斉藤先生と佐藤くん

鳴神楓

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佐藤くんの進路 1(side:斉藤先生)

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「斉藤先生!」

 朝から名古屋でのテレビとラジオの仕事を終え、地下鉄で移動して改札を出ると、俺の二次元の嫁、ではなくて佐藤くんが手を振って出迎えてくれた。
 こうして実際に会うのは久しぶりだが、あいかわらず子犬のような愛らしさである。

「今日はよろしくね、佐藤くん」
「はい、任せてください!
 あ、昼休みで混んでくる前に学食に案内したいので、さっそくですけど行きましょうか」

 そうして俺たちは地上に出て佐藤くんが通う大学へと向かった。

 ──────────────

 大学内を一通り案内してもらった後、俺たちは裏門から出てすぐのところにある、佐藤くんの行きつけだという喫茶店に来ていた。

「これで普段使ってる施設はだいたい案内できたと思うんですけど、こんな感じで大丈夫でしたか?」
「うん、十分だよ。
 いい取材ができた」

 学食では食事をしながら佐藤くんの好物や食生活を聞き出すことができたし、普段の佐藤くんの学生生活の話を聞いたり、学内の佐藤くんお気に入りのベンチに一緒に座ったりして、すごく充実した時間だった。
 大学生のモデルという口実で、教室で勉強する佐藤くんや掲示板を見る佐藤くんや学内を歩く佐藤くんなどの写真もたくさん撮らせてもらった。
「自然にしててね」と言ったのに、佐藤くんは写真に撮られるのを恥ずかしがって照れた顔になっていて、悶えそうになるくらいかわいかった。

 大学生が主人公の話を書くから参考にしたいという口実をつけて佐藤くんに大学を案内してもらうというアイデアは、我ながら大成功だったと思う。
 俺の家に泊まった時のどこか遠慮した様子とは違い、自分のテリトリーの中にいる佐藤くんののびのびした様子に、俺はまた惚れ直してしまった。

「しかしこの店、一日中モーニングって、めちゃくちゃだよね」

 佐藤くんが連れてきてくれたのは、名古屋名物のモーニングサービス(朝、喫茶店でドリンクを注文するとトーストなどが無料でついてくるサービス)を朝だけでなく閉店までずっとやってるという店だった。
 俺たちの前にはコーヒーとともにトーストとゆで卵とカットフルーツが乗った皿が出されている。

「もうモーニング関係ないですよねー。
 名古屋の喫茶店ってモーニングサービスが当たり前だから、競争で色々すごいサービスの店が多いんですよ。
 僕の学部からだと正門より裏門の方が近いから、ここには空きコマで小腹すいた時によく来てました。
 4年になってからは授業少なくて空きコマもないから、あんまり来てませんけど」
「ああ、佐藤くん4年生だよね。
 就職活動はどうなの?」

 大学4年生といえば就職活動真っ盛りのはずだが、そう言えば佐藤くんからその話を聞いたことがない。
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