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本編

エピローグ:倫之の回想 2

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拓也が初めて神社に来た時、その整った顔立ちもさることながら、何かに護られているような良い気配がしているのに、その割には暗い顔をしているのが気になった。
拓也を社務所に招き入れて話を聞くうちに、俺は彼をこの神社に置いてやろうと決めていた。

うちの神社は俺一人で十分にやっていける規模だし、何より俺自身と神社に重大な秘密があるのだから他人を入れるのが望ましくないことはわかっていたが、それでも拓也を神社に入れることを決めたのは、やはりあの時すでに拓也に惹かれていたのだと思う。
これまで何百年も色恋のことなど忘れていたのに、今になって急に拓也に惚れてしまったのは、種族を超えて結ばれたタロくんと松下さんをうらやましく思ったのもあるだろうが、やはり拓也自身の魅力が大きかったのだと思う。

拓也は真面目で人当たりも良く、しかも老人の姿をした俺を尊敬して大切に扱ってくれた。
同性であるし年も離れていたから恋愛感情とは言えないかもしれないが、好意は持っていてくれたと思う。
そのことはとても嬉しかったのだが、次第に俺はそういう好意だけでは満足できなくなって、恋愛の意味でも俺のことを好きになって欲しいと願うようになってきた。

そうして俺は、拓也に好きになってもらうために、拓也の恋愛対象になりそうな若い姿で拓也の前に現れることにしたのだ。
拓也は年上の女性に対して恋愛関係のトラウマがあったので、同性ではあるが念のため年下という設定にした。

しかしそんな小細工もむなしく、拓也は若い姿の俺ではなく、老宮司の俺のことが好きなのだと言った。
慌てて予定を変更して正体をばらす羽目になったのだが、結果としてそれは良かったのだと思う。

正体をバラして事情を話すと、拓也はどんな姿の俺でも受け入れると言ってくれて、実際に若い姿の俺に抱かれることを受け入れてくれた。
俺は姿を変えると、その姿に引きずられるように性格も変わってしまうところがあって、だから老宮司の俺と若い俺では根っこはおなじでもかなり性格が違うのだが、拓也はそれぞれの性格と立場に合わせて、自然に対応を変えている。
そのくせ中身はどちらも同じだからと、どちらの俺のことも愛してくれるのだから、拓也は度量が広いと思う。
拓也のそんな一面を知って、俺はますます拓也に惚れ直してしまった。

何百年ぶりに出来た恋人だが、俺が年を重ねたせいなのか神使になったせいなのかわからないが、あの頃の相手に対する想いと拓也に対する想いは全く違う。
あの頃は自分が楽しんだり相手から精を絞り取ることを優先していたが、拓也に対しては拓也を楽しませたり色々なものを与えてやりたいと思うし、拓也に自分の精をあふれるほどに注ぎ込みたいと思ってしまうのだ。

拓也の、恋愛に疎すぎてセックスの時の「粋」を全く理解していないところは玉に瑕だが、それはつまり誰の手垢もついていない証拠なのだと思うと嬉しくもある。
実際、最初はあまり感じなかったところも俺の開発のおかげで今ではかなり感じられるようになりつつある、ということもあるので、これからの拓也の成長に期待したい。

これから先何十年も、あるいはもしも拓也が俺と同じ神使になることを了承してくれたなら何百年何千年も拓也と共に生きていけることを想像すると、これからも長く続く人生が楽しみになっている。
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