104 / 151
????
101話 お土産ゲット
しおりを挟む
『各機、散開!』
前方から迫ってくるのは飛行型の魔物。しかも飛行型のデーモンクラスが三体。それが三戸達を見つけるやいなや、魔弾を放ってきた。それを回避する為、四機の編隊は四方へと散る。
『隊長! 一人一体って事でいいですよね? 隊長はフォローに回って下さい』
藤井からの通信にやや逡巡する三戸だったが、最悪の場合は自分とアンジーが別行動すれば二機のフォローはしてやれると考えた。
『いいだろう。お前らの腕、見せてもらうぞ?』
『聞いたか、お前ら! 責任持って一体やれ!』
彼らが殉職する前は三機編成で藤井が隊長をやっていた。その隊長振りが板についていて、三戸は頼もしく思う。あのスホイを迎え撃った空中戦を見ても、彼らの成長は見て取れたが、実際目の当たりにすると感慨深いものがある。
その彼らの戦法だが、敢えて一対一の勝負に持ち込もうとしていた。個々の技量、性能が勝っていれば有効だが、そうでない時は各個撃破される恐れもある。その後は数の不利を余儀なくされ、押し込まれるのが常だ。
「それでも敢えてそうするって事は、初見の相手に対しても自信があるんだろうな」
三戸は高度を上げ、三対三の空中戦を見下ろす位置にいた。
ミサイル縛り。相手がデーモンクラスの場合は途轍もないハンデになる。ライトニングⅡのガンポッドがファントムの20mm機関砲より高威力とはいえ、苦戦は免れまい。三戸はそう予想している。
「何が一対一だよ、あいつら。あっはっは!」
「……凄い連携ですね……」
しかし、その戦闘を見て三戸は呆れて笑い、アンジーは驚愕していた。三戸はともかく、アンジーが三戸以外にこのような反応を見せるのは非常に珍しい。
藤井達の戦闘は確かに一対一で行っていた。しかし、巧みな位置取りと誘導で圧倒的優位に戦闘を進めている。デーモンが魔弾を放てば藤井が躱す。そして躱した先には中谷を追っている別のデーモンがいて、フレンドリーファイアを誘発させるといった具合だ。
結局、デーモンの方は一対一で戦っているつもりでも、実際は複数を相手にしている、そんな状況になるように連携している。
「あいつらは、一機が三機になったからって戦力が三倍になる訳じゃない。連携する事によって、六倍にも九倍にもなってるよ」
だから、三戸は笑った。デーモンにとっては全く一対一ではないのだから。
さらに、この戦いには藤井達の意図も透けて見える。これほどの優位な状況ならば、もっと早く勝負を決する事も出来るはずなのだ。しかしそれをせずに、敵に軽微なダメージを与えつつ、持久戦に持ち込んでいるように見える。
「ヒットアンドアウェイで弱らせて、という事ですね! 藤井さん達、やりますっ!」
まさにアンジーの言う通りで、速度に勝るライトニングⅡがガンポッドでじわじわダメージを与えすぐに離脱。そして時折同士討ちを狙う。
「デーモン共、目に見えて消耗してやがるな。マジで生け捕りに出来るかもな」
三戸としては、最初の指示で生け捕りを目標に掲げたものの、良くて一体、最悪の場合は死体を持ち帰れれば御の字――そう考えていた。それがデーモンクラス三体を丸ごと捕獲という可能性が見えてきたのだ。
そして同時に考える。藤井、中谷、岡本の三人の連携は、それだけで大きな武器となる。果たしてそこへ自分が入り込んだ時、小隊として機能するだろうかと。
そういう事を考えつつも、ピンチになればいつでも介入できるよう、上空を旋回していた三戸だったが、デーモンは一体、また一体と墜落していき、ついに最後の一体も地表に向けて落下していった。
『隊長、任務完了です!』
『どうです? 中々のもんだったでしょう?』
『アンジーちゃんも見ててくれましたか!?』
藤井、中谷、岡本と、順番に通信が入ってくる。アンジーに戦果を報告してくるあたり、岡本はまだ独身なのかなどと思わず笑ってしまいそうになった三戸だが、そういえばそんな話もしていない事に気付く。
「良くやった。あのブツは俺とアンジーが回収しておくから、お前ら基地に戻ってていいぞ」
『了解です。岡本を護衛に残します』
「おう。ナイチンゲールとアスキーに、土産があると伝えておいてくれ」
『ウィルコ!』
こうして、三戸のファントムは垂直着陸の体勢に入り、岡本の黄色いライトニングⅡは上空を旋回しながら待機だ。
着陸した三戸はファントムから降りると、警戒の為89式小銃を構えながらデーモンに近付いていく。息はあり、威嚇はしてくるがもはや戦闘能力がない事を確認すると、アンジーにチヌークとワイヤーロープを出すよう指示を出した。
三体のデーモンをワイヤーで縛りチヌークに繋ぎとめると、三戸とアンジーはチヌークに乗り込み、そのまま浮上した。
「よし、基地に帰還する。岡本、ぶら下がってるヤツが騒ぎ出したら撃ち落としちまえ」
