俺とタロと小さな家

鳴神楓

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番外編

クラフトマーケット 3

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 夕方まで店を開いた後、俺たちは商店街の出店で晩御飯を買ってうちまで帰ってきた。

「今日はお疲れ様。
 カンパイ!」
「カンパイ! お疲れ様でした!」

 食卓に買ってきた屋台グルメを並べて2人でささやかな打ち上げだ。
 ちなみに飲み物は俺がビールでタロは缶チューハイを飲んでいる。
 基本タロは甘いお酒しか飲めないし、酒に弱いから缶1本飲んだら確実に寝るので、ビールを飲み終えたら半分もらった方が良さそうだ。

「いっぱい売れてよかったな。
 タロの作ったの、かわいいし造りが丁寧だったもんな」
「ありがとうございます。
 ご主人様の絵も人気でしたね」
「あー、あれは予想外だったな。
 マグカップがあんまり売れなくて、絵の方が売れるなんて」
「あ、思ったんですけど、もしかしたらワレモノは持って帰りにくいから、ああいうところでは売れにくいのかもしれません」
「あー、それはあるかもな。
 あとたぶんマグカップの絵柄も、俺の持ち味をあんまり生かせてなかったかも」

 マグカップでもタロを大きく描いたものは少しは売れたのだが、タロの他にスイカや風鈴など夏っぽい絵をたくさん散りばめたポップなデザインのものは細かくて描くのが大変だったわりには売れなかった。
 多分ほのぼのとしたタッチの俺の画風には向いてないデザインだったのだろう。

「まあ、作るの楽しかったし、勉強になったからいいか。
 残ったマグカップはうちで使えばいいよな。
 タロはどれにする?」
「えっと、どれにしようかな。
 この走ってるやつもかわいいし、こっちの細かい模様のも面白いし……」

 売れ残ったマグカップを一つずつ取り出しながらどれを使うか迷っているタロを肴にしながら、俺はビールを飲む。
 これから暑くなるからマグカップの出番はないだろうけど、秋になって涼しくなったらあのマグカップにタロが好きな牛乳多めのカフェオレを作ってやろう。
 俺の絵が入ったマグカップでカフェオレを飲むタロの笑顔を想像すると、何だか飲んでいるビールが美味くなったような気がした。
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