198 / 206
四章
ノワールとアーテルのトレント退治
しおりを挟む
**前半はノワール、後半はアーテル視点です**
このトレントという生き物……
確かに人間にとっては厄介な相手なのでしょう。
見た目は普通の樹木にも関わらず、自らの縄張りに入った者は木の葉で切り刻み枝で打ち据える。更にはそこそこのスピードで動きまわる。
私もウサギだった時にトレントに出会っていれば、養分となっていた事でしょう。
ですが今の私は全ての力を取り戻した大精霊。それに加えてご主人様の愛と優しさ! もはや私は大精霊などという枠組みを超え、四大精霊王にも引けを取らぬ力を得ました。
この力は私を救って下さったご主人様の為に。
ご主人様の命とあらば何事も完遂し、ご主人様に敵対する者ならば情け容赦なく葬り去る。
そしてこのサテライトトレント、マザートレントはご主人様の行く道の前に立ち塞がる敵。
「たかが木の分際で」
そう、このトレントはたかが木の分際で小癪にも攻撃してきたのです。
木の葉を舞い散らせ、それが私に襲い掛かって来ます。どうやら一枚一枚が鋭い刃になっているようですが……
『……!?』
なにやら戸惑いのような感情が伝わってきますね。それはそうでしょう。その木の葉は私の身体を素通りするだけ。
『!?!?』
そしてさらに激しい困惑が伝わってきます。枝を鞭のように振るっての打撃と斬撃。これもまた私の身体を素通りするだけ。何度打たれようが刻まれようが、私の歩みが止まる事はありません。
まあ、仕方がありませんね。私は存在そのものが霊体なのですから。ああ、ご主人様が求めて下されば至上の快楽をもっておもてなしする事もできますよ? 肉体的に。
ですがご主人様はウサギの私を愛でるのがお好きなご様子。それでもわたしは幸せなのですがね。
さて、結局の所このトレント種というのは物理攻撃しかないので、私にはかすり傷ひとつ付ける事は敵いません。
あ、打つ手なしと見たか、サテライトトレントが逃げていきますね。ですが、一度でも刃を向けた者を逃がすとでも思っているのでしょうか?
私はふわりと霧のように姿を消し、靄となって逃げるトレントを包み込みます。もうこうなると何処へ逃げようが魔力と化した私がどこまでも付いて回ります。
ですがご主人様と離れすぎても厄介なので、手早くトドメを刺してしまいましょうか。
包み込んだ魔力の靄の中で、トレントが足掻いています。
うふふ……苦しいでしょう?
斬られたり焼かれたりするのも苦しいでしょうが、少しの間苦しめば解放されます。ですが私は闇の精霊の頂点に立つ者。私は時間流れさえも司る。
お前の時間は今、急速に進んでいます。つまり、自分の感覚よりも劣化の速度が著しく速い状態なのです。トレント種というのはそれなりに長い寿命を持っているようですが、まさかこんなに早く朽ち果てるとは思っていなかったでしょうね。
――あら? トレントが化石化してしまいました。これはこれでいい素材になりそうです。ご主人様に寄進したら喜んでいただけますね!
△▼△
「はっはっはー! 温い! 温いぞ!」
我は久しぶりに神狼の姿となって踊りくるっていた。木の葉の刃? そんなものが我の毛皮を切り刻めるものか。枝を鞭のように振るってきたとて、何の痛痒もない。トレントの上位種如き、生き物としての格が違うのだ。
我を巻き込むように飛んで来る木の葉になぞ歯牙にもかけず、枝の鞭は逆に咥えて引き千切る。いかんせん火力不足よなあ!
