バスと痴漢とガムテープ

鳴神楓

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目には目を☆

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 橋場の話を聞いて、こいつが俺に痴漢した理由は一応理解できた。
 同じ男としては、好きなやつがすぐ側で無防備に寝ていたら手を出したくなる気持ちもわからないでもなかったから、あまり怒る気にもなれなかったし、まだ大学生の橋場に何か償いをさせたいとも思っていない。
 それでもやはり痴漢は犯罪だし、無罪放免というのもこいつの教育上よくない気がする。

 まあ、ちょっとこらしめておけばいいかな。

 心のなかでそう結論を出した俺は、橋場に話しかける。

「まあ、そこまでしてもらう必要はないけど、相応の罰は受けてもらうぞ」
「はい、覚悟してます」
「じゃあ、目には目を歯には歯をってことで」

 そう言いながら俺が橋場の隣に座り直し、橋場のズボンのファスナーを下ろすと、橋場は慌て始めた。

「な、中村さん、何して……」
「俺がお前にしたのと同じことしてやるんだよ。
 他人に急所握られて反抗も出来ずに好き勝手されるのが、どれだけ怖くて嫌なことか、お前もよく味わって反省しろ」

 俺はあの時バスの車内という状況のせいで反抗できなかったのだが、今の橋場も手首をガムテープで拘束されているから反抗できないという点では同じだ。
 こいつもあの時の俺と同じ気分を味わって、ちょっとは反省すればいい。

「えっ、あの、そんな」

 うろたえている橋場には構わずに開けたファスナーから手を入れて下着の中からナニを取り出す。
 自分のモノとは少し形は違うものの似たようなサイズのソレは、取り出してみるとどういうわけか少し芯を持っていた。

「え、なんで固くしてんの?」
「だ、だって、中村さんにこんなことされたら僕……」
「あー、そうか。
 俺のこと、好きなんだっけ……」

 別にそのことを忘れていたわけじゃないのだが、それでも俺はいまいち実感できていなかったのだと思う。
 こうして橋場が俺のすることに期待してナニを反応させているのを見て、俺は何とも言えない気分になる。

「しかし、これじゃあ罰じゃなくてご褒美だよなあ」
「すみません……」

 橋場は体を小さくしているが、股間のモノはさっきよりも大きくなっている。

「まあ、いいか。
 急所握ってることに変わりはないんだし、何とでもやりようはあるだろ」

 とにかく橋場が俺にやったのと同じことをしてみようと、俺は橋場の股間のモノを右手で握る。

 すでに固くなりかけていたソレは、俺が握ると完全な勃起状態になった。

「くぅっ……」

 筒状にした手を軽く上下させただけで、橋場は切なげな声をあげる。
 自分の経験上感じるとわかっている裏筋や先っぽなどを刺激すれば、橋場のモノは面白いくらいに反応する。

 ちらりと橋場の顔を見ると、快感のせいで頬を赤くしながらも、俺に罰だと言われた手前、快感に流されてはまずいと思っているのか、神妙な顔つきをしている。
 そのくせ、瞳だけは嬉しさを隠しきれないようにキラキラと輝いているのだ。

 こいつ、本当に俺のこと好きなんだな。

 あの日バスで橋場に痴漢された時、俺は嫌だったし怖かったのに、俺が橋場に同じことをしても、俺に恋する橋場にとっては、怖いどころかむしろ美味しいシチュエーションなのかもしれない。

 なんていうか、こいつもある意味かわいそうなやつだよな。

 小学生の時に、うっかり自分のような男に恋をしてしまったばっかりに、ずっとかわいい女の子やゲイだとしても身近にいる男と付き合うこともできずに毎日通学する俺を眺めるだけの片思いで、挙句にその片思いをこじらせすぎて痴漢という犯罪行為まで犯してしまい、しかもその結果こんなふうに両手の自由を奪われて急所を握られて好き勝手されているのにそれすらもご褒美だと感じてしまう残念な性癖になってしまうなんて、何というか哀れ過ぎる。
 自分が学生時代にしてきた、辛いこともあったけど楽しいことも多かった幾つかの恋愛のことを思えば、橋場は完全に青春を無駄遣いしていて、俺程度が言うにはあまりに上から目線だが可哀想だ。

 俺の手で大きくなった橋場のモノはそろそろ弾けそうで、橋場はもう快感を隠すことも出来ずに息を荒くしている。

 ここでイカせないようにして寸止めすれば、罰にはなるんだけど、なあ。

 本当は橋場に痴漢行為の罰を与えるべきなんだろうけど、こうして橋場が本気で俺のことを好きなんだと実感し、彼が送ってきた哀れな青春時代を想像してしまった後では、もう罰なんか与える必要なんかないんじゃないかと思ってしまう。

 ……まあ、もういいことにするか。

 そう、心の中でつぶやいて、俺は橋場のモノを握る手の動きを速める。

「あっ、あの、中村さん、そんなにされたら、僕、イッちゃいます……」
「いいぞ、イキそうならイッても」
「え、あ、そんな……あ、くっ…!」

 橋場は本当にイッてしまってもいいのかと迷うような表情をしていたが、結局はイカせようとする俺の手に逆らえず、申し訳なさそうな顔をしながら達してしまった。
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