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翌朝の朝食の席で、これからは佳暁様のおっしゃる通りの関係でやっていきたいと言うと、佳暁様は微笑んで「ありがとう」とおっしゃってくれた。
「今夜から大丈夫?」
「はい」
「じゃあ夜お風呂入る前に、準備の仕方教えるね」
「はい、お願いします」
そうか、準備があるんだった……。
想像するとちょっと気が重くはあったが、佳暁様も毎日していらっしゃることだから仕方がない。
とりあえず昼間のうちは、準備のこともその後のことも考えないようにして仕事に専念し、夜、夕食の片付けと明日の朝食の仕込みを終えてから、私室で一人で待っていらっしゃる佳暁様の元に向かった。
佳暁様はオレに準備のやり方を教えて下さると、その後、昨日聡にどんなことをされたのかと聞いてきた。
佳暁様に隠すようなことでもないかと簡単に説明しようとしたのだが、佳暁様は詳しいことが聞きたかったのか、オレが省略したところに質問を挟んできたので、結果的にかなり詳しく説明するはめになってしまって恥ずかしい思いをするはめになった。
「じゃあ、結局最後まではしなかったんだね?」
「はい。
……あの、オレちょっとひどかったですかね?」
昨夜聡は佳暁様も抱いてなかったのに、オレばっかりが気持ちよくしてもらって悪かったかなと思っていたので聞いてみると、佳暁様はくすっと笑った。
「いや、聡がお前にしたことを思えば、それくらい全然ひどくないよ。
実は一昨日お前がいなかった時も、聡には罰として入れさせなかったんだよね。
昨日素股しちゃったんならあれだけど、せっかくだしこのまま一週間くらいは禁欲しててもらおうかな」
「そ、そこまでしなくても……」
「そうかな?
何も別に自慰まで禁止するわけじゃないし、そんなにひどい罰でもないと思うけど」
そんなことを言う佳暁様は、楽しそうなくせに、やっぱりちょっと不安そうだ。
ああ、また佳暁様の悪いくせが出たなと思うと、オレはもう何も言えなかった。
「えーっと、それじゃあ準備してきますね」
「うん。
あ、慣れるまではお前が二階の浴室を使っていいよ。
最初はちょっと大変だと思うしね」
「はい、ありがとうございます」
やっぱり大変なんだ……と、また気が重くなりつつ、オレは佳暁様から必要な道具を受け取ると二階の浴室に向かった。
佳暁様がおっしゃった通り、自分の体の準備をするのは結構大変だった。
若干ふらふらしながら佳暁様の寝室に向かうと、佳暁様は慣れているだけあって先に一階での入浴を終えベッドに座っていた。
二人で話をしているうちに聡と護もやってきたので、いつものように四人で服を脱いでベッドに上がった。
「あ、そうだ。
聡は罰として一週間は入れちゃだめだからね。
今まで三日は禁欲してたから、あと四日ね」
佳暁様がそう言うと、聡は神妙な顔で「はい」とうなずいた。
そう言えば、聡が挿入できないということは、代わりに今日は護がオレに入れるんだろうか。
それはまだなんとなく不安だし、今日も佳暁様が入れてくれるといいな、などと考えていると、佳暁様が「それと健太」と言い出した。
考え事をして気がそれていたせいで、思わず「はいっ!」と大きすぎる返事をすると、佳暁様はちょっと笑った。
「あのね、あんなことがあったせいで、お前はいきなりアナルセックスしてしまったけれど、本当はペニスを入れる前にアナルを拡張した方がいいんだ」
「拡張……ですか?」
「うん、そう。
本当は一ヶ月くらいかけて徐々に広げていった方が危険も少ないし、そのままするより拡張してからの方がずっと気持ちいいんだよね。
だから今更かもしれないけど、健太にもこれを使って拡張してもらおうかと思って」
そう言うと佳暁様はよく利用している通販の段ボールを出してきた。
あ、あれ、今日の夕方、当日配達便で届いたやつだ……。
どうやら佳暁様は朝オレの返事を聞いてすぐその道具を注文してくれたらしい。
すでに開封済みのその段ボールから出てきたのは、スペード型を立体にしたような少しずつ大きさが違う五つのシリコン製の道具で、アナルプラグというのだと佳暁様が教えてくれた。
「これをセックスの時や寝る時、普段生活してる時につけて、一番小さいものから少しずつ大きくしていくんだ。
健太は最初から痛みはなかったようだし、一ヶ月はかけなくてもいいかもしれないね。
どう? やってくれる?」
オレが入れたことのあるものに比べたらずっと小さい道具ではあるけれども、セックスの時だけならまだしも、これを寝る時や普段にも入れるのかと思うとめまいがしそうだ。
けれども佳暁様はご自身も経験したかのような口ぶりで話しておられて、佳暁様も過去に同じように拡張した――いや、おそらくは『させられた』のだと想像出来てしまって、それに気付いたオレは迷うことなくうなずいていた。
「ありがとう。
それじゃ、とにかくやってみようか。
もし途中で嫌だと思ったら、我慢しないで言うんだよ。
健太には嫌な思いをさせたくないからね」
佳暁様の言葉にまた、佳暁様が受けた過去の傷がちらりとかいまみえる。
こんなことを考えるのはおこがましいかもしれないけれど、もしかしたら、オレの体がもっと気持ちよくなれるように変わることは、佳暁様の過去の傷を癒やす助けにもなるのかもしれない。
そう思うと、オレは自然に、がんばって拡張してもっと感じられる体になりたいと思うようになっていた。
「じゃあ、入れてみようか」
そう言って佳暁様は一番小さいアナルプラグを手に取った。
うながされるままに佳暁様に背中を向けると、佳暁様はオレの後孔を少しほぐしてから、アナルプラグを入れてくれた。
準備をしたばかりで中はある程度広がっているので、小さいアナルプラグはあっけなく入ってしまった。
「どう?」
「うーん?
入ってるのはわかるんですけど、とくに感じるとかはない気が……」
入っているといっても入り口を押し広げているだけで動いたりするわけでもないので、違和感はあるものの、性的な快感からはほど遠い。
アダルトグッズを自分の体の中に入れるというので、どんなことになってしまうのかと緊張していたのに、正直拍子抜けだ。
「まあ一番小さいのだし、そもそも感じさせることが目的の道具じゃないしね。
全然感じないようなら明日はもう一つ大きいのにしてもいいから、とりあえず今日はこのままやってみようか」
「はい」
オレが佳暁様の言葉にうなずくと、佳暁様はオレにキスをしてくれた。
そのまま口づけを深くしていきながら、抱き合って互いに体をこすりつけあう。
「……んっ!」
佳暁様の肌の感触とキスに夢中になっていると、ふいに背筋をすうっと撫で上げられ、思わず声をあげてしまう。
反射的に目を開けると、いつの間にか佳暁様のすぐ後ろに護がいた。
だったら今自分の後ろにいるのは聡だ、と気付いたとたん、なぜだか急に鼓動が早くなる。
ちゅ、と軽く音を立ててから、佳暁様の唇が離れていった。