もっとも、我を傷付けようとするならば、精霊王クラスが放つ極大魔法でも用意してもらわねばならんが。
我はサテライトトレントに近付き、勢いそのままに太い幹を螺旋状に駆け上る。そして頂点に達したところで。
『ワオオオーーーーーーーン!』
天に向かって咆哮を上げた。すると、あれだけ舞っていた木の葉は落ち、振るわれていた枝も静かになる。当然だ。『神狼の咆哮』に抗える者なぞそうそうおらぬわ。
あとは適当に料理するだけだが……主人達はどうやら焼き尽くしてしまったようだな。ノワールは化石にしてしまったか。やれやれ、それなら我がこやつを良質な木材にしてくれよう。
動かぬただの木と成り下がったこやつを、我の爪で枝の剪定をしていく。と言っても我は前脚を振るうだけ。衝撃波と化した我が魔力が枝を斬り落として行く。そして、あらかた枝を斬り落としたところで、地面に降り立った。
「さて、良い木材になってくれよ?」
そこで我は妖艶な人型に戻り、サテライトトレントに正拳をぶち込んだ。こんな木一本、へし折るのに拳一つあれば十分よ。
このトレントという生き物……
確かに人間にとっては厄介な相手なのでしょう。
見た目は普通の樹木にも関わらず、自らの縄張りに入った者は木の葉で切り刻み枝で打ち据える。更にはそこそこのスピードで動きまわる。
私もウサギだった時にトレントに出会っていれば、養分となっていた事でしょう。
ですが今の私は全ての力を取り戻した大精霊。それに加えてご主人様の愛と優しさ! もはや私は大精霊などという枠組みを超え、四大精霊王にも引けを取らぬ力を得ました。
この力は私を救って下さったご主人様の為に。
ご主人様の命とあらば何事も完遂し、ご主人様に敵対する者ならば情け容赦なく葬り去る。
そしてこのサテライトトレント、マザートレントはご主人様の行く道の前に立ち塞がる敵。
「たかが木の分際で」
そう、このトレントはたかが木の分際で小癪にも攻撃してきたのです。
木の葉を舞い散らせ、それが私に襲い掛かって来ます。どうやら一枚一枚が鋭い刃になっているようですが……
『……!?』
なにやら戸惑いのような感情が伝わってきますね。それはそうでしょう。その木の葉は私の身体を素通りするだけ。
『!?!?』
そしてさらに激しい困惑が伝わってきます。枝を鞭のように振るっての打撃と斬撃。これもまた私の身体を素通りするだけ。何度打たれようが刻まれようが、私の歩みが止まる事はありません。
まあ、仕方がありませんね。私は存在そのものが霊体なのですから。ああ、ご主人様が求めて下されば至上の快楽をもっておもてなしする事もできますよ? 肉体的に。
ですがご主人様はウサギの私を愛でるのがお好きなご様子。それでもわたしは幸せなのですがね。
さて、結局の所このトレント種というのは物理攻撃しかないので、私にはかすり傷ひとつ付ける事は敵いません。
あ、打つ手なしと見たか、サテライトトレントが逃げていきますね。ですが、一度でも刃を向けた者を逃がすとでも思っているのでしょうか?
私はふわりと霧のように姿を消し、靄となって逃げるトレントを包み込みます。もうこうなると何処へ逃げようが魔力と化した私がどこまでも付いて回ります。
ですがご主人様と離れすぎても厄介なので、手早くトドメを刺してしまいましょうか。
包み込んだ魔力の靄の中で、トレントが足掻いています。
うふふ……苦しいでしょう?
斬られたり焼かれたりするのも苦しいでしょうが、少しの間苦しめば解放されます。ですが私は闇の精霊の頂点に立つ者。私は時間流れさえも司る。
お前の時間は今、急速に進んでいます。つまり、自分の感覚よりも劣化の速度が著しく速い状態なのです。トレント種というのはそれなりに長い寿命を持っているようですが、まさかこんなに早く朽ち果てるとは思っていなかったでしょうね。
――あら? トレントが化石化してしまいました。これはこれでいい素材になりそうです。ご主人様に寄進したら喜んでいただけますね!
△▼△
「はっはっはー! 温い! 温いぞ!」
我は久しぶりに神狼の姿となって踊りくるっていた。木の葉の刃? そんなものが我の毛皮を切り刻めるものか。枝を鞭のように振るってきたとて、何の痛痒もない。トレントの上位種如き、生き物としての格が違うのだ。
我を巻き込むように飛んで来る木の葉になぞ歯牙にもかけず、枝の鞭は逆に咥えて引き千切る。いかんせん火力不足よなあ!
もっとも、我を傷付けようとするならば、精霊王クラスが放つ極大魔法でも用意してもらわねばならんが。
我はサテライトトレントに近付き、勢いそのままに太い幹を螺旋状に駆け上る。そして頂点に達したところで。
『ワオオオーーーーーーーン!』
天に向かって咆哮を上げた。すると、あれだけ舞っていた木の葉は落ち、振るわれていた枝も静かになる。当然だ。『神狼の咆哮』に抗える者なぞそうそうおらぬわ。
あとは適当に料理するだけだが……主人達はどうやら焼き尽くしてしまったようだな。ノワールは化石にしてしまったか。やれやれ、それなら我がこやつを良質な木材にしてくれよう。
動かぬただの木と成り下がったこやつを、我の爪で枝の剪定をしていく。と言っても我は前脚を振るうだけ。衝撃波と化した我が魔力が枝を斬り落として行く。そして、あらかた枝を斬り落としたところで、地面に降り立った。
「さて、良い木材になってくれよ?」
そこで我は妖艶な人型に戻り、サテライトトレントに正拳をぶち込んだ。こんな木一本、へし折るのに拳一つあれば十分よ。
0
お気に入りに追加
2,181
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
旦那様、本当によろしいのですか?【完結】
翔千
恋愛
ロロビア王国、アークライド公爵家の娘ロザリア・ミラ・アークライドは夫のファーガスと結婚し、順風満帆の結婚生活・・・・・とは言い難い生活を送って来た。
なかなか子供を授かれず、夫はいつしかロザリアにに無関心なり、義母には子供が授からないことを責められていた。
そんな毎日をロザリアは笑顔で受け流していた。そんな、ある日、
「今日から愛しのサンドラがこの屋敷に住むから、お前は出て行け」
突然夫にそう告げられた。
夫の隣には豊満ボディの美人さんと嘲るように笑う義母。
理由も理不尽。だが、ロザリアは、
「旦那様、本当によろしいのですか?」
そういつもの微笑みを浮かべていた。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる