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四章
ショーンの企み
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その後も何度かの戦闘を繰り返し、林の中を進む。それほど強力な魔物は今の所出会っていないけど、やはりいきなり近くにポップする魔物はノワールの索敵に引っ掛からないらしく、ご立腹のノワールはそのポップしたゴブリンの群れに向かって行き、片っ端から蹴り倒していた。
「ふう、少しスッキリしました」
蹴り倒されたゴブリンの頭は爆散している。かなり加減無しでブチかましたようだ。
「機嫌が良くなったみたいで何よりだよ。でもそろそろシェラさんにも経験を積ませたい」
「ええ、次は全部押し付ければいいんですね?」
おいノワール言い方。
そもそもこの子は僕以外にはスパルタだから仕方ないと言えば仕方ないんだけど……
「ではこっちです」
ノワールが先導していく。多分沢山魔物がいる方向だろう。そしてヨシュア君がゲンナリするような状況が待っているに違いない。
急な魔物のポップに備えて慎重に進むと、何やら集団が見えて来る。
「あれは……コボルトか」
コボルトは犬と人間を足したような見た目をしている。シルエットこそ人間に近いが、パーツは犬だ。ただし、手などは人間と同じ造りであり、道具なども器用に使いこなす。
そして厄介なのがその習性で、犬や狼と同じように群れを作って行動する。そう、集団で狩りをするあの習性だ。それが人間に近い文化を持ち、武器や防具、そして知能もある。なので群れとは言ってもほぼ軍隊に近い。
ゴブリンやオークとくらべて個の能力はそれほど秀でている訳ではなく、単体が相手なら少し荒事に慣れた人間でも渡り合う事は可能だ。しかし集団で彼等と出くわした場合、その脅威度は遥かに高くなる。
「手助けはいるかい? ヨシュア君」
そのコボルトが十数匹。おそらく獲物を探して徘徊していたのだろう。そして彼等の嗅覚は鋭い。すでに僕達は発見されている。
彼等は隊列を組んだ。盾持ちが四人前に立ち、その後ろに弓持ちが三人。その左右に剣や槍を持った者が展開し、鶴翼の形で僕達を包囲しようとしている。
まあ、普通に考えればあんまり嬉しくない状況だ。その上でヨシュア君に訊ねている。
「私一人ならばどうという事はないが、シェラもいる事だしこの数を相手取るには少々手が足りない。済まないが、シェラを頼めるかな?」
うん、いいね。シェラさんの前でいい所を見せたい場面だろうけど、まずは彼女の安全を優先する。名を捨てて実を取るというべきか。
僕はノワールとアーテルに目配せをする。話さなくても意図は伝わっているだろう。
「うん。シェラさんは任された」
僕の返答を聞いて、ヨシュア君は両翼に展開しようとしているコボルト達を捨て置き、正面の盾持ちに守られた弓持ちに向かって駆けていく。厄介な遠距離攻撃を自分に引き寄せ、シェラさんの安全を守ろうという訳だ。
逆風の盾を前に構えながら突進していくヨシュア君に、思惑通りコボルトの矢が放たれた。
「力を見せてもらうぞ! 逆風の盾!」
叫んだヨシュア君の逆風の盾が薄緑の燐光に包まれた。あれは風属性の魔力の光。すると、ヨシュア君に迫る矢が軒並み勢いを失い、更に放ったコボルトへと跳ね返される。
しかしその矢は盾持ちのコボルトが跳ね返す。
「フッ!」
だけど今のヨシュア君は、特訓で爆上がりした身体能力に加えて、僕のパーティに参加している事によるバフの効果がある。跳ね返された矢に迫る速度でコボルトに駆け込み、矢を跳ね返したばかりの盾持ちのコボルトを一気に二人、盾ごと両断した。流石はフレイムブレイド、普通の剣じゃああは行かない。
盾持ち二体を倒した後は、返す刀でもう一体の盾持ちを斬り捨てた。散り散りに逃げる弓持ちを淡々と倒すだけ。中々に見事な手際だ。
そうしている間にも、両翼に分散したコボルトの遊撃部隊がこちらに迫っていた。左右ともに六体ずつか。
ノワールが両手に短剣を持ち、久しぶりに見る双剣士の妙技を見せる。逆手に持った短剣は目にも止まらぬ速さで振り抜かれ、あっという間に二体のコボルトが血を吹き出して倒れ伏す。
さらにもう一体の目の前で高く跳躍した彼女は、落下しながら両手の剣を交差させるように振り抜いた。コボルトには直前でノワールが消えたように映ったのだろう。まったく対応出来ずに首がずり落ちた。
アーテルは向かって来たコボルトの正面に仁王立ち。
「この駄犬共が。この神狼の前に悪意を持って立ちふさがるとは、万死に値するぞ?」
そしてゆっくりとコボルトに向かって歩を進めていく。その身体から闇属性の魔力が揺らぎ立ち昇り、コボルトは尻尾を股の間に挟んで震えている。
「一度でも我に刃を向けた事、後悔するがいい」
そう言うやいなや、アーテルの姿がブレて消える。そして魔力を流して強化した目でどうにかその動きを追えば、六体のコボルトはなす術もなく地面に叩き伏せられていた。
そして僕にはノワールが敢えて残しておいてくれたコボルト三体が迫る。背中の短双戟を抜いて両手に構え、一体は穂先で突き殺し、もう一体を月刃で首を落とした。魔法陣を刻み込んでおり、魔力を流す事で魔剣以上にタフで鋭い武器になる僕の短双戟。更にはノワールやアーテル相手に鍛え上げた身体強化と技術。
ジョブや近接戦闘スキルの恩恵がなくとも、こんな雑魚魔物相手に不覚を取る僕じゃない。
一瞬で二体を倒したが、敢えて一体は見逃す。それはシェラさんに向かっていった。
さあ、シェラさんの試練の時間だ。
「ふう、少しスッキリしました」
蹴り倒されたゴブリンの頭は爆散している。かなり加減無しでブチかましたようだ。
「機嫌が良くなったみたいで何よりだよ。でもそろそろシェラさんにも経験を積ませたい」
「ええ、次は全部押し付ければいいんですね?」
おいノワール言い方。
そもそもこの子は僕以外にはスパルタだから仕方ないと言えば仕方ないんだけど……
「ではこっちです」
ノワールが先導していく。多分沢山魔物がいる方向だろう。そしてヨシュア君がゲンナリするような状況が待っているに違いない。
急な魔物のポップに備えて慎重に進むと、何やら集団が見えて来る。
「あれは……コボルトか」
コボルトは犬と人間を足したような見た目をしている。シルエットこそ人間に近いが、パーツは犬だ。ただし、手などは人間と同じ造りであり、道具なども器用に使いこなす。
そして厄介なのがその習性で、犬や狼と同じように群れを作って行動する。そう、集団で狩りをするあの習性だ。それが人間に近い文化を持ち、武器や防具、そして知能もある。なので群れとは言ってもほぼ軍隊に近い。
ゴブリンやオークとくらべて個の能力はそれほど秀でている訳ではなく、単体が相手なら少し荒事に慣れた人間でも渡り合う事は可能だ。しかし集団で彼等と出くわした場合、その脅威度は遥かに高くなる。
「手助けはいるかい? ヨシュア君」
そのコボルトが十数匹。おそらく獲物を探して徘徊していたのだろう。そして彼等の嗅覚は鋭い。すでに僕達は発見されている。
彼等は隊列を組んだ。盾持ちが四人前に立ち、その後ろに弓持ちが三人。その左右に剣や槍を持った者が展開し、鶴翼の形で僕達を包囲しようとしている。
まあ、普通に考えればあんまり嬉しくない状況だ。その上でヨシュア君に訊ねている。
「私一人ならばどうという事はないが、シェラもいる事だしこの数を相手取るには少々手が足りない。済まないが、シェラを頼めるかな?」
うん、いいね。シェラさんの前でいい所を見せたい場面だろうけど、まずは彼女の安全を優先する。名を捨てて実を取るというべきか。
僕はノワールとアーテルに目配せをする。話さなくても意図は伝わっているだろう。
「うん。シェラさんは任された」
僕の返答を聞いて、ヨシュア君は両翼に展開しようとしているコボルト達を捨て置き、正面の盾持ちに守られた弓持ちに向かって駆けていく。厄介な遠距離攻撃を自分に引き寄せ、シェラさんの安全を守ろうという訳だ。
逆風の盾を前に構えながら突進していくヨシュア君に、思惑通りコボルトの矢が放たれた。
「力を見せてもらうぞ! 逆風の盾!」
叫んだヨシュア君の逆風の盾が薄緑の燐光に包まれた。あれは風属性の魔力の光。すると、ヨシュア君に迫る矢が軒並み勢いを失い、更に放ったコボルトへと跳ね返される。
しかしその矢は盾持ちのコボルトが跳ね返す。
「フッ!」
だけど今のヨシュア君は、特訓で爆上がりした身体能力に加えて、僕のパーティに参加している事によるバフの効果がある。跳ね返された矢に迫る速度でコボルトに駆け込み、矢を跳ね返したばかりの盾持ちのコボルトを一気に二人、盾ごと両断した。流石はフレイムブレイド、普通の剣じゃああは行かない。
盾持ち二体を倒した後は、返す刀でもう一体の盾持ちを斬り捨てた。散り散りに逃げる弓持ちを淡々と倒すだけ。中々に見事な手際だ。
そうしている間にも、両翼に分散したコボルトの遊撃部隊がこちらに迫っていた。左右ともに六体ずつか。
ノワールが両手に短剣を持ち、久しぶりに見る双剣士の妙技を見せる。逆手に持った短剣は目にも止まらぬ速さで振り抜かれ、あっという間に二体のコボルトが血を吹き出して倒れ伏す。
さらにもう一体の目の前で高く跳躍した彼女は、落下しながら両手の剣を交差させるように振り抜いた。コボルトには直前でノワールが消えたように映ったのだろう。まったく対応出来ずに首がずり落ちた。
アーテルは向かって来たコボルトの正面に仁王立ち。
「この駄犬共が。この神狼の前に悪意を持って立ちふさがるとは、万死に値するぞ?」
そしてゆっくりとコボルトに向かって歩を進めていく。その身体から闇属性の魔力が揺らぎ立ち昇り、コボルトは尻尾を股の間に挟んで震えている。
「一度でも我に刃を向けた事、後悔するがいい」
そう言うやいなや、アーテルの姿がブレて消える。そして魔力を流して強化した目でどうにかその動きを追えば、六体のコボルトはなす術もなく地面に叩き伏せられていた。
そして僕にはノワールが敢えて残しておいてくれたコボルト三体が迫る。背中の短双戟を抜いて両手に構え、一体は穂先で突き殺し、もう一体を月刃で首を落とした。魔法陣を刻み込んでおり、魔力を流す事で魔剣以上にタフで鋭い武器になる僕の短双戟。更にはノワールやアーテル相手に鍛え上げた身体強化と技術。
ジョブや近接戦闘スキルの恩恵がなくとも、こんな雑魚魔物相手に不覚を取る僕じゃない。
一瞬で二体を倒したが、敢えて一体は見逃す。それはシェラさんに向かっていった。
さあ、シェラさんの試練の時間だ。
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