出来ないっすか!?」
そう血涙を流しながら頼みこんでいたのは岡本だ。当初は彼の特殊な嗜好に驚きを隠せなかった一同だったが、次の岡本の発言に沈黙した。
「何言ってるんすか! 可愛いのは正義なんですよ! そしてメカメカしい超絶美少女が世界を救う為に戦う姿は尊いんすよ! そしてその美少女と共に戦う俺達には、癒しが必要なんすよ! ではその癒しとは何か! そう、マスコット化したアンジーさんなんですよおおおっ!」
「えっと、マスター?」
涙を流しながら熱弁を振るう岡本に少々引き気味のアンジーが、三戸に伺いを立てる。
「うん、まあ、出来るならやってくれるか? このままじゃ岡本も死んでも死に切れんだろ」
「はぁ、マスターがそう仰るなら……」
いつもは三戸の指示には歯切れのよい返事をして即実行に移るアンジーだが、珍しく今回は乗り気ではないみたいだ。
三戸としてもアンジーの気持ちは分からなくはない。嫌だというよりは戸惑っているのだろう。自分の姿を模したものがマスコットとして扱われるのは確かに微妙な気持ちになるだろう。
そして十分ほど悩んだアンジーが、ふよふよと浮かんでいるふぁむちゃんに手を翳すと、ふぁむちゃんが眩い光に包まれる。
――おおおおおおっ!?
そしてその光が収まった時、どよめきが起こった。
ファントムの武装を纏った凛々しい銀の戦乙女が、二頭身半にデフォルメされた愛くるしい姿。身長三十センチ余りのサイズのそれが、『ぶ~~~~~ん』と音を立てながら飛び回る。
そしてその新生ふぁむちゃんが三戸の肩にストンと座ると、周囲からため息が漏れた。
「ちょっと恥ずかしいですけど、これは可愛いですねっ、マスター!」
その出来栄えに、アンジーも満更でもない様子。さらに、中谷や藤井、さらにはリチャードやナイチンゲールまでもが、岡本に向かってサムズアップしていた。その口の動きはもちろん、『グッジョブ!』である。
「ふぁむちゃん! 俺の肩にも! ほらここ!」
岡本が期待に満ちた目で自分の肩を叩きながら、ふぁむちゃんに向けて訴える。
しかしふぁむちゃんは、三戸の肩の上でぷいっ! とソッポを向いた。
「そ、そんなぁ~」
こうして新生ふぁむちゃんの誕生秘話は、岡本の涙で始まり岡本の涙で終わった。
△▼△
あの日以来、みんなに愛でられているふぁむちゃんだが、日々ぶ~~~~んと飛んでいるだけではない。
ある時は三戸の肩でくつろいだり、アンジーの頭の上でぐでーっとしていたり、どうにか餌付けをしようと試みる岡本の横っ面にキックをお見舞いしたりと忙しい日々を送っている。
そのふぁむちゃんが本領を発揮するのは、三戸やアンジー達が車輛での偵察に出かけた後だ。
「では、今日も頼みますね、ふぁむちゃん」
射撃訓練場に集まった留守番組の面々がホバリングしているふぁむちゃんの前に一列に並んでいる。その中から代表してナイチンゲールが声を掛けた。
すると、ふぁむちゃんが上空に浮かび上がり、数十個もの不規則に飛び回る物体を出現させた。アンジーがアダムとエヴァの射撃訓練の際に的として使っていたドローンである。
そしてふぁむちゃんは短い腕をドローンに向けて振りかざした。射撃訓練開始の合図である。
順番はいつも決まっている。アダム、エヴァ、ナイチンゲール、特に希望したアスキー、そして最後にリチャードだ。各々がドローンを全て撃ち落とすまでのタイムをふぁむちゃんが評価する。
使用する武器は89式小銃。単射を使うか連射を使うかは各自の判断に任せているが、普段サブマシンガンを使うナイチンゲールやリチャードは連射で訓練しているし、狙撃をメインに訓練してきたエヴァは単射のみだ。アダムなどはもっとフレキシブルに動こうとしているのか、併用で訓練している。
「ふははは! 今日も絶好調であるぉぉぉぉぉっ!?」
全てのドローンを撃ち落としたリチャードが、ドヤ顔で引き返してきたところに、その後頭部へふぁむちゃんのローリングソバットが炸裂した。
後頭部を押さえて振り返るリチャードの視線の先には、空を指差しているふぁむちゃんの姿があった。そしてそのふぁむちゃんが指差す先には、先程と同じ数のドローンが浮いていた。
どうやらリチャードはタイムオーバーによる追試が決定したらしい。
そう信じて、三戸達はローラー作戦を展開していた。一日に十キロ程度の速度で基地を移動させ、周辺地域を高機動車やLAVでくまなく捜索する。運転出来るのが三戸とアンジー以外にも、藤井、中谷、岡本が増えたのは大きかった。
三戸、アンジーのチーム。藤井、ジャンヌのチーム。中谷、関羽のチーム。岡本、サラディンのチーム。この四つのチームに別れ、基地を中心に四方へ散っていく。
リチャードとナイチンゲールは基地で留守番だ。リチャードは地形操作で基地を移動させる為に離れられないし、ナイチンゲールもアダムとエヴァの護衛の為に置いてある。これは、四体のデーモン達を指揮できるのはナイチンゲールしかいないからだ。
そして忘れてはならない存在がもう一つ。浮遊する火器管制システムこと『ふぁむちゃん』である。当初は丸みを帯びた、ファントムをデフォルメした姿だったのだが、今は戦闘モードのアンジーを二頭身半のマスコットキャラにデフォルメした姿になっている。
△▼△
「アンジーさん! このふぁむちゃん、これでも十分可愛いんすけど、アンジーさんの姿をちっこくしたようなのに出来ないっすか!?」
そう血涙を流しながら頼みこんでいたのは岡本だ。当初は彼の特殊な嗜好に驚きを隠せなかった一同だったが、次の岡本の発言に沈黙した。
「何言ってるんすか! 可愛いのは正義なんですよ! そしてメカメカしい超絶美少女が世界を救う為に戦う姿は尊いんすよ! そしてその美少女と共に戦う俺達には、癒しが必要なんすよ! ではその癒しとは何か! そう、マスコット化したアンジーさんなんですよおおおっ!」
「えっと、マスター?」
涙を流しながら熱弁を振るう岡本に少々引き気味のアンジーが、三戸に伺いを立てる。
「うん、まあ、出来るならやってくれるか? このままじゃ岡本も死んでも死に切れんだろ」
「はぁ、マスターがそう仰るなら……」
いつもは三戸の指示には歯切れのよい返事をして即実行に移るアンジーだが、珍しく今回は乗り気ではないみたいだ。
三戸としてもアンジーの気持ちは分からなくはない。嫌だというよりは戸惑っているのだろう。自分の姿を模したものがマスコットとして扱われるのは確かに微妙な気持ちになるだろう。
そして十分ほど悩んだアンジーが、ふよふよと浮かんでいるふぁむちゃんに手を翳すと、ふぁむちゃんが眩い光に包まれる。
――おおおおおおっ!?
そしてその光が収まった時、どよめきが起こった。
ファントムの武装を纏った凛々しい銀の戦乙女が、二頭身半にデフォルメされた愛くるしい姿。身長三十センチ余りのサイズのそれが、『ぶ~~~~~ん』と音を立てながら飛び回る。
そしてその新生ふぁむちゃんが三戸の肩にストンと座ると、周囲からため息が漏れた。
「ちょっと恥ずかしいですけど、これは可愛いですねっ、マスター!」
その出来栄えに、アンジーも満更でもない様子。さらに、中谷や藤井、さらにはリチャードやナイチンゲールまでもが、岡本に向かってサムズアップしていた。その口の動きはもちろん、『グッジョブ!』である。
「ふぁむちゃん! 俺の肩にも! ほらここ!」
岡本が期待に満ちた目で自分の肩を叩きながら、ふぁむちゃんに向けて訴える。
しかしふぁむちゃんは、三戸の肩の上でぷいっ! とソッポを向いた。
「そ、そんなぁ~」
こうして新生ふぁむちゃんの誕生秘話は、岡本の涙で始まり岡本の涙で終わった。
△▼△
あの日以来、みんなに愛でられているふぁむちゃんだが、日々ぶ~~~~んと飛んでいるだけではない。
ある時は三戸の肩でくつろいだり、アンジーの頭の上でぐでーっとしていたり、どうにか餌付けをしようと試みる岡本の横っ面にキックをお見舞いしたりと忙しい日々を送っている。
そのふぁむちゃんが本領を発揮するのは、三戸やアンジー達が車輛での偵察に出かけた後だ。
「では、今日も頼みますね、ふぁむちゃん」
射撃訓練場に集まった留守番組の面々がホバリングしているふぁむちゃんの前に一列に並んでいる。その中から代表してナイチンゲールが声を掛けた。
すると、ふぁむちゃんが上空に浮かび上がり、数十個もの不規則に飛び回る物体を出現させた。アンジーがアダムとエヴァの射撃訓練の際に的として使っていたドローンである。
そしてふぁむちゃんは短い腕をドローンに向けて振りかざした。射撃訓練開始の合図である。
順番はいつも決まっている。アダム、エヴァ、ナイチンゲール、特に希望したアスキー、そして最後にリチャードだ。各々がドローンを全て撃ち落とすまでのタイムをふぁむちゃんが評価する。
使用する武器は89式小銃。単射を使うか連射を使うかは各自の判断に任せているが、普段サブマシンガンを使うナイチンゲールやリチャードは連射で訓練しているし、狙撃をメインに訓練してきたエヴァは単射のみだ。アダムなどはもっとフレキシブルに動こうとしているのか、併用で訓練している。
「ふははは! 今日も絶好調であるぉぉぉぉぉっ!?」
全てのドローンを撃ち落としたリチャードが、ドヤ顔で引き返してきたところに、その後頭部へふぁむちゃんのローリングソバットが炸裂した。
後頭部を押さえて振り返るリチャードの視線の先には、空を指差しているふぁむちゃんの姿があった。そしてそのふぁむちゃんが指差す先には、先程と同じ数のドローンが浮いていた。
どうやらリチャードはタイムオーバーによる追試が決定したらしい。
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