51 / 65
番外編
年越し 4
しおりを挟む
うちに帰って庭の稲荷神社にもお参りすると、俺たちは2階に上がって昼寝をすることにした。
さすがに疲れていたので2人ともすぐに寝てしまう。
目が覚めると、もう夕方になっていた。
お腹が減っていたので、1階に降りて晩ご飯の支度をする。
俺が雑煮の汁を作っている間に、タロが餅を焼き、佐々木さんが置いていってくれたお酒を準備してくれる。
「よし、出来たぞ。
食べようか」
「はい、おせち出しますね」
タロが冷蔵庫からおせちを出し、俺たちはテーブルについた。
2人で「いただきます」と手を合わせた後、タロがおせちの入ったプラスチック容器のフタを開ける。
重箱がないので入れ物はなんだが、中身は伊達巻、黒豆、煮しめなど、定番のおせちがぎっしりと詰まっている。
「おー、すごい。本格的だな。
タロ、がんばったな」
「はい。
でもこれだけ出来たのは吉田のおばあちゃんが教えてくれたからで、僕1人じゃ作れなかったです」
「それでもすごいよ」
タロは年末に神社で仲良くなった吉田さんの家に行って、一緒におせちを作って来たのだ。
吉田さんは1人暮しで、すでに結婚している息子さんも正月は仕事が忙しくて会いに来ないため、もう何年もおせちは作っていなかったそうで、タロと一緒に久しぶりにおせちが作れてよかったと喜んでくれたらしい。
「どれがタロのオススメなんだ?」
「えーっと、全部食べて欲しいですけど、僕は黒豆が一番美味しかったです」
「どれどれ……あ、ほんとうまいな。
ふっくら炊けてて、甘すぎなくて、俺も好きだな」
「よかったです。
ご主人様が作ってくれたお雑煮も美味しいですよ」
「うん、これ、汁も悪くないけど、餅がうまいよな。
奮発して和菓子屋さんの餅買ってよかったな」
そうやって話をしながら楽しく食事を続け、お雑煮を食べ終えたところで日本酒に切り替えた。
酒屋さんオススメというだけあって、すっきりとして料理によく合う美味しい酒だ。
「うん、うまい。
タロも飲むか?
お正月だし」
「そうですね。
それじゃあ、せっかくですから少しだけ」
酒に弱いタロのために小さなおちょこを出して酒を注いでやる。
タロは一口飲むと「おいしいです」と顔をほころばせた。
おせちをつまみながらちびちび飲んでいるうちに、2人ともいい気持ちになって来たので、食器を洗うのは後にして、おせちだけ冷蔵庫にしまってソファに移動した。
お互いにぴったりと寄り添って、テレビのお笑い番組を見ながら笑っていたが、そのうちにタロは犬に戻って眠ってしまった。
「うーん、まあ、昼寝はしたけど、疲れてるところに飲んだらそうなるよなあ」
気持ちよさそうな顔でむにゃむにゃ言っているタロの尻尾が2本になっているのは、完全に酔っぱらっている証拠だ。
本人も弱いのはわかっているので、あまり飲んでいなかったが、疲れていたせいで酔いが回りやすかったのだろう。
俺は寝ているタロにフリースのひざ掛けをかけてやると、立ち上がって静かに食器を洗い、歯を磨いてパジャマに着替えてきた。
今日は俺も少し酔っぱらっているし、風呂は明日でいいだろう。
タロをそっと抱き上げたが、タロは「ふぅん」と鼻を鳴らしただけで目を覚まさなかった。
俺はそのままタロを起こさないように、静かに2階へと上がった。
そんなわけで俺とタロは、慌ただしいけれども、ある意味すごくお正月らしいお正月を過ごしたのだった。
さすがに疲れていたので2人ともすぐに寝てしまう。
目が覚めると、もう夕方になっていた。
お腹が減っていたので、1階に降りて晩ご飯の支度をする。
俺が雑煮の汁を作っている間に、タロが餅を焼き、佐々木さんが置いていってくれたお酒を準備してくれる。
「よし、出来たぞ。
食べようか」
「はい、おせち出しますね」
タロが冷蔵庫からおせちを出し、俺たちはテーブルについた。
2人で「いただきます」と手を合わせた後、タロがおせちの入ったプラスチック容器のフタを開ける。
重箱がないので入れ物はなんだが、中身は伊達巻、黒豆、煮しめなど、定番のおせちがぎっしりと詰まっている。
「おー、すごい。本格的だな。
タロ、がんばったな」
「はい。
でもこれだけ出来たのは吉田のおばあちゃんが教えてくれたからで、僕1人じゃ作れなかったです」
「それでもすごいよ」
タロは年末に神社で仲良くなった吉田さんの家に行って、一緒におせちを作って来たのだ。
吉田さんは1人暮しで、すでに結婚している息子さんも正月は仕事が忙しくて会いに来ないため、もう何年もおせちは作っていなかったそうで、タロと一緒に久しぶりにおせちが作れてよかったと喜んでくれたらしい。
「どれがタロのオススメなんだ?」
「えーっと、全部食べて欲しいですけど、僕は黒豆が一番美味しかったです」
「どれどれ……あ、ほんとうまいな。
ふっくら炊けてて、甘すぎなくて、俺も好きだな」
「よかったです。
ご主人様が作ってくれたお雑煮も美味しいですよ」
「うん、これ、汁も悪くないけど、餅がうまいよな。
奮発して和菓子屋さんの餅買ってよかったな」
そうやって話をしながら楽しく食事を続け、お雑煮を食べ終えたところで日本酒に切り替えた。
酒屋さんオススメというだけあって、すっきりとして料理によく合う美味しい酒だ。
「うん、うまい。
タロも飲むか?
お正月だし」
「そうですね。
それじゃあ、せっかくですから少しだけ」
酒に弱いタロのために小さなおちょこを出して酒を注いでやる。
タロは一口飲むと「おいしいです」と顔をほころばせた。
おせちをつまみながらちびちび飲んでいるうちに、2人ともいい気持ちになって来たので、食器を洗うのは後にして、おせちだけ冷蔵庫にしまってソファに移動した。
お互いにぴったりと寄り添って、テレビのお笑い番組を見ながら笑っていたが、そのうちにタロは犬に戻って眠ってしまった。
「うーん、まあ、昼寝はしたけど、疲れてるところに飲んだらそうなるよなあ」
気持ちよさそうな顔でむにゃむにゃ言っているタロの尻尾が2本になっているのは、完全に酔っぱらっている証拠だ。
本人も弱いのはわかっているので、あまり飲んでいなかったが、疲れていたせいで酔いが回りやすかったのだろう。
俺は寝ているタロにフリースのひざ掛けをかけてやると、立ち上がって静かに食器を洗い、歯を磨いてパジャマに着替えてきた。
今日は俺も少し酔っぱらっているし、風呂は明日でいいだろう。
タロをそっと抱き上げたが、タロは「ふぅん」と鼻を鳴らしただけで目を覚まさなかった。
俺はそのままタロを起こさないように、静かに2階へと上がった。
そんなわけで俺とタロは、慌ただしいけれども、ある意味すごくお正月らしいお正月を過ごしたのだった。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる