遊び人の恋

第二章

2-7

⭐︎

一羽の鷹が頭上をぐるぐる回っている事に、薫は気付いた。
まるで、自分をどこかへ誘導しているようだと思い、寺小屋帰り一緒に歩いていた友達を放ってその鷹の後をついて行った。自分を呼び止める声がしたが、薫は気にした素振りを見せず、ただ鷹だけを追い掛ける。
神社にたどり着くと、鷹は賽銭箱に降り、薫がそこへ辿り着くのを待っているそぶりを見せた。
利口な子のようだ、と薫は息を切らしながら鷹の元へ着くと、足を出された。その足には、一枚の紙が丁寧に巻かれており、その差し出された足を見て、読めという事かと悟った薫は括り付けられた紙を丁寧に足から外し、中を開いた。中はどうやら、手紙だ。可愛らしい文字で挨拶がつらつらと綴られていた。
薫はその文字を黙々と読んだ。

「お友達が欲しい、か」

性別は分からない。
文字だけを読むと女の子のような気もするし、男の子がこのように知らない相手に手紙を送るような事をするとは思えない。年齢も書いていなかった。勘だが、私より年下で可愛い女の子だと思う、と薫はうんうん頷いた。
薫は十三歳。十三歳にしては背も高く、胸も大きく、腰は細く、尻は大きいと早熟な子供だった。見た目が大人な分、閨もとっくに経験している。雪とは真逆である。慶ちゃんの采配は流石と言っても良かった。
賽銭箱の上でいまだに足を突き出したままの慶ちゃんを見て、手紙を催促されている事に薫は気付いた。
勉強道具から筆と紙を用意すると、神社の賽銭箱の壁を下敷きにすらすらと返事を書く。自己紹介、名前、性別。年齢まで書いた。最後にあなたのお名前と性別、年齢教えて下さい、と付け加え、慶ちゃんの足に括り付けた。

「慶ちゃん、宜しく」

慶ちゃんの名前は手紙に書いてあった。
薫は慶ちゃんの頭を撫でると、短く鳴いて、飛び去っていった。その姿を見えなくなるまで薫は見送った。
ドキドキワクワクと胸がなって、薫は足元を弾ませながら、帰路についた。

それから、数分後して、慶ちゃんの足に括られた手紙を見て雪が歓喜の声を上げ、手紙を両手で持ち上げながら、久賀の元まで走ってきた。
久賀は雪にバレないようにその手紙を苦々しく見つめたのだった。