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第2章 成犬編
2 成長
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「た、タロ?!」
ある日の夕方、いつものように人間に変身したタロを見た俺は、驚いて大声を上げた。
「お前、何でそんなに大きくなって……」
この前人間に変身した時は小学生サイズだったタロが、今日はなんといきなり15才くらいの中学生か高校生男子といった大きさになっていたのだ。
これが驚かずにいられるだろうか。
タロは体の大きさだけでなく、顔立ちも愛嬌たっぷりのかわいさはそのままに、少し大人っぽく変わっている。
驚いてぽかんと口を開けている俺に、タロはえへへと笑った。
「びっくりしましたか?
実は人間に変身するための力が強くなったので、体も大きくなったんです」
「そ、そうだったのか。
あー、驚いた。
けど、よかったな」
正直、いきなり大きくなられると心臓に悪いので、出来たら少しずつ大きくなって欲しかったとは思う。
とはいえ、なんにせよタロの力が強くなって大きくなったのなら、めでたいことだ。
「はい、ありがとうございます。
これでもう、踏み台を使わなくてもご飯が作れます。
他のお手伝いも今までよりも簡単に出来るようになったので、なんでもお申し付けくださいね!」
「おお、ありがとうな。
でも今でも十分手伝ってもらってるから、ほどほどで大丈夫だからな」
「はい。
あ、僕着替えてきますね」
そう言ってパジャマ姿のタロが、着替えを置いてある洗面所兼脱衣所に行くのを見送った俺は、次の瞬間あることに気付いてタロを追いかけた。
「タロ、服着られなくなってるんじゃないか?」
変身した時に着ていたパジャマは体に合わせて大きくなっていたが、チェストに入っている着替えはさすがに小さいままだろうと心配して洗面所のドアを開けると、タロは洋服があふれているチェストの一番下の引き出しを前に途方にくれていた。
「すいません、体に合わせて服も大きくなったので、引き出しに入らなくなっちゃいました……」
引き出しからあふれてた服を一枚広げてみると、俺が買ってやった子供服と同じデザインのものだったが、サイズは今のタロにぴったりの高校生サイズになっていた。
「へー、服も大きくなるのか。
これは便利だな」
また服を買い直して、一つずつお尻に尻尾用の穴を開けるとなると、費用も手間もかかるので、服も大きくなってくれて助かった。
おそらくだが、タロに人間になる力をくれたと思われる庭のお稲荷さんが、タロの体と一緒に服も大きくしてくれたのだろう。
お礼に明日、油揚げをたくさん買ってきてお供えすることにしよう。
「俺が使ってる上2段の引き出しはパンツとスウェットだけでまだ余裕あるから、俺の分を1段にしてお前が2段使えばいいよ」
「じゃあ、そうさせてもらいます。
着替えたらやっておきますね」
「うん、俺は仕事の続きやってるから」
俺がアトリエに戻って絵を描いていると、やがて洗面所から着替えを終えたタロが出てきた。
タロはそのままキッチンに行って晩ご飯の支度を始めた。
いつも使っている子供用のエプロンも、やはり今のタロにちょうどいいサイズになっている。
絵を描きながら、俺はタロがキッチンで働く後ろ姿を見るともなく見る。
手際よく料理をしているタロのお尻で、くるんと巻いた尻尾がゆっくりと左右に揺れている。
その尻尾の様子から、タロが俺の晩ご飯を作ることを楽しんでくれていることがわかる。
……というか、あの尻と太もも、ヤバくないか……?
この間までのタロは普通に子供子供した下半身だったのに、体が成長したせいで、キュッと締まった尻と、しなやかな筋肉が付いた太ももという、ゲイ目線で見るとひどくうまそうな下半身になっていた。
考えてみれば、犬のタロは散歩が大好きでよく歩きよく走るので、足の筋肉が発達しているから、人間になればああいう下半身になるのは当然といえば当然かもしれない。
俺、欲求不満なのかな。
いくら形のいい尻でも、タロの尻に対してヤバいはないと思う。
光と別れてからは、家にタロがいることもあって、男と遊ぶためにゲイバーに行くようなこともなく、せいぜい自分でたまに抜く程度だったので、たまっていることは確かだ。
それにしたって、子犬の時から飼っている、俺にとって子供のような存在であるタロをそんな目で見るなんて、と思ってしまう。
だいたい、タロの方だって俺にそんな目で見られたら困ってしまうだろう。
今はまだそんな素振りは見せないけど、タロだってそのうちに、かわいいお嫁さんをもらって子犬を産んで欲しいと思うようになる時が来るかもしれないのに。
……っていうか、お嫁さんって。
それはこの間から漠然と想像していたことなのに、成長した人間姿のタロを目の前にして改めて想像してみると、なんとなく納得できないというか嫌な気持ちになる。
この間までタロに似たコロコロした子犬がたくさん産まれたらかわいいだろうなとか気楽に考えていたのに、もしかしたらタロの成長を実感して、子供を嫁に出す父親みたいな気持ちになっているのかもしれない。
……まあ、お嫁さんはタロが欲しいって言い出してから考えたらいいか。
とりあえず問題は先送りにして、俺は再び描きかけの絵に集中することにした。
ある日の夕方、いつものように人間に変身したタロを見た俺は、驚いて大声を上げた。
「お前、何でそんなに大きくなって……」
この前人間に変身した時は小学生サイズだったタロが、今日はなんといきなり15才くらいの中学生か高校生男子といった大きさになっていたのだ。
これが驚かずにいられるだろうか。
タロは体の大きさだけでなく、顔立ちも愛嬌たっぷりのかわいさはそのままに、少し大人っぽく変わっている。
驚いてぽかんと口を開けている俺に、タロはえへへと笑った。
「びっくりしましたか?
実は人間に変身するための力が強くなったので、体も大きくなったんです」
「そ、そうだったのか。
あー、驚いた。
けど、よかったな」
正直、いきなり大きくなられると心臓に悪いので、出来たら少しずつ大きくなって欲しかったとは思う。
とはいえ、なんにせよタロの力が強くなって大きくなったのなら、めでたいことだ。
「はい、ありがとうございます。
これでもう、踏み台を使わなくてもご飯が作れます。
他のお手伝いも今までよりも簡単に出来るようになったので、なんでもお申し付けくださいね!」
「おお、ありがとうな。
でも今でも十分手伝ってもらってるから、ほどほどで大丈夫だからな」
「はい。
あ、僕着替えてきますね」
そう言ってパジャマ姿のタロが、着替えを置いてある洗面所兼脱衣所に行くのを見送った俺は、次の瞬間あることに気付いてタロを追いかけた。
「タロ、服着られなくなってるんじゃないか?」
変身した時に着ていたパジャマは体に合わせて大きくなっていたが、チェストに入っている着替えはさすがに小さいままだろうと心配して洗面所のドアを開けると、タロは洋服があふれているチェストの一番下の引き出しを前に途方にくれていた。
「すいません、体に合わせて服も大きくなったので、引き出しに入らなくなっちゃいました……」
引き出しからあふれてた服を一枚広げてみると、俺が買ってやった子供服と同じデザインのものだったが、サイズは今のタロにぴったりの高校生サイズになっていた。
「へー、服も大きくなるのか。
これは便利だな」
また服を買い直して、一つずつお尻に尻尾用の穴を開けるとなると、費用も手間もかかるので、服も大きくなってくれて助かった。
おそらくだが、タロに人間になる力をくれたと思われる庭のお稲荷さんが、タロの体と一緒に服も大きくしてくれたのだろう。
お礼に明日、油揚げをたくさん買ってきてお供えすることにしよう。
「俺が使ってる上2段の引き出しはパンツとスウェットだけでまだ余裕あるから、俺の分を1段にしてお前が2段使えばいいよ」
「じゃあ、そうさせてもらいます。
着替えたらやっておきますね」
「うん、俺は仕事の続きやってるから」
俺がアトリエに戻って絵を描いていると、やがて洗面所から着替えを終えたタロが出てきた。
タロはそのままキッチンに行って晩ご飯の支度を始めた。
いつも使っている子供用のエプロンも、やはり今のタロにちょうどいいサイズになっている。
絵を描きながら、俺はタロがキッチンで働く後ろ姿を見るともなく見る。
手際よく料理をしているタロのお尻で、くるんと巻いた尻尾がゆっくりと左右に揺れている。
その尻尾の様子から、タロが俺の晩ご飯を作ることを楽しんでくれていることがわかる。
……というか、あの尻と太もも、ヤバくないか……?
この間までのタロは普通に子供子供した下半身だったのに、体が成長したせいで、キュッと締まった尻と、しなやかな筋肉が付いた太ももという、ゲイ目線で見るとひどくうまそうな下半身になっていた。
考えてみれば、犬のタロは散歩が大好きでよく歩きよく走るので、足の筋肉が発達しているから、人間になればああいう下半身になるのは当然といえば当然かもしれない。
俺、欲求不満なのかな。
いくら形のいい尻でも、タロの尻に対してヤバいはないと思う。
光と別れてからは、家にタロがいることもあって、男と遊ぶためにゲイバーに行くようなこともなく、せいぜい自分でたまに抜く程度だったので、たまっていることは確かだ。
それにしたって、子犬の時から飼っている、俺にとって子供のような存在であるタロをそんな目で見るなんて、と思ってしまう。
だいたい、タロの方だって俺にそんな目で見られたら困ってしまうだろう。
今はまだそんな素振りは見せないけど、タロだってそのうちに、かわいいお嫁さんをもらって子犬を産んで欲しいと思うようになる時が来るかもしれないのに。
……っていうか、お嫁さんって。
それはこの間から漠然と想像していたことなのに、成長した人間姿のタロを目の前にして改めて想像してみると、なんとなく納得できないというか嫌な気持ちになる。
この間までタロに似たコロコロした子犬がたくさん産まれたらかわいいだろうなとか気楽に考えていたのに、もしかしたらタロの成長を実感して、子供を嫁に出す父親みたいな気持ちになっているのかもしれない。
……まあ、お嫁さんはタロが欲しいって言い出してから考えたらいいか。
とりあえず問題は先送りにして、俺は再び描きかけの絵に集中することにした。
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