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一章
コアの中のひと
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ゴールドランクの冒険者が束になって掛かっても、犠牲者を出さなければ勝てない程の強力な魔物。という事は、マンティコアは単体でもプラチナランクに相当するという事だろうか。
その強力な魔物を僕達三人で手玉に取っている。ノワールとアーテルに至っては武器すら使っておらず、僕も本来の力である闇属性魔法は見せていない。
多分僕一人でも勝てたと思うけど、闇属性魔法を封印したままでは割と際どい勝負になったんじゃないかな。どちらにしても、推定プラチナランクの魔物を相手にしてもそれほどの脅威は感じていない。
でもそれは僕だけであって。
「「「……」」」
ギルドの幹部二人とデライラは開いた口が塞がらないみたいだ。そうしている間にも、ノワールは地面に埋まったマンティコアの頭をゲシゲシと蹴飛ばしているし、アーテルは『勝手にスタンピードなんぞ起こすなこのバカモノが!』とか言って説教している。
「ノワール、アーテル。そろそろトドメを刺そう」
「はい」
「うむ」
おそらくこの魔物も希少な素材になるだろうから、なるべく損傷させない方がいいんだろうね。僕は短戟を一気に振り抜いて、マンティコアの首を落とした。
「こんなバケモノを子ども扱いかよ……」
「ゴールドランクって、実は雑魚なのかしら……」
ギルドの二人が呆れちゃってるけど、魔物の強さにも個体差があるんじゃないかな? これはきっと弱いマンティコアだったんだよ!
(主人よ。それは無理筋だな。この部屋にいる時点でダンジョン内では最強の存在なのだ)
うう……分かってるよアーテル。分かってはいるんだけどさ。
「デライラ、あのマンティコアをマジックバッグに回収してくれる? それでアーテル、ダンジョンコアというのはどこにあるのかしら?」
流石はギルド長、職務優先というか、今成すべきことから目を逸らさないというか。僕等が三人でプラチナランク相当の魔物を倒した事は、取り敢えず置いておく事にしたらしい。
「うむ、突き当りの岩壁に、妙な魔力を感じる部分があろう?」
確かに一部分だけ、魔力を発している部分がある。でもそれはどの属性の魔力なのか、いまひとつ分からないな。火水風土の四大属性でもなければ、闇属性とも違う。
僕以外にはウィッチであるサマンサギルド長が認識しているようだけど、やっぱり違和感があるのか、首を傾げている。
魔力と言えば、前回ここに来た時は精霊が一切いなかったのに、今日は何故か精霊がいる。僕が水魔法を使えたのがその証拠だなんだけど、どういう事だろう?
(ああ、それは四大属性の精霊共が我を嫌っているからだろう。我がこの部屋にいた時は、あやつらは寄り付かなんだ)
なるほどなぁ。僕と同じ闇属性に適正を持つアーテルを恐れたのか、この部屋に限っては一切精霊がいなかったと。僕に対しては力を貸す事を拒む程度だったのに、寄り付かないとはね。やっぱりアーテルは底知れぬ存在だよ。
「その場所を掘ればいいのかしら?」
「うむ、何が出てくるかは我も知らんがな」
掘り返すって言ってもね……ツルハシとか持ってないよ?
「あたしがやるわ。ううん、あたしがやらなくちゃいけない。そんな気がするから」
なんと、そこで名乗り出たのはデライラだった。例の魔剣を手に壁に向かっていく。
おかしいな? ちゃんと場所が分かっているようで、一切の迷いもなく件の場所へ歩いていく。デライラ、魔力を感じているの?
「やあっ!」
まだ身体に痛みが残っているのか、ややぎこちない動きだけど、彼女はその岩壁に思い切り剣を突き立てた。
するとどうだろう? その部分だけ、岩壁がボロボロと崩れ落ちていき、中から乳白色で半透明の石柱らしきものが現れた。
デライラの剣はその石柱にしっかりと突き刺さっていて、その部分を起点に四方八方に亀裂が走る。そしてその亀裂から、乳白色の靄が溢れ出してきた。
んー? なんか既視感があるな。
「ご主人様……」
僕の横で寄り添うノワールも何かを感じているらしい。
溢れ出た乳白色の靄は、不定形ながらもまるで意思を持っているかのように、デライラの周囲をふよふよと周回している。
何て言うんだろう? まるでデライラを品定めしているみたいだ。
「あたしを呼んだのはあなた?」
デライラが靄に向かって問いかける。それにしても、呼んだ、とは?
やがて乳白色の靄は徐々に集まり密度を高めていき、やがて人の形を成した。
ああ……これはノワールの時と同じだ。
「私は光の大精霊。遥か昔よりこの中に封印されていた。待っていたぞ。光の者よ」
人の形をした乳白色の靄が、さらっと衝撃的な事を言う。ノワールに続いてもう一人、世界を揺るがしかねないものが現れちゃったよ。
「む? 人の姿をしているが分かるぞ? 其方は闇の大精霊ではないか! 久しいな!」
その光の大精霊がノワールを見て言っちゃった。これはもう、全部話さなきゃいけない流れだよね……
それにしても、デライラが光の者とはどういう事だろう?