「見せて。
健太が感じているところ」
ささやきと共に、佳暁様がオレの肩を軽く押した。
バランスを崩して体が後ろに倒れると、それを待っていたかのように、聡がオレの体を抱きとめる。
オレから少し体を離した佳暁様の方は、いつの間にか護がしっかりと後ろから抱きしめている。
佳暁様とオレは、さっきまで抱き合ってキスしていたから、足は絡め合ったままだし、上半身も少し前に倒せば触れあうほどに近い距離だ。
互いの体温を感じられるような距離なのに、それぞれ後ろから別々の男に抱きしめられているのは、何だか不思議な気分だ。
「あっ……」
ふいに後ろから耳をなめられて、オレは思わず声をあげる。
感じてしまったその表情を、すぐ目の前の佳暁様に見られていることに気付き、羞恥に顔が赤くなるのがわかる。
護の指が、佳暁様の胸へと移動する。
それと同時に、聡の指もオレの乳首に触れる。
まるで打ち合わせでもしたかのように、聡と護は、オレと佳暁様の乳首をつまんで同じように刺激し始める。
目の前の佳暁様が護に乳首を触られていくうちに、顔が紅潮し、息があがり、微かなあえぎ声すらもれ始めて、徐々に感じていっているのが手に取るようにわかる。
同じようにオレも、聡に触られて感じているところを佳暁様と護に見られているのだと思うと、恥ずかしくて、そして恥ずかしいくせに見られることでよけいに感じてしまっているような気もして、なんだか気が変になりそうだ。
「失礼します」
護が佳暁様に声をかけると、乳首から手を離して、佳暁様を横向きに寝かせた。
「お前も」
そう後ろの聡に言われ、オレも同じように佳暁様と向かい合わせに寝かされる。
護は自分は座ったままで、佳暁様の下半身の前と後ろを同時に触りだした。
聡の方はというと、こちらはオレと同じように横になって、オレの首の下になった腕で軽くオレを抱きしめたまま、空いた方の手でオレの前だけを触っている。
さっきまで聡も護と同じようにしていたのに、オレが抱きしめられるが好きだと知っているからってこんなふうにするのはずるい。
けれどずるいと思うのに、後ろから抱きしめられているのがやっぱり気持ちよくて、そしてその気持ちよさは今は性的な快感に直結する。
もしかして目の前の佳暁様には、オレがこんなふうに抱きしめられるのが好きだということまで伝わってしまうのだろうか。
そう考えるといたたまれないけれど、それでも聡にやめろと言う気にはなれない。
佳暁様は前と後ろを一緒に触られて、乳首を触られていた時とは比べものにならないくらい感じている。
そうなってみて始めて、オレは自分の後ろに入れられたものを急に意識し始める。
小さな道具はオレの中を押し広げているだけで、目の前の佳暁様の中にある護の指のようにオレの中のいいところをこすってくれたりはしない。
少し前まで知らなかったけど、今は中をこすられる気持ちよさを知ってしまったせいで、自分の中に動くことのない冷たい道具しか入ってないことがもどかしい。
こんなことを考えるのはおかしいと思うけれども、目の前の佳暁様がうらやましくてしかたがない。
気付くとオレの後ろの狭間に、固くなった聡のものが押しつけられている。
聡がこんなふうになるのも当然だろう。
目の前で感じている佳暁様は、すごく色っぽくて綺麗なのだ。
――いや、それとももしかして、聡が感じているのはオレのことを触って、オレが感じているのを見ているせいもあるのだろうか?
