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AD1855
82話 飛行
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黒翼の天使を攻略するには、まずは赤い光線に当たらない、もしくは完封できる防御力を持つ事。その上で、敵の防御を突破して直接攻撃を仕掛ける事。この二つの条件をクリアしなければならない。
そして三戸の戦闘から考えられる事として、赤い光線は発射時に予備動作があるので分かりやすい事。今のところは両手からの発射なので、一度に攻撃出来るのは二方向まで。
さらに、相手は視覚によって敵を認識している訳ではないため、死角に回ったと思い込んではいけない事。
翼以外の部分は防御膜に覆われているが、絶対防御ではない事。
「こうして改めて確認してみると、意外と穴はある」
三戸がそう言いながら一同を見回す。
「さっきはマスターがお一人で戦いましたが、これだけの人数の救世者が一斉に連携して掛かれば、隙を作り出す事も可能なはずです!」
アンジーも両手をグーにして気合を入れている。
「そこでだ」
三戸がポケットから一発の銃弾を取り出した。それはM24狙撃銃に使用する、7.62mmの銃弾。
「リチャード、これと寸分違わぬ寸法、形状で中身は空洞。土を操る力で作れないか?」
「ふむ。強度はこれと同等で良いのか?」
「ああ」
リチャードがその銃弾を手に取り、まじまじと眺めながら答える。どうやら出来そうだ。
続いては、その銃弾の中身だ。
「ナイチンゲールの能力で、硫酸を出してほしい。多分、薬品に使われてる成分だから可能だと思うんだが」
「ええ、それは可能ですが……」
三戸が要求したのは硫酸。言わずとしれた強酸だ。この事から三戸の意図は透けて見える。撃ち込んだ弾丸で、黒翼の天使を身体の内部から溶かしてしまおうというのだろう。
「それで、サラディンの重力操作で、その硫酸をぐっと圧縮して、リチャードが作る弾丸の中に詰め込んで欲しいんだ」
「うむ。それくらいなら造作もないぞい」
三戸の思惑は周囲の予想を超えて凶悪だった。大量の硫酸を圧縮したものを銃弾の中に詰め込み、黒翼の天使の体内に撃ち込んだ後でその重力を解放する。恐らく、黒翼の天使の身体の質量を超える硫酸が内部で暴発する事になるだろう。
「ええ、っと、その硫酸を私が準備するのですよ、ね?」
銃弾に詰め込む程度を用意するなら造作もない。そう思っていたナイチンゲールだが、まさかの大量生成する成り行きに困惑顔だ。
「おう、頼むぜ!」
それに対して滅茶苦茶いい笑顔でサムズアップしながら答える三戸に、彼女は深いため息しか出なかった。
(さて、後はコイツをどうやって撃ち込むか、だな)
大火力による攻撃は通用する。しかし絶対防御の黒翼に包まれてしまえば元の木阿弥。一撃で消滅させられる火力で攻撃出来ればいいのだが、それほどの火力となると周囲への被害も甚大になるだろう。まさか核ミサイルを撃ち込む訳にもいくまい。
「みんな、飛べたらいいのになぁ……」
三戸が何の気なしにそう呟いた。黒翼の天使は言うなれば大きな大砲を積んだ戦艦だ。一発の威力は大きいが、それさえ避けてしまえば対空火力という意味ではそれほどでもない。三戸のF-2が堕とされたのは油断もあった。
大艦巨砲主義が航空機の登場によって廃れていった歴史を、今ここに当てはめられたなあと。三戸はそう考えていた。
「飛べねえ事はねえぜ、ミト様」
「そうだな。能力は制限されるが、出来ない事もない」
しかし、そんな三戸の悩みを一蹴する言葉が、ブリューナクと青龍から出た。
「は?」
「いやほら、俺達って飛べるだろ?」
「いやマテ。ブリューナクと青龍が飛べるのは知ってる。お前達がジャンヌや関さんを抱えて飛び回るってんじゃないだろうな?」
「あはははは! それはそれで面白いが、違うのですよ、ミト様」
ブリューナクの発言に、疑わしい顔を向ける三戸だが、それに対して青龍がフォローを入れた。
「私達は通常、主の武具を依り代としていますが、主そのものを依り代とする事が出来るのです」
「それってつまり、憑依するって事か?」
「まあ、似たようなものですね」
そこで三戸は詳しい説明を求めた。主に能力に制限が掛かる、という部分についてだ。
そこで返ってきた答えはこうだ。
例えばブリューナクの場合、投擲武器として自らが火の鳥と化し、敵を焼き尽くす技は使えない。まあ、ジャンヌの中に入っているのだから当然と言えば当然だろう。
青龍の場合も、樹木を操るという彼女の属性自体が弱くなる。これも宙に浮いていたのでは影響力が弱くなるという事で、納得だ。
「つまり、ジャンヌと関さん自体は飛行能力が付与されるだけでマイナス要素は一切ないって事だよな?」