『ははは! 了解です! 護衛は任せて下さい!』
巨大な手土産をぶら下げて三戸達は意気揚々と基地に向かって飛び立った。
前方から迫ってくるのは飛行型の魔物。しかも飛行型のデーモンクラスが三体。それが三戸達を見つけるやいなや、魔弾を放ってきた。それを回避する為、四機の編隊は四方へと散る。
『隊長! 一人一体って事でいいですよね? 隊長はフォローに回って下さい』
藤井からの通信にやや逡巡する三戸だったが、最悪の場合は自分とアンジーが別行動すれば二機のフォローはしてやれると考えた。
『いいだろう。お前らの腕、見せてもらうぞ?』
『聞いたか、お前ら! 責任持って一体やれ!』
彼らが殉職する前は三機編成で藤井が隊長をやっていた。その隊長振りが板についていて、三戸は頼もしく思う。あのスホイを迎え撃った空中戦を見ても、彼らの成長は見て取れたが、実際目の当たりにすると感慨深いものがある。
その彼らの戦法だが、敢えて一対一の勝負に持ち込もうとしていた。個々の技量、性能が勝っていれば有効だが、そうでない時は各個撃破される恐れもある。その後は数の不利を余儀なくされ、押し込まれるのが常だ。
「それでも敢えてそうするって事は、初見の相手に対しても自信があるんだろうな」
三戸は高度を上げ、三対三の空中戦を見下ろす位置にいた。
ミサイル縛り。相手がデーモンクラスの場合は途轍もないハンデになる。ライトニングⅡのガンポッドがファントムの20mm機関砲より高威力とはいえ、苦戦は免れまい。三戸はそう予想している。
「何が一対一だよ、あいつら。あっはっは!」
「……凄い連携ですね……」
しかし、その戦闘を見て三戸は呆れて笑い、アンジーは驚愕していた。三戸はともかく、アンジーが三戸以外にこのような反応を見せるのは非常に珍しい。
藤井達の戦闘は確かに一対一で行っていた。しかし、巧みな位置取りと誘導で圧倒的優位に戦闘を進めている。デーモンが魔弾を放てば藤井が躱す。そして躱した先には中谷を追っている別のデーモンがいて、フレンドリーファイアを誘発させるといった具合だ。
結局、デーモンの方は一対一で戦っているつもりでも、実際は複数を相手にしている、そんな状況になるように連携している。
「あいつらは、一機が三機になったからって戦力が三倍になる訳じゃない。連携する事によって、六倍にも九倍にもなってるよ」
だから、三戸は笑った。デーモンにとっては全く一対一ではないのだから。
さらに、この戦いには藤井達の意図も透けて見える。これほどの優位な状況ならば、もっと早く勝負を決する事も出来るはずなのだ。しかしそれをせずに、敵に軽微なダメージを与えつつ、持久戦に持ち込んでいるように見える。
「ヒットアンドアウェイで弱らせて、という事ですね! 藤井さん達、やりますっ!」
まさにアンジーの言う通りで、速度に勝るライトニングⅡがガンポッドでじわじわダメージを与えすぐに離脱。そして時折同士討ちを狙う。
「デーモン共、目に見えて消耗してやがるな。マジで生け捕りに出来るかもな」
三戸としては、最初の指示で生け捕りを目標に掲げたものの、良くて一体、最悪の場合は死体を持ち帰れれば御の字――そう考えていた。それがデーモンクラス三体を丸ごと捕獲という可能性が見えてきたのだ。
そして同時に考える。藤井、中谷、岡本の三人の連携は、それだけで大きな武器となる。果たしてそこへ自分が入り込んだ時、小隊として機能するだろうかと。
そういう事を考えつつも、ピンチになればいつでも介入できるよう、上空を旋回していた三戸だったが、デーモンは一体、また一体と墜落していき、ついに最後の一体も地表に向けて落下していった。
『隊長、任務完了です!』
『どうです? 中々のもんだったでしょう?』
『アンジーちゃんも見ててくれましたか!?』
藤井、中谷、岡本と、順番に通信が入ってくる。アンジーに戦果を報告してくるあたり、岡本はまだ独身なのかなどと思わず笑ってしまいそうになった三戸だが、そういえばそんな話もしていない事に気付く。
「良くやった。あのブツは俺とアンジーが回収しておくから、お前ら基地に戻ってていいぞ」
『了解です。岡本を護衛に残します』
「おう。ナイチンゲールとアスキーに、土産があると伝えておいてくれ」
『ウィルコ!』
こうして、三戸のファントムは垂直着陸の体勢に入り、岡本の黄色いライトニングⅡは上空を旋回しながら待機だ。
着陸した三戸はファントムから降りると、警戒の為89式小銃を構えながらデーモンに近付いていく。息はあり、威嚇はしてくるがもはや戦闘能力がない事を確認すると、アンジーにチヌークとワイヤーロープを出すよう指示を出した。
三体のデーモンをワイヤーで縛りチヌークに繋ぎとめると、三戸とアンジーはチヌークに乗り込み、そのまま浮上した。
「よし、基地に帰還する。岡本、ぶら下がってるヤツが騒ぎ出したら撃ち落としちまえ」
『ははは! 了解です! 護衛は任せて下さい!』
巨大な手土産をぶら下げて三戸達は意気揚々と基地に向かって飛び立った。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ある日、信号待ちをしていた俺は車にひかれて死んでしまった。
そして、気が付けば異世界で、貴族家の長男に転生していたのだ!
夢にまで見た異世界に胸が躍る――が、5歳の時に受けた”テイム”の祝福が、最低位のF級!?
一縷の望みで測った魔力容量と魔力回路強度も平凡だって!?
勘当されたら、その先どうやって生きてけばいいんだー!
と、思っていたのだが……
「あれ? 俺の”テイム”何かおかしくね?」
ちょくちょくチートな部分があったことで、俺は”強く”なっていくのであった
ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。
いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。
成宮暁彦は独身、サラリーマンだった
アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ
スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。
なにぶん、素人が書くお話なので
疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。
あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。
異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~
テツみン
ファンタジー
**救国編完結!**
『鑑定——』
エリオット・ラングレー
種族 悪霊
HP 測定不能
MP 測定不能
スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数
アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数
次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた!
だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを!
彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ!
これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
【完結】転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~
おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。
婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。
しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。
二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。
彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。
恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。
ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。
それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
イラストブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる
灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~
幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。
「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」
「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」
最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる