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第四章
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まり良くはなかった。
しかし————美形は美形なのだ。
影がある程女性はこの男に惹かれてしまっていた。
「他人が作った物は食べないからな…自分で作ってるさ」
「ねぇ。隼馬さんと会ってる?」
と訊けば目が座り舌打ちをされた。
「私にずっと手紙が届くんだけど…弟に会いたいから間に入って欲しいって」
「殺されなかっただけで感謝すべきだな。顔を見たら俺は斬るぞ」
「…………」
憎々しい表情を浮かべてそう吐き捨てた幼馴染を由希は溜息を吐いた。
あの兄弟は末っ子を構う傾向がある。それを本気で嫌がる弟の気持ちを汲むのは次男だったが、それに一向に気付かずに構い続けるのは長男だった。
今回ばかりはやり過ぎたし、そのせいであの少年は行方不明のままだ。許せないのは分かるが、あの長男だ。痺れを切らして自ら乗り込んでくるのは時間の問題のような気がした。
そうなると、その兄弟喧嘩には流石に妊婦の由希には手に負えなくなる。それを見兼ねて、そうなった時は「俺が止めます」と恵之助は言ったが、京は本気でやり合う。自分の旦那の命の危険が危うくなるような目には遭わせたくなかった。
「手紙に何があっても家へ行くな、と書いておけ」
肩を竦めた久賀はそう言うと否や由希に顔を近付けてまじまじと見つめ、由希は隣に夫が居る事を思わず忘れそうになりその美形に一瞬だけ息を飲んだが
「ずっと訊きたかったんだが…こいつの全部入った?」
こいつと言って隣に立つ恵之助を指を差す。何故か恵之助が顔を真っ赤にして女性のような悲鳴を上げ由希もこの男が何を言っているのか理解した。
「何言ってんのよ!!!」
と肩を殴れば、意地の悪いような顔をされて笑われた。
「妊娠したんだから、入ってるか」
ケラケラ腹を抱えて笑う男の肩をもう一度殴れば
「二人でのお出かけを邪魔しちゃならないんで俺はさっさと帰ります」
ぷんすかと怒る妻を宥める夫の二人の横を通って久賀は歩き出した。
自分に見惚れる女達に気付かないフリをしてして、ふとあの二人を羨ましいなという感情が湧いた。
お互い好き合っていて理想の夫婦そのものだ。
幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ———共に生きる事が出来る。
由希は妊娠した。
子供がいれば、逃げられない———…
あの恵之助という男には俺のような仄暗い気持ちはない。
それでも、自分の惚れた女を孕ませて共に生きられる事が久賀には酷く羨ましかった。
しかし————美形は美形なのだ。
影がある程女性はこの男に惹かれてしまっていた。
「他人が作った物は食べないからな…自分で作ってるさ」
「ねぇ。隼馬さんと会ってる?」
と訊けば目が座り舌打ちをされた。
「私にずっと手紙が届くんだけど…弟に会いたいから間に入って欲しいって」
「殺されなかっただけで感謝すべきだな。顔を見たら俺は斬るぞ」
「…………」
憎々しい表情を浮かべてそう吐き捨てた幼馴染を由希は溜息を吐いた。
あの兄弟は末っ子を構う傾向がある。それを本気で嫌がる弟の気持ちを汲むのは次男だったが、それに一向に気付かずに構い続けるのは長男だった。
今回ばかりはやり過ぎたし、そのせいであの少年は行方不明のままだ。許せないのは分かるが、あの長男だ。痺れを切らして自ら乗り込んでくるのは時間の問題のような気がした。
そうなると、その兄弟喧嘩には流石に妊婦の由希には手に負えなくなる。それを見兼ねて、そうなった時は「俺が止めます」と恵之助は言ったが、京は本気でやり合う。自分の旦那の命の危険が危うくなるような目には遭わせたくなかった。
「手紙に何があっても家へ行くな、と書いておけ」
肩を竦めた久賀はそう言うと否や由希に顔を近付けてまじまじと見つめ、由希は隣に夫が居る事を思わず忘れそうになりその美形に一瞬だけ息を飲んだが
「ずっと訊きたかったんだが…こいつの全部入った?」
こいつと言って隣に立つ恵之助を指を差す。何故か恵之助が顔を真っ赤にして女性のような悲鳴を上げ由希もこの男が何を言っているのか理解した。
「何言ってんのよ!!!」
と肩を殴れば、意地の悪いような顔をされて笑われた。
「妊娠したんだから、入ってるか」
ケラケラ腹を抱えて笑う男の肩をもう一度殴れば
「二人でのお出かけを邪魔しちゃならないんで俺はさっさと帰ります」
ぷんすかと怒る妻を宥める夫の二人の横を通って久賀は歩き出した。
自分に見惚れる女達に気付かないフリをしてして、ふとあの二人を羨ましいなという感情が湧いた。
お互い好き合っていて理想の夫婦そのものだ。
幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ———共に生きる事が出来る。
由希は妊娠した。
子供がいれば、逃げられない———…
あの恵之助という男には俺のような仄暗い気持ちはない。
それでも、自分の惚れた女を孕ませて共に生きられる事が久賀には酷く羨ましかった。
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