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プロローグ
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「二人とも佳暁様のことが好きなんでしょ?
それにたぶん、佳暁様の方も二人のことが好きだよね。
なのにどうして二人とも佳暁様に好きだって言ってあげないの?」
まだ詳しい事情を知らなかったオレがそう言った時、聡も護も困った顔になったことを覚えている。
「色々と事情があるんだよ。
それに佳暁様だって、今更俺たち二人のうち、どちらかを選べと言われても困るだろう」
そう答えた聡に僕が首を傾げながら返した言葉も、今思えば何も知らないガキだったからこそ言えた言葉だとわかる。(今でも二人に比べたらオレがガキであることには変わりないのだが)
「別に、どちらかを選んでもらわなくても、二人両方と付き合ってもらえばいいんじゃないの?
普通だったら二人いっぺんに付き合うのはおかしいかもしれないけど、今だって佳暁様は何人もの好きでもない男の人たちと寝てるような状態でしょ?
それよりは、二人で一日交替とかでも、自分のことを本当に好きでいてくれて、自分の好きな人と寝る……っていうか愛し合える方が、ずっと嬉しいんじゃないかな。
少なくとも、オレだったらそうだと思う」
オレがそう言うと、二人はそんなこと考えてもみなかったというように驚いた顔になって、互いに顔を見合せていたが、やがてどちらからともなく笑いだした。
それは二人とも、まるで何か吹っ切れたかのような晴れ晴れとした笑顔だった。
「そうだな、それなら三人揃って佳暁様に告白しに行くか」
「え? 三人?」
ひとしきり笑ってからそう言い出した聡の言葉にオレが首を傾げると、聡は大きくうなずいた。
「そうだ、お前も入れて三人でだ。
お前も佳暁様のことが好きだろう?」
「えっ!
そ、それは……その……好きだけど……。
で、でも! オレは二人みたいにずっと長い間佳暁様のことが好きだったわけじゃないし、それに……どっ、童貞だから、その、佳暁様のこと、満足させられないと思うし……」
オレがうじうじと言い訳してためらっていると、それまで黙っていた護が口を開いた。
「長さが問題なら、この中で佳暁様に告白できるのは聡だけということになるな。
だが俺は想いの長さだけで、こいつに佳暁様を譲るつもりは毛頭無い。
だからお前も、佳暁様と出会ってから短いからと言って遠慮することはない」
「護の言う通りだ。
それに佳暁様を満足させられるかどうか決めるのは、お前でも俺たちでもなく、実際に抱かれる佳暁様だけが判断できることじゃないのか?
やったこともないのに満足させられないと決めつけるのは早すぎるだろう」
護だけでなく聡にもそう言われても、その時のオレはまだ迷っていた。
そうすると聡がふいに、オレの手をつかんだ。
「言い出しっぺが逃げるのはずるいぞ。
だいたい、三人がかりで告白しても、誰一人佳暁様に選んでいただけない可能性だってあるんだ。
どうせ当たって砕けるなら、お前も巻き込んでやる」
そうして聡に引っ張られていったオレを含めた三人が佳暁様に告白した結果が、今のオレたち四人の関係だ。
その時のオレは仮に三人ともが佳暁様に想いを受け入れてもらうことが出来ても、佳暁様を抱くのは交替で一人ずつだと思い込んでいた。
しかし今にして思えば、聡と護の頭の中にはこのとき既に、佳暁様のことを三人がかりで同時に愛するというイメージがあったのではないかと思う。
ただでさえ男同士なのに、そのうえ四人で一緒にセックスしているというのは、きっと世間的に見れば不自然で不道徳な関係なのだろう。
けれどもオレたち三人が、それに誰よりも佳暁様ご自身がそういう状態に満足しているのだから、オレたちにとってはこの状態が一番自然な形なのだ。
だからオレたちは、今もこうしてこの大きなお屋敷で、四人での幸せな関係を続けている。
そしてこれからもずっと、この四人での関係は続いていくと、オレはそう思っていたのだけれど。
それにたぶん、佳暁様の方も二人のことが好きだよね。
なのにどうして二人とも佳暁様に好きだって言ってあげないの?」
まだ詳しい事情を知らなかったオレがそう言った時、聡も護も困った顔になったことを覚えている。
「色々と事情があるんだよ。
それに佳暁様だって、今更俺たち二人のうち、どちらかを選べと言われても困るだろう」
そう答えた聡に僕が首を傾げながら返した言葉も、今思えば何も知らないガキだったからこそ言えた言葉だとわかる。(今でも二人に比べたらオレがガキであることには変わりないのだが)
「別に、どちらかを選んでもらわなくても、二人両方と付き合ってもらえばいいんじゃないの?
