俺とタロと小さな家

鳴神楓

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番外編

年越し 2

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0時になって年が明けると太鼓が鳴らされ、宮司さんが拝殿の前で新年のあいさつをした。
境内のあちこちでも、顔見知りの人同士が新年のあいさつを交わしている。
俺もタロにあけましておめでとうを言いたかったが、お互い忙しくてそれどころではないので、後でゆっくり言うことにする。

参拝者にお酒を注いだり追加の料理を運んだりと忙しく働く間にも、商店街の顔見知りの人に会って新年の挨拶をしたり、合間に総代のおじさんが「寒いから体をあっためないと」と言い出してみんなで御神酒を飲んだりして、新年らしさも味わっている。

深夜2時近くになって参拝者も減ってきたころに、総代の役員さんに声をかけられた。

「松下さん、明日の朝も出てくれるんだよね?
 そろそろ暇になって来たし、宮司さんもそろそろ寝る頃だと思うから、松下さんも抜けてもらっていいよ」
「そうですか?
 じゃあ、お先に失礼します」
「うん、ありがとうね」

そうして俺は周りの総代さんたちに挨拶すると、タロと佐々木さんがいる授与所に向かった。
授与所では窓口には総代さんが座っていて、その後ろで佐々木さんとタロが売上金を数えていた。
タロは眠そうに目をしょぼしょぼさせながら小銭を数えたので、俺も手伝う。

「太郎くんも松下さんもありがとうございました。
 それじゃあ、寝ましょうか」
「はい、よろしくお願いします」

今夜は社務所と繋がっている佐々木さんの自宅で仮眠させてもらうことになっていたので、俺とタロは売上金を持った佐々木さんの後ろをついていく。

「そちらの客間に布団を敷いておきましたから。
 トイレと洗面所はそちらです。
 それではおやすみなさい」
「はい、ありがとうございます。
 おやすみなさい」
「おやすみなさいー」

眠たくて挨拶が舌ったらずになっているタロに持ってきた歯ブラシで歯を磨かせ、トイレを済ませて客間に入る。
敷いてある布団が1組だけだったのはちょっとアレだが、まあ佐々木さんは俺たちのことをよくわかっているから今更だろう。

「ほら、タロ、もう寝るぞ」
「はいー」

2人で一緒に布団に入ると、タロがくんくんと鼻を鳴らした。

「ご主人様、お酒の匂いがします」
「ああ、さっき外で寒かったから、ついつい飲んじゃって。
 酒くさいよな、ごめん」
「ううん、いいです。
 ご主人様、いつもよりあったかいし」

そう言いながら、タロは俺の胸に顔をこすりつけて来たので、抱きしめて頭を撫でてやる。

「さ、明日も早いし寝るぞ。
 おやすみ」
「おやすみなさいー」

返事をしてすぐに、タロは犬の姿に戻って寝息を立て始めた。
酔っ払ってても、やっぱり犬になるとタロの方があったかいなと思いながら、俺もすぐに寝てしまった。

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