商店街の稲荷神社に奉職しました

鳴神楓

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本編

翌日 2

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倫くんが作ってくれた朝ご飯を食べ、いつも通り神社に出た。
倫くんは狐耳と尻尾をしまって倫之くんの姿になっている。

昨日までと同じように2人で並んで授与所の窓口に座っているのだが、隣からどことなく浮かれた気配が伝わってくるのがいたたまれない。
その上、その隣の倫くんとうっかり目を合わせてしまったり、声が耳に入ってしまったりすると、昨夜のことがふっと脳裏によみがえってくるのがつらい。

「……ねえ、変身っていつでも出来るんだよね。
 だったら佐々木宮司の姿に変身してくれない?」
「だめだよ。
 宮司はお葬式に行ってるって、昨日何人かの参拝者に説明しただろ?
 午後にならないと宮司の姿にはなれないよ」
「あー、そう言えばそうだった……」
「なに? 拓也は俺がこの姿でいるのが嫌なの?
 夕べは俺の好きな姿でいいって言ってくれたのに」
「いや、嫌ってわけじゃないんだけど、落ち着かなくってさ……」

僕がそう言うと、倫くんは落ち着かない理由がわかったらしく、にやにやと笑った。

「まあ、どっちにしろ拓也にはこっちの姿にも慣れてもらわないといけないんだよね。
 2年後には倫之が養子に入ったことにして、しばらくしたら倫通宮司は引退ってことにして入れ替わるから」
「あ、結局その設定はそのままで行くんだ」
「うん。若返ったのは拓也に意識して欲しかったからだけど、そろそろ世代交代しなきゃいけないのも本当だから。
 設定的には在学中に資格を取って2年後に大学卒業と同時に神社に奉職でいいかな。
 宮司になれる資格取れるまでに何年かかかるから、それまでは祭りの時だけは倫通宮司で出るようにして。
 あ、それとも2年後からは拓也が宮司やる?
 倫之よりは拓也の方が先輩になるんだし」

突然の倫くんの提案に僕はぶんぶんと首を振る。
倫くんは軽く言っているが、社家どころか神使で神職歴何百年の倫くんがいるのに、ぺーぺーの僕が宮司だなんてとんでもないことだ。