普通だったら二人いっぺんに付き合うのはおかしいかもしれないけど、今だって佳暁様は何人もの好きでもない男の人たちと寝てるような状態でしょ?
それよりは、二人で一日交替とかでも、自分のことを本当に好きでいてくれて、自分の好きな人と寝る……っていうか愛し合える方が、ずっと嬉しいんじゃないかな。
少なくとも、オレだったらそうだと思う」
オレがそう言うと、二人はそんなこと考えてもみなかったというように驚いた顔になって、互いに顔を見合せていたが、やがてどちらからともなく笑いだした。
それは二人とも、まるで何か吹っ切れたかのような晴れ晴れとした笑顔だった。
「そうだな、それなら三人揃って佳暁様に告白しに行くか」
「え? 三人?」
ひとしきり笑ってからそう言い出した聡の言葉にオレが首を傾げると、聡は大きくうなずいた。
「そうだ、お前も入れて三人でだ。
お前も佳暁様のことが好きだろう?」
「えっ!
そ、それは……その……好きだけど……。
で、でも! オレは二人みたいにずっと長い間佳暁様のことが好きだったわけじゃないし、それに……どっ、童貞だから、その、佳暁様のこと、満足させられないと思うし……」
オレがうじうじと言い訳してためらっていると、それまで黙っていた護が口を開いた。
「長さが問題なら、この中で佳暁様に告白できるのは聡だけということになるな。
だが俺は想いの長さだけで、こいつに佳暁様を譲るつもりは毛頭無い。
だからお前も、佳暁様と出会ってから短いからと言って遠慮することはない」
「護の言う通りだ。
それに佳暁様を満足させられるかどうか決めるのは、お前でも俺たちでもなく、実際に抱かれる佳暁様だけが判断できることじゃないのか?
やったこともないのに満足させられないと決めつけるのは早すぎるだろう」
護だけでなく聡にもそう言われても、その時のオレはまだ迷っていた。
そうすると聡がふいに、オレの手をつかんだ。
「言い出しっぺが逃げるのはずるいぞ。
だいたい、三人がかりで告白しても、誰一人佳暁様に選んでいただけない可能性だってあるんだ。
どうせ当たって砕けるなら、お前も巻き込んでやる」
そうして聡に引っ張られていったオレを含めた三人が佳暁様に告白した結果が、今のオレたち四人の関係だ。
その時のオレは仮に三人ともが佳暁様に想いを受け入れてもらうことが出来ても、佳暁様を抱くのは交替で一人ずつだと思い込んでいた。
しかし今にして思えば、聡と護の頭の中にはこのとき既に、佳暁様のことを三人がかりで同時に愛するというイメージがあったのではないかと思う。
ただでさえ男同士なのに、そのうえ四人で一緒にセックスしているというのは、きっと世間的に見れば不自然で不道徳な関係なのだろう。
けれどもオレたち三人が、それに誰よりも佳暁様ご自身がそういう状態に満足しているのだから、オレたちにとってはこの状態が一番自然な形なのだ。
だからオレたちは、今もこうしてこの大きなお屋敷で、四人での幸せな関係を続けている。
そしてこれからもずっと、この四人での関係は続いていくと、オレはそう思っていたのだけれど。
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