そんなことを考えてしまったせいなのか、オレは今すぐに自分に押しつけられている聡の太いものを、オレの中に入れて欲しくなってしまう。
けど、駄目なのだ。
オレは佳暁様に自分の中をこの道具で拡張するように言われ、それを了承してしまったのだから、今日はまだ聡のものを受け入れることが出来ない。
佳暁様の言葉に逆らってまで聡のものを入れてほしいとは決して思わないけれど、それでも入れられないとなると欲しくてたまらなくなる。
中のことを強く意識したせいなのだろうか。
聡の手で触られている前だけでなく、何だか後ろも感じているような気がしてきた。
ただ中を押し広げられているだけではなく、何となくだけど、自分の中がうごめいて小さな道具を締め付けているような感触がある。
もしかしたら佳暁様に入れた時に佳暁様がオレのものを締め付けるような、そんな反応が起こっているのだろうか。
もしそうなら、この体が佳暁様が望むような中で感じられる体になりつつあるのかもしれないと思うと嬉しくなってくる。
前を触られ、少しだけど中でも感じて、もうイキそうになってくる。
けれどもあと少しでイケるというところで、聡は急にオレのものをこするのをやめ、逆に根元をきゅっと握ってしまった。
「えっ……」
「イクなら佳暁様と一緒の方がいいだろ?」
「あっ……、う、うん……」
そもそも佳暁様にオレの姿を見てもらうために、こうして聡に触ってもらっているのに、いつの間か自分の快感を追うことに夢中になってしまっていたことが恥ずかしくて、オレは赤くなりながらうなずく。
佳暁様がそんなオレをほほえましいと思っているかのような優しい顔で見ているのが、また恥ずかしい。
オレが我慢出来なくなったから、というわけでもないだろうが、護が佳暁様から手を離し、挿入するための準備を始めた。
佳暁様の後ろに沿う形で横になった護が挿入する直前、佳暁様がオレの方に手を伸ばして来たので、その手をそっと握る。
「んんっ……」
護の太いものを受け入れている佳暁様の手に力が入る。
その手を通して、まるで自分も入れられているかのような錯覚におちいる。
護は横向きの体勢のせいで少し動きにくそうだったが、それでもさすがというべきか、十分に佳暁様を感じさせているようだ。
感じている佳暁様を見て、そしてまた再び聡に自分のものをこすられて、オレはまたイキそうになってくる。
ちょうど佳暁様が達するタイミングにあわせて、聡はオレのことをイカせてくれた。
後ろに入っている道具が物足りなくはあったけれども、佳暁様と一緒にイケたおかげもあって十分に気持ちよかった。
佳暁様が出したものがオレにかかったのと同じように、オレが出したものも佳暁様にかかってしまったことに気付いて、オレは快感の余韻に浸るのも忘れて、慌てて手で佳暁様のお腹を拭う。
オレが一人で慌てていると、聡が笑いながらティッシュを差し出してくれた。
気付くと佳暁様も、そして珍しいことに護までもが笑っている。
そうなるとオレの方まで何だかおかしくなってきて、いつの間にかオレたち四人全員で笑い出していた。
「今夜から大丈夫?」
「はい」
「じゃあ夜お風呂入る前に、準備の仕方教えるね」
「はい、お願いします」
そうか、準備があるんだった……。
想像するとちょっと気が重くはあったが、佳暁様も毎日していらっしゃることだから仕方がない。
とりあえず昼間のうちは、準備のこともその後のことも考えないようにして仕事に専念し、夜、夕食の片付けと明日の朝食の仕込みを終えてから、私室で一人で待っていらっしゃる佳暁様の元に向かった。
佳暁様はオレに準備のやり方を教えて下さると、その後、昨日聡にどんなことをされたのかと聞いてきた。
佳暁様に隠すようなことでもないかと簡単に説明しようとしたのだが、佳暁様は詳しいことが聞きたかったのか、オレが省略したところに質問を挟んできたので、結果的にかなり詳しく説明するはめになってしまって恥ずかしい思いをするはめになった。
「じゃあ、結局最後まではしなかったんだね?」
「はい。
……あの、オレちょっとひどかったですかね?」
昨夜聡は佳暁様も抱いてなかったのに、オレばっかりが気持ちよくしてもらって悪かったかなと思っていたので聞いてみると、佳暁様はくすっと笑った。
「いや、聡がお前にしたことを思えば、それくらい全然ひどくないよ。
実は一昨日お前がいなかった時も、聡には罰として入れさせなかったんだよね。
昨日素股しちゃったんならあれだけど、せっかくだしこのまま一週間くらいは禁欲しててもらおうかな」
「そ、そこまでしなくても……」
「そうかな?