二人がコクコクと頷く。それならば希望が出てきた。そこへさらに朗報がもたらされる。
「私はスレイプニル。空を駆ける馬だ」
「私達もおじいちゃんの能力で空に浮ける」
エクスカリバーとジハード、憑依しなくても主と共に飛べるらしい。
そして三戸の戦闘から考えられる事として、赤い光線は発射時に予備動作があるので分かりやすい事。今のところは両手からの発射なので、一度に攻撃出来るのは二方向まで。
さらに、相手は視覚によって敵を認識している訳ではないため、死角に回ったと思い込んではいけない事。
翼以外の部分は防御膜に覆われているが、絶対防御ではない事。
「こうして改めて確認してみると、意外と穴はある」
三戸がそう言いながら一同を見回す。
「さっきはマスターがお一人で戦いましたが、これだけの人数の救世者が一斉に連携して掛かれば、隙を作り出す事も可能なはずです!」
アンジーも両手をグーにして気合を入れている。
「そこでだ」
三戸がポケットから一発の銃弾を取り出した。それはM24狙撃銃に使用する、7.62mmの銃弾。
「リチャード、これと寸分違わぬ寸法、形状で中身は空洞。土を操る力で作れないか?」
「ふむ。強度はこれと同等で良いのか?」
「ああ」
リチャードがその銃弾を手に取り、まじまじと眺めながら答える。どうやら出来そうだ。
続いては、その銃弾の中身だ。
「ナイチンゲールの能力で、硫酸を出してほしい。多分、薬品に使われてる成分だから可能だと思うんだが」
「ええ、それは可能ですが……」
三戸が要求したのは硫酸。言わずとしれた強酸だ。この事から三戸の意図は透けて見える。撃ち込んだ弾丸で、黒翼の天使を身体の内部から溶かしてしまおうというのだろう。
「それで、サラディンの重力操作で、その硫酸をぐっと圧縮して、リチャードが作る弾丸の中に詰め込んで欲しいんだ」
「うむ。それくらいなら造作もないぞい」
三戸の思惑は周囲の予想を超えて凶悪だった。大量の硫酸を圧縮したものを銃弾の中に詰め込み、黒翼の天使の体内に撃ち込んだ後でその重力を解放する。恐らく、黒翼の天使の身体の質量を超える硫酸が内部で暴発する事になるだろう。
「ええ、っと、その硫酸を私が準備するのですよ、ね?」
銃弾に詰め込む程度を用意するなら造作もない。そう思っていたナイチンゲールだが、まさかの大量生成する成り行きに困惑顔だ。
「おう、頼むぜ!」
それに対して滅茶苦茶いい笑顔でサムズアップしながら答える三戸に、彼女は深いため息しか出なかった。
(さて、後はコイツをどうやって撃ち込むか、だな)
大火力による攻撃は通用する。しかし絶対防御の黒翼に包まれてしまえば元の木阿弥。一撃で消滅させられる火力で攻撃出来ればいいのだが、それほどの火力となると周囲への被害も甚大になるだろう。まさか核ミサイルを撃ち込む訳にもいくまい。
「みんな、飛べたらいいのになぁ……」
三戸が何の気なしにそう呟いた。黒翼の天使は言うなれば大きな大砲を積んだ戦艦だ。一発の威力は大きいが、それさえ避けてしまえば対空火力という意味ではそれほどでもない。三戸のF-2が堕とされたのは油断もあった。
大艦巨砲主義が航空機の登場によって廃れていった歴史を、今ここに当てはめられたなあと。三戸はそう考えていた。
「飛べねえ事はねえぜ、ミト様」
「そうだな。能力は制限されるが、出来ない事もない」
しかし、そんな三戸の悩みを一蹴する言葉が、ブリューナクと青龍から出た。
「は?」
「いやほら、俺達って飛べるだろ?」
「いやマテ。ブリューナクと青龍が飛べるのは知ってる。お前達がジャンヌや関さんを抱えて飛び回るってんじゃないだろうな?」
「あはははは! それはそれで面白いが、違うのですよ、ミト様」
ブリューナクの発言に、疑わしい顔を向ける三戸だが、それに対して青龍がフォローを入れた。
「私達は通常、主の武具を依り代としていますが、主そのものを依り代とする事が出来るのです」
「それってつまり、憑依するって事か?」
「まあ、似たようなものですね」
そこで三戸は詳しい説明を求めた。主に能力に制限が掛かる、という部分についてだ。
そこで返ってきた答えはこうだ。
例えばブリューナクの場合、投擲武器として自らが火の鳥と化し、敵を焼き尽くす技は使えない。まあ、ジャンヌの中に入っているのだから当然と言えば当然だろう。
青龍の場合も、樹木を操るという彼女の属性自体が弱くなる。これも宙に浮いていたのでは影響力が弱くなるという事で、納得だ。
「つまり、ジャンヌと関さん自体は飛行能力が付与されるだけでマイナス要素は一切ないって事だよな?」
二人がコクコクと頷く。それならば希望が出てきた。そこへさらに朗報がもたらされる。
「私はスレイプニル。空を駆ける馬だ」
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