その強力な魔物を僕達三人で手玉に取っている。ノワールとアーテルに至っては武器すら使っておらず、僕も本来の力である闇属性魔法は見せていない。
多分僕一人でも勝てたと思うけど、闇属性魔法を封印したままでは割と際どい勝負になったんじゃないかな。どちらにしても、推定プラチナランクの魔物を相手にしてもそれほどの脅威は感じていない。
でもそれは僕だけであって。
「「「……」」」
ギルドの幹部二人とデライラは開いた口が塞がらないみたいだ。そうしている間にも、ノワールは地面に埋まったマンティコアの頭をゲシゲシと蹴飛ばしているし、アーテルは『勝手にスタンピードなんぞ起こすなこのバカモノが!』とか言って説教している。
「ノワール、アーテル。そろそろトドメを刺そう」
「はい」
「うむ」
おそらくこの魔物も希少な素材になるだろうから、なるべく損傷させない方がいいんだろうね。僕は短戟を一気に振り抜いて、マンティコアの首を落とした。
「こんなバケモノを子ども扱いかよ……」
「ゴールドランクって、実は雑魚なのかしら……」
ギルドの二人が呆れちゃってるけど、魔物の強さにも個体差があるんじゃないかな? これはきっと弱いマンティコアだったんだよ!
(主人よ。それは無理筋だな。この部屋にいる時点でダンジョン内では最強の存在なのだ)
うう……分かってるよアーテル。分かってはいるんだけどさ。
「デライラ、あのマンティコアをマジックバッグに回収してくれる? それでアーテル、ダンジョンコアというのはどこにあるのかしら?」
流石はギルド長、職務優先というか、今成すべきことから目を逸らさないというか。僕等が三人でプラチナランク相当の魔物を倒した事は、取り敢えず置いておく事にしたらしい。
「うむ、突き当りの岩壁に、妙な魔力を感じる部分があろう?」
確かに一部分だけ、魔力を発している部分がある。でもそれはどの属性の魔力なのか、いまひとつ分からないな。火水風土の四大属性でもなければ、闇属性とも違う。
僕以外にはウィッチであるサマンサギルド長が認識しているようだけど、やっぱり違和感があるのか、首を傾げている。
魔力と言えば、前回ここに来た時は精霊が一切いなかったのに、今日は何故か精霊がいる。僕が水魔法を使えたのがその証拠だなんだけど、どういう事だろう?
(ああ、それは四大属性の精霊共が我を嫌っているからだろう。我がこの部屋にいた時は、あやつらは寄り付かなんだ)
なるほどなぁ。僕と同じ闇属性に適正を持つアーテルを恐れたのか、この部屋に限っては一切精霊がいなかったと。僕に対しては力を貸す事を拒む程度だったのに、寄り付かないとはね。やっぱりアーテルは底知れぬ存在だよ。
「その場所を掘ればいいのかしら?」
「うむ、何が出てくるかは我も知らんがな」
掘り返すって言ってもね……ツルハシとか持ってないよ?
「あたしがやるわ。ううん、あたしがやらなくちゃいけない。そんな気がするから」
なんと、そこで名乗り出たのはデライラだった。例の魔剣を手に壁に向かっていく。
おかしいな? ちゃんと場所が分かっているようで、一切の迷いもなく件の場所へ歩いていく。デライラ、魔力を感じているの?
「やあっ!」
まだ身体に痛みが残っているのか、ややぎこちない動きだけど、彼女はその岩壁に思い切り剣を突き立てた。
するとどうだろう? その部分だけ、岩壁がボロボロと崩れ落ちていき、中から乳白色で半透明の石柱らしきものが現れた。
デライラの剣はその石柱にしっかりと突き刺さっていて、その部分を起点に四方八方に亀裂が走る。そしてその亀裂から、乳白色の靄が溢れ出してきた。
んー? なんか既視感があるな。
「ご主人様……」
僕の横で寄り添うノワールも何かを感じているらしい。
溢れ出た乳白色の靄は、不定形ながらもまるで意思を持っているかのように、デライラの周囲をふよふよと周回している。
何て言うんだろう? まるでデライラを品定めしているみたいだ。
「あたしを呼んだのはあなた?」
デライラが靄に向かって問いかける。それにしても、呼んだ、とは?
やがて乳白色の靄は徐々に集まり密度を高めていき、やがて人の形を成した。
ああ……これはノワールの時と同じだ。
「私は光の大精霊。遥か昔よりこの中に封印されていた。待っていたぞ。光の者よ」
人の形をした乳白色の靄が、さらっと衝撃的な事を言う。ノワールに続いてもう一人、世界を揺るがしかねないものが現れちゃったよ。
「む? 人の姿をしているが分かるぞ? 其方は闇の大精霊ではないか! 久しいな!」
その光の大精霊がノワールを見て言っちゃった。これはもう、全部話さなきゃいけない流れだよね……
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