遊び人の恋

猫原

文字の大きさ
上 下
147 / 170
第四章

4-61

しおりを挟む
注:R18。






解放されて、大きく息を吸い込んで、頭に空気を送るように何度も深呼吸を繰り返した。
閉じていた瞼を開くと、思った通り黒い瞳がそこにあって雪はどぎまぎした。
その唇がやはり濡れていて、思わず自分の唇を舐めると同じように濡れていて、どちらの唾液だろうかと思ってしまう。
顔を解放されたから、雪は周囲を見渡すことが出来た。
帰ってきた時はまだ明るかったのに、今は薄暗い。
どれだけ口付を交わしていたのだろう。もう少しすればこの部屋の中は暗闇で覆われる筈だ。いつもなら行灯を照らしている筈がその余裕がなかったからか、火を灯していなかった。
自分の首から下を見ると、気付かないうちに帯は解かれて長襦袢ごと着物は開(はだ)けさせられていて雪は目を丸くした。久賀との口付で気付く余裕なんぞなかったし、袴もまたそのまま下に引っ張られれば脱げてしまいそうだった。

「く、くが、さ」

名前を呼ぼうとすると、男の唇が綺麗に弓を描いたかと思うと、すっと消えた。
移動する場所は服の上から揉みしだいでいる胸で、先程まで自分の唇を犯していたそれは、服の上から硬くなったそれに食らいついてきて雪は声の腰は跳ねた。

「いやぁ、だ、だめっ……」

口付だけで奪われたせいで押し退ける力なんて残っている筈はない。現に先程男の腕を退かそうとしてもうんともすんとも言わなかった。自由になった口で拒否の言葉を出してみても、一向に離れる気配はなかった。

「だ、だ、め、だって、もぉっ……んっ、あ、いや、だぁ、っ」

いつもなら、嫌だと言えば止めてくれる筈なのに一向に止めてくれる気配はなく、服ごとその頂きを吸い続ける男の頭を掴んで下に押しても何の抵抗にもならない。

昔なら「どっちが良い?」って選ばせてくれた。「嫌だ」と言えば「これは?」と聞いてくれたのに……。
でも、だからといって何と何を比べて選ばせてくれるのか想像は付かないけど……。

「んっ、あっ、んんっ、久賀さっ……!」
「はっ……雪……」
「喋っちゃ、やっ」

喋ると息が当たって擽ったいのだ。どうやらその抗議だけ聞いてくれたようで名前を呼ばれる事はなくなったが、乳首を吸われる事だけは止(や)めてもらえなかった。
吸っていただけの乳首を今度は唇で持ち上げて、唇で食むように弄られる。服越しのせいか、擦られた感触もあった。軽く歯を立てられ、痛い筈なのに全く痛いと感じない自分は痛覚まで可笑しくなったのかと雪は怖くなってしまう。
やっと、久賀の口が離れたと思えば、今度は左に移動しただけで右と同じように吸われてしまう。今まで吸われていた右は涎のせいで透けて見えて妙にいやらしく、硬く勃ってしまったそれから雪は視線を逸らしてしまう。

「ひやっ、あっ、もぉっ! 触らな、い……っ」

視線を外したのと同時に、濡れたそこを、男は指で弄り始めた。ぴんと立つそこを指で弾いて指の先でクリクリと押しつぶす動作をされて濡れているせいで両方舐められているような感覚に陥ってしまった。
この感覚に耐えるように下唇を噛もうとすると「噛まない」と言葉が返って来て雪は歯を引っ込めた。
やはり、目が付いているんだと、雪は思って男の髪をくしゃくしゃに乱すが、勿論目なんてない。

「くっ、がさっ……」

名前を読んでみてもやはり反応がなく、名前を呼べば呼ぶ程、胸への刺激は強くなるだけだった。
三カ月前もこうして抱き合ったが——過去が霞んでしまう程、今の出来事は濃い。

服越しでもこんなに感じてしまうなら、直で触られては死んでしまう。そう思っているのを知っているかのように男の右手が中に入り込んできてビクビクと躰が震えた。
しかも長襦袢の前もいつのまにか開(はだ)けさせられていて、直接舌で口に含まれていた。

目だけでなく神通力でも備えているんじゃないかと雪は、肌に直接弄られて喘ぎながらそう思った。
服越しでは感じられなかった、男の体温を直接肌で感じて息も絶え絶えになる。躰の奥から波が駆け上がりそうで、雪は過去に男に教えられた通りに、名前を何度も呼び続けた。

「久賀さまぁっ……っ!」

昔の呼び方に戻ってしまっているのは無意識だった。
景色が白くなって行く様を、雪は久し振りに体験した。全身を伝う痺れに耐えるように肩で息をしていると、ちゅっと首筋に唇が当てられた。その感触までいったばかりの躰には毒で感じてしまいそうになる。
当てられて唇は、最初は軽かったのに、徐々に何度も啄んでいると強さを増して行った。

「あ、痕……だ、め」

今日に限って駄目と言っても止(や)めてくれる気配はなく、点々と痕をつけるように首筋から鎖骨へと紅い痕を残される。着物を着ても見える場所に付けられてしまい、ぼうっとしながら「明日は何を着よう」と考えていた。

「雪」と名前を呼ばれて、瞳を覗き込まれ、それに吸い寄せられるようにして雪もその瞳を見た。

「雪」
「ふぁい……」

と返事をする。
長時間口付をされて、胸を触られてイカされて、久々の行為は雪の睡眠を誘うのに充分だった。
辺りは暗い。雪はもう疲れていて、眠たくなっていた。むにゃむにゃと口を動かして雪は目を擦る。

そんな雪を見て久賀は苦笑をしながら、ゆったりと頬を撫でた。優しく微笑みながら、言葉を紡いだが、それは雪の目を覚まさせるのに充分な言葉だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。

どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。 婚約破棄ならぬ許嫁解消。 外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。 ※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。 R18はマーク付きのみ。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

処理中です...