何も別に自慰まで禁止するわけじゃないし、そんなにひどい罰でもないと思うけど」
そんなことを言う佳暁様は、楽しそうなくせに、やっぱりちょっと不安そうだ。
ああ、また佳暁様の悪いくせが出たなと思うと、オレはもう何も言えなかった。
「えーっと、それじゃあ準備してきますね」
「うん。
あ、慣れるまではお前が二階の浴室を使っていいよ。
最初はちょっと大変だと思うしね」
「はい、ありがとうございます」
やっぱり大変なんだ……と、また気が重くなりつつ、オレは佳暁様から必要な道具を受け取ると二階の浴室に向かった。
佳暁様がおっしゃった通り、自分の体の準備をするのは結構大変だった。
若干ふらふらしながら佳暁様の寝室に向かうと、佳暁様は慣れているだけあって先に一階での入浴を終えベッドに座っていた。
二人で話をしているうちに聡と護もやってきたので、いつものように四人で服を脱いでベッドに上がった。
「あ、そうだ。
聡は罰として一週間は入れちゃだめだからね。
今まで三日は禁欲してたから、あと四日ね」
佳暁様がそう言うと、聡は神妙な顔で「はい」とうなずいた。
そう言えば、聡が挿入できないということは、代わりに今日は護がオレに入れるんだろうか。
それはまだなんとなく不安だし、今日も佳暁様が入れてくれるといいな、などと考えていると、佳暁様が「それと健太」と言い出した。
考え事をして気がそれていたせいで、思わず「はいっ!」と大きすぎる返事をすると、佳暁様はちょっと笑った。
「あのね、あんなことがあったせいで、お前はいきなりアナルセックスしてしまったけれど、本当はペニスを入れる前にアナルを拡張した方がいいんだ」
「拡張……ですか?」
「うん、そう。
本当は一ヶ月くらいかけて徐々に広げていった方が危険も少ないし、そのままするより拡張してからの方がずっと気持ちいいんだよね。
だから今更かもしれないけど、健太にもこれを使って拡張してもらおうかと思って」
そう言うと佳暁様はよく利用している通販の段ボールを出してきた。
あ、あれ、今日の夕方、当日配達便で届いたやつだ……。
どうやら佳暁様は朝オレの返事を聞いてすぐその道具を注文してくれたらしい。
すでに開封済みのその段ボールから出てきたのは、スペード型を立体にしたような少しずつ大きさが違う五つのシリコン製の道具で、アナルプラグというのだと佳暁様が教えてくれた。
「これをセックスの時や寝る時、普段生活してる時につけて、一番小さいものから少しずつ大きくしていくんだ。
健太は最初から痛みはなかったようだし、一ヶ月はかけなくてもいいかもしれないね。
どう? やってくれる?」
オレが入れたことのあるものに比べたらずっと小さい道具ではあるけれども、セックスの時だけならまだしも、これを寝る時や普段にも入れるのかと思うとめまいがしそうだ。
けれども佳暁様はご自身も経験したかのような口ぶりで話しておられて、佳暁様も過去に同じように拡張した――いや、おそらくは『させられた』のだと想像出来てしまって、それに気付いたオレは迷うことなくうなずいていた。
「ありがとう。
それじゃ、とにかくやってみようか。
もし途中で嫌だと思ったら、我慢しないで言うんだよ。
健太には嫌な思いをさせたくないからね」
佳暁様の言葉にまた、佳暁様が受けた過去の傷がちらりとかいまみえる。
こんなことを考えるのはおこがましいかもしれないけれど、もしかしたら、オレの体がもっと気持ちよくなれるように変わることは、佳暁様の過去の傷を癒やす助けにもなるのかもしれない。
そう思うと、オレは自然に、がんばって拡張してもっと感じられる体になりたいと思うようになっていた。
「じゃあ、入れてみようか」
そう言って佳暁様は一番小さいアナルプラグを手に取った。
うながされるままに佳暁様に背中を向けると、佳暁様はオレの後孔を少しほぐしてから、アナルプラグを入れてくれた。
準備をしたばかりで中はある程度広がっているので、小さいアナルプラグはあっけなく入ってしまった。
「どう?」
「うーん?
入ってるのはわかるんですけど、とくに感じるとかはない気が……」
入っているといっても入り口を押し広げているだけで動いたりするわけでもないので、違和感はあるものの、性的な快感からはほど遠い。
アダルトグッズを自分の体の中に入れるというので、どんなことになってしまうのかと緊張していたのに、正直拍子抜けだ。
「まあ一番小さいのだし、そもそも感じさせることが目的の道具じゃないしね。
全然感じないようなら明日はもう一つ大きいのにしてもいいから、とりあえず今日はこのままやってみようか」
「はい」
オレが佳暁様の言葉にうなずくと、佳暁様はオレにキスをしてくれた。
そのまま口づけを深くしていきながら、抱き合って互いに体をこすりつけあう。
「……んっ!」
佳暁様の肌の感触とキスに夢中になっていると、ふいに背筋をすうっと撫で上げられ、思わず声をあげてしまう。
反射的に目を開けると、いつの間にか佳暁様のすぐ後ろに護がいた。
だったら今自分の後ろにいるのは聡だ、と気付いたとたん、なぜだか急に鼓動が早くなる。
ちゅ、と軽く音を立ててから、佳暁様の唇が離れていった。
「見せて。
健太が感じているところ」
ささやきと共に、佳暁様がオレの肩を軽く押した。
バランスを崩して体が後ろに倒れると、それを待っていたかのように、聡がオレの体を抱きとめる。
オレから少し体を離した佳暁様の方は、いつの間にか護がしっかりと後ろから抱きしめている。
佳暁様とオレは、さっきまで抱き合ってキスしていたから、足は絡め合ったままだし、上半身も少し前に倒せば触れあうほどに近い距離だ。
互いの体温を感じられるような距離なのに、それぞれ後ろから別々の男に抱きしめられているのは、何だか不思議な気分だ。
「あっ……」
ふいに後ろから耳をなめられて、オレは思わず声をあげる。
感じてしまったその表情を、すぐ目の前の佳暁様に見られていることに気付き、羞恥に顔が赤くなるのがわかる。
護の指が、佳暁様の胸へと移動する。
それと同時に、聡の指もオレの乳首に触れる。
まるで打ち合わせでもしたかのように、聡と護は、オレと佳暁様の乳首をつまんで同じように刺激し始める。
目の前の佳暁様が護に乳首を触られていくうちに、顔が紅潮し、息があがり、微かなあえぎ声すらもれ始めて、徐々に感じていっているのが手に取るようにわかる。
同じようにオレも、聡に触られて感じているところを佳暁様と護に見られているのだと思うと、恥ずかしくて、そして恥ずかしいくせに見られることでよけいに感じてしまっているような気もして、なんだか気が変になりそうだ。
「失礼します」
護が佳暁様に声をかけると、乳首から手を離して、佳暁様を横向きに寝かせた。
「お前も」
そう後ろの聡に言われ、オレも同じように佳暁様と向かい合わせに寝かされる。
護は自分は座ったままで、佳暁様の下半身の前と後ろを同時に触りだした。
聡の方はというと、こちらはオレと同じように横になって、オレの首の下になった腕で軽くオレを抱きしめたまま、空いた方の手でオレの前だけを触っている。
さっきまで聡も護と同じようにしていたのに、オレが抱きしめられるが好きだと知っているからってこんなふうにするのはずるい。
けれどずるいと思うのに、後ろから抱きしめられているのがやっぱり気持ちよくて、そしてその気持ちよさは今は性的な快感に直結する。
もしかして目の前の佳暁様には、オレがこんなふうに抱きしめられるのが好きだということまで伝わってしまうのだろうか。
そう考えるといたたまれないけれど、それでも聡にやめろと言う気にはなれない。
佳暁様は前と後ろを一緒に触られて、乳首を触られていた時とは比べものにならないくらい感じている。
そうなってみて始めて、オレは自分の後ろに入れられたものを急に意識し始める。
小さな道具はオレの中を押し広げているだけで、目の前の佳暁様の中にある護の指のようにオレの中のいいところをこすってくれたりはしない。
少し前まで知らなかったけど、今は中をこすられる気持ちよさを知ってしまったせいで、自分の中に動くことのない冷たい道具しか入ってないことがもどかしい。
こんなことを考えるのはおかしいと思うけれども、目の前の佳暁様がうらやましくてしかたがない。
気付くとオレの後ろの狭間に、固くなった聡のものが押しつけられている。
聡がこんなふうになるのも当然だろう。
目の前で感じている佳暁様は、すごく色っぽくて綺麗なのだ。
――いや、それとももしかして、聡が感じているのはオレのことを触って、オレが感じているのを見ているせいもあるのだろうか?
そんなことを考えてしまったせいなのか、オレは今すぐに自分に押しつけられている聡の太いものを、オレの中に入れて欲しくなってしまう。
けど、駄目なのだ。
オレは佳暁様に自分の中をこの道具で拡張するように言われ、それを了承してしまったのだから、今日はまだ聡のものを受け入れることが出来ない。
佳暁様の言葉に逆らってまで聡のものを入れてほしいとは決して思わないけれど、それでも入れられないとなると欲しくてたまらなくなる。
中のことを強く意識したせいなのだろうか。
聡の手で触られている前だけでなく、何だか後ろも感じているような気がしてきた。
ただ中を押し広げられているだけではなく、何となくだけど、自分の中がうごめいて小さな道具を締め付けているような感触がある。
もしかしたら佳暁様に入れた時に佳暁様がオレのものを締め付けるような、そんな反応が起こっているのだろうか。
もしそうなら、この体が佳暁様が望むような中で感じられる体になりつつあるのかもしれないと思うと嬉しくなってくる。
前を触られ、少しだけど中でも感じて、もうイキそうになってくる。
けれどもあと少しでイケるというところで、聡は急にオレのものをこするのをやめ、逆に根元をきゅっと握ってしまった。
「えっ……」
「イクなら佳暁様と一緒の方がいいだろ?」
「あっ……、う、うん……」
そもそも佳暁様にオレの姿を見てもらうために、こうして聡に触ってもらっているのに、いつの間か自分の快感を追うことに夢中になってしまっていたことが恥ずかしくて、オレは赤くなりながらうなずく。
佳暁様がそんなオレをほほえましいと思っているかのような優しい顔で見ているのが、また恥ずかしい。
オレが我慢出来なくなったから、というわけでもないだろうが、護が佳暁様から手を離し、挿入するための準備を始めた。
佳暁様の後ろに沿う形で横になった護が挿入する直前、佳暁様がオレの方に手を伸ばして来たので、その手をそっと握る。
「んんっ……」
護の太いものを受け入れている佳暁様の手に力が入る。
その手を通して、まるで自分も入れられているかのような錯覚におちいる。
護は横向きの体勢のせいで少し動きにくそうだったが、それでもさすがというべきか、十分に佳暁様を感じさせているようだ。
感じている佳暁様を見て、そしてまた再び聡に自分のものをこすられて、オレはまたイキそうになってくる。
ちょうど佳暁様が達するタイミングにあわせて、聡はオレのことをイカせてくれた。
後ろに入っている道具が物足りなくはあったけれども、佳暁様と一緒にイケたおかげもあって十分に気持ちよかった。
佳暁様が出したものがオレにかかったのと同じように、オレが出したものも佳暁様にかかってしまったことに気付いて、オレは快感の余韻に浸るのも忘れて、慌てて手で佳暁様のお腹を拭う。
オレが一人で慌てていると、聡が笑いながらティッシュを差し出してくれた。
気付くと佳暁様も、そして珍しいことに護までもが笑っている。
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