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番外編
日帰り温泉旅行 2
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山頂からの眺めを十分に堪能した俺たちは、ベンチに座って道の駅で買ってきたおにぎりを取り出した。
「いただきます」
2人同時に手を合わせ、味ご飯のおにぎりにかぶりつく。
「おいしいですね!
味がしっかりついてて、具も色々入ってて」
道の駅で買った味ご飯のおにぎりは、いかにも田舎のおばあちゃんが作りましたといった感じの、濃い目の味付けで確かに美味かった。
「うん、うまいな。
まあ、俺はやっぱりタロが作ってくれたおにぎりの方が好きだけどな」
タロが作ってくれるおにぎりは、ごく普通の白いご飯の三角のおにぎりで、具も梅干しや鮭といったごく普通のものだ。
けれども、愛情がたっぷり込められているので、やはり他のどんなおにぎりよりもタロのおにぎりが一番うまいと思う。
本当は今日もタロはお弁当を作ると言ったのだが、朝が早かったので、道の駅で買おうと俺が言ったのだ。
タロは、俺が近くの公園などでスケッチする時にもよくお弁当を作ってくれるので、タロのお弁当を食べる機会はちょくちょくあるので、こういう遠出をする時くらいはタロも料理をお休みしてくれたらいいと思う。
味ご飯と山菜おこわのおにぎりを食べ終えた後、絵の参考になりそうな写真を何枚か撮り、ついでに俺とタロと山頂の看板を入れて自撮り記念写真を撮った後、俺たちは山頂を後にして滝へと向かった。
山道を下り、行きは通り過ぎた分かれ道を曲がる。
そのまま道を下っていくと水の流れる音が聞こえ始め、やがて滝に出た。
さすがにまだ寒さの残るこの時期に滝を見に来る人は少ないらしく、滝のそばには誰もいなかった。
「お、小さいけど、なかなかいいな。
いい絵になりそうな滝だ」
水量も少ないし、落差もせいぜい数メートルのこじんまりとした滝だが、深い緑色の水をたたえる滝壺や滝にかかる木の枝がいい具合で、この風景を絵にすれば夏向きの涼しげな作品が出来上がりそうだ。
俺がさっそく色んな角度から写真を撮り始めると、タロはリュックからレジャーシートとフリースのひざ掛け兼クッションを取り出した。
「うん、やっぱりここがいいかな。
タロ、こっちの岩のところにシート敷いてくれるか?」
「はい」
タロが持ってきてくれたレジャーシートを2人で岩の上に広げ、フリースのクッションの上に座る。
これはフリースのひざ掛けがフリースで出来た袋に入っていてクッションとしても使うことが出来、軽くて持ち運びが楽なので、外でスケッチする時によく使っている。
俺が自分のリュックからスケッチブックと鉛筆を出していると、タロもクッションをお尻に敷いて、俺のすぐ隣に俺に体をくっつけるようにして座った。
人の姿の時は人目を気にしていつも少し離れて座るタロだが、今日は周りに誰もいないので、犬の姿の時と同じ密着距離だ。
滝の音が聞こえる中、俺は黙って鉛筆を走らせ続け、タロは俺が絵を描く様子を黙って見ている。
2人の間に会話はないけれど、それが気詰まりではなく、むしろ心地いいとさえ感じる。
俺だけではなく、タロの方もそう思ってくれているのがタロのくつろいだ表情からうかがえる。
「あ、さっき買ったミカンむきますか?」
「お、いいな。頼むよ」
「はい」
俺がうなずくと、タロはリュックの中からミカンを取り出して、皮をむき始めた。
「はい、ご主人様」
「ん」
しばらくして、タロが皮をむいて丁寧にスジを取ったミカンを一房、俺の口元に差し出してくれたので、大きく口を開けると、タロが口の中にミカンを入れてくれる。
「お、甘いな」
「あ、ほんとですね。
当たりでしたね」
俺にミカンを食べさせた後、自分も同じように一房取って食べたタロも、俺の言葉にうなずいている。
絵を描く手は止めずに、もぐもぐと口を動かしてミカンを飲み込むと、すかさずタロが次のミカンを口元に差し出してくれたので、遠慮なく口を開けて食べさせてもらう。
どうでもいいけどこれ、完全に「あーん」だよな。
俺が絵を描いていて手がふさがっている時、タロはよくこんなふうにして、アメやチョコといった一口で食べられるものを俺の口に入れてくれる。
タロとしては、単純に仕事中の俺の世話を焼いているだけのつもりなのだろうが、普通は外でこんなことをしていたら単なるバカップルだ。
けれどとタロは、これがカップルっぽい行動だと気付いていないようなので、俺も黙って食べさせてもらうことにしている。
まあ男同士だし、ギリセーフだよな?
ちょっと微妙なところかも知れないが、まあこうしてタロが食べさせてくれるのは嬉しいから、セーフということにしておこう。
そんなふうにタロにミカンを食べさせてもらいつつスケッチを続け、やがて俺は満足してスケッチブックをリュックにしまった。
「さて、そろそろ行こうか。
タロ、待たせて悪かったな」
「いえ、ご主人様が絵を描くの、見てて楽しかったですから」
そんなかわいいことを言ってくれるタロの頭を撫でてやると、タロは照れたように微笑む。
「さて、山を下りたらお待ちかねの温泉だな」
「はい! 楽しみです」
そうして俺たちはなんとなく早足になって、道の駅へ向かって山を下りていった。
「いただきます」
2人同時に手を合わせ、味ご飯のおにぎりにかぶりつく。
「おいしいですね!
味がしっかりついてて、具も色々入ってて」
道の駅で買った味ご飯のおにぎりは、いかにも田舎のおばあちゃんが作りましたといった感じの、濃い目の味付けで確かに美味かった。
「うん、うまいな。
まあ、俺はやっぱりタロが作ってくれたおにぎりの方が好きだけどな」
タロが作ってくれるおにぎりは、ごく普通の白いご飯の三角のおにぎりで、具も梅干しや鮭といったごく普通のものだ。
けれども、愛情がたっぷり込められているので、やはり他のどんなおにぎりよりもタロのおにぎりが一番うまいと思う。
本当は今日もタロはお弁当を作ると言ったのだが、朝が早かったので、道の駅で買おうと俺が言ったのだ。
タロは、俺が近くの公園などでスケッチする時にもよくお弁当を作ってくれるので、タロのお弁当を食べる機会はちょくちょくあるので、こういう遠出をする時くらいはタロも料理をお休みしてくれたらいいと思う。
味ご飯と山菜おこわのおにぎりを食べ終えた後、絵の参考になりそうな写真を何枚か撮り、ついでに俺とタロと山頂の看板を入れて自撮り記念写真を撮った後、俺たちは山頂を後にして滝へと向かった。
山道を下り、行きは通り過ぎた分かれ道を曲がる。
そのまま道を下っていくと水の流れる音が聞こえ始め、やがて滝に出た。
さすがにまだ寒さの残るこの時期に滝を見に来る人は少ないらしく、滝のそばには誰もいなかった。
「お、小さいけど、なかなかいいな。
いい絵になりそうな滝だ」
水量も少ないし、落差もせいぜい数メートルのこじんまりとした滝だが、深い緑色の水をたたえる滝壺や滝にかかる木の枝がいい具合で、この風景を絵にすれば夏向きの涼しげな作品が出来上がりそうだ。
俺がさっそく色んな角度から写真を撮り始めると、タロはリュックからレジャーシートとフリースのひざ掛け兼クッションを取り出した。
「うん、やっぱりここがいいかな。
タロ、こっちの岩のところにシート敷いてくれるか?」
「はい」
タロが持ってきてくれたレジャーシートを2人で岩の上に広げ、フリースのクッションの上に座る。
これはフリースのひざ掛けがフリースで出来た袋に入っていてクッションとしても使うことが出来、軽くて持ち運びが楽なので、外でスケッチする時によく使っている。
俺が自分のリュックからスケッチブックと鉛筆を出していると、タロもクッションをお尻に敷いて、俺のすぐ隣に俺に体をくっつけるようにして座った。
人の姿の時は人目を気にしていつも少し離れて座るタロだが、今日は周りに誰もいないので、犬の姿の時と同じ密着距離だ。
滝の音が聞こえる中、俺は黙って鉛筆を走らせ続け、タロは俺が絵を描く様子を黙って見ている。
2人の間に会話はないけれど、それが気詰まりではなく、むしろ心地いいとさえ感じる。
俺だけではなく、タロの方もそう思ってくれているのがタロのくつろいだ表情からうかがえる。
「あ、さっき買ったミカンむきますか?」
「お、いいな。頼むよ」
「はい」
俺がうなずくと、タロはリュックの中からミカンを取り出して、皮をむき始めた。
「はい、ご主人様」
「ん」
しばらくして、タロが皮をむいて丁寧にスジを取ったミカンを一房、俺の口元に差し出してくれたので、大きく口を開けると、タロが口の中にミカンを入れてくれる。
「お、甘いな」
「あ、ほんとですね。
当たりでしたね」
俺にミカンを食べさせた後、自分も同じように一房取って食べたタロも、俺の言葉にうなずいている。
絵を描く手は止めずに、もぐもぐと口を動かしてミカンを飲み込むと、すかさずタロが次のミカンを口元に差し出してくれたので、遠慮なく口を開けて食べさせてもらう。
どうでもいいけどこれ、完全に「あーん」だよな。
俺が絵を描いていて手がふさがっている時、タロはよくこんなふうにして、アメやチョコといった一口で食べられるものを俺の口に入れてくれる。
タロとしては、単純に仕事中の俺の世話を焼いているだけのつもりなのだろうが、普通は外でこんなことをしていたら単なるバカップルだ。
けれどとタロは、これがカップルっぽい行動だと気付いていないようなので、俺も黙って食べさせてもらうことにしている。
まあ男同士だし、ギリセーフだよな?
ちょっと微妙なところかも知れないが、まあこうしてタロが食べさせてくれるのは嬉しいから、セーフということにしておこう。
そんなふうにタロにミカンを食べさせてもらいつつスケッチを続け、やがて俺は満足してスケッチブックをリュックにしまった。
「さて、そろそろ行こうか。
タロ、待たせて悪かったな」
「いえ、ご主人様が絵を描くの、見てて楽しかったですから」
そんなかわいいことを言ってくれるタロの頭を撫でてやると、タロは照れたように微笑む。
「さて、山を下りたらお待ちかねの温泉だな」
「はい! 楽しみです」
そうして俺たちはなんとなく早足になって、道の駅へ向かって山を下りていった。
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