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三章

よくある部屋割りの問題

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 僕達は商業ギルドを出て、その他のギルド本部を訪ねてみた。特に興味があったのは職人ギルド。これは小売りをしている商人とは別に、自らモノを作る工房を持っていながら販売もしているというスタイルの人達、もしくは小売店に自らの作品や商品を卸している人達が所属している組織だ。
 物凄く簡単に言えば、専門店にはこの職人ギルドに所属している人が多い。未だに自分の店を持つ事が出来ず大店おおだなに卸している人達も多数いる。
 逆に、その大店というのは俗に言う商会というヤツで、その商会の中に多数の小売店がある。ブンドルのような巨大な商会から、マシューさんのような個人で営む小さな商会まで様々だ。
 その中で僕が注目したのは自分で店を持っている職人さん。この人達は商会と関わらずに商売が出来る為、ブンドルの妨害もあまり効果がなさそうだという判断からだ。

 職人ギルド本部の対応はと言うと、どちらかと言えば冒険者ギルド本部と似通った感じだった。敵対という訳ではないけど、それほど協力的という訳でもない。それでも、ブンドルに対しての敵意は感じられたかな。
 結局商会との取引が止められては職人も困るので、上手くやってくれ。そんなニュアンスだった。

「これでどこに行っても買い物は出来そうですね、ご主人様?」

 ノワールが小首を傾げて可愛らしくそう言う。タレ耳がピコピコと揺れているのは嬉しい証拠だ。最初はカチューシャか何かだと思ってたんだけど、まさか自前だったとはなあ。

「そうだね。良さげな職人さんの所や美味しいお店もリサーチ出来たし、今日はそろそろ宿に行こうか」

 僕の言葉にみんなが頷き、冒険者ギルドが紹介してくれた宿へと向かう。冒険者ギルドからは目と鼻の先にある宿なんだけど、商業ギルドや職人ギルドを巡った後なので結構歩くかな。

 今日各ギルド本部を回って分かった事は、ブンドルの影響が大きい商業ギルドはともかく、職人ギルドはブンドルに対して好意的ではないって事だね。
 もちろん商業ギルドを敵に回したらいろいろ不都合も出て来るだろうから、表立っては危険な事は言えない空気はあった。でも腹の底ではブンドルを煙たがっているのが分かっただけでも収穫だよね。

 そんな事を考えているうちに宿の前に着いた。ちょうど夕刻になろうかという所だし、いいタイミングじゃないかな。

「へえ~、さすが本部御用達、立派な建物ねえ」

 建物を見上げてデライラが呟いた。外から見た感じでは五階建てに見える。ここからだと奥行とかは分からないけど、相当の人数が宿泊できるのは間違いないだろうね。

「ご主人様、少し探ってきますね」

 そう言ってノワールは影に沈んでいった。影泳ぎで建物の内部を探りに行ったんだろうね。いくら冒険者ギルドのおススメの宿とは言え、ここは王都、敵のお膝元だ。用心するに越した事はない。それに経営者はブンドルの息が掛かっていないとしても、宿泊客までは分からないし。

「冒険者ギルド本部のユーイングさんの紹介で来ました。今日から一か月ほど宿泊したいのですが」

 宿に入り、カウンターにいる男性従業員に声を掛ける。

「はい、五名様ですか?」
「いえ、一人は遅れて来ますので、六人です」

 影に紛れて宿の内部を探索中のノワールは遅れて到着する事にし、六人で予約を取ろうとしたんだけど……

「お部屋の方はいかが致しましょう?」

 なるほど。部屋の割り当ては考えてなかったな。でもそこでデライラがずいと身を乗り出してきた。

「一人部屋が一つ、二人部屋を一つ。三人部屋を一つでお願い」

 え、ちょっと待って。それどういう割り振りするのさ?

「あたしが一人! ルークスとグランツは二人! あんた達は三人!」

 そんなデライラにグランツは不服そうだ。うん、この爺さん知恵の象徴とか言われてるけど、スケベだもんね。それに対してアーテルは嬉々としている。

「それはいいな! ノワールも喜ぶ!」

 まあね。ノワールとアーテルが僕と一緒にいたいのは分からなくはない。でもね。

「すみません、三人部屋を二つで」

 僕は有無を言わせない調子で受付のお兄さんにそう言った。
 何をどう勘違いしたのか分からないけど、グランツの爺さんの顔には喜色が浮かび、デライラとアーテルは絶望している。イケメンルークスは無表情だ。さすが光の大精霊、動じないね。

「という訳で、ルークス、グランツは僕と同じ部屋だ。デライラ達は女子三人でね」

 みんなの顔を見ていると、なんというか、悲喜こもごもだな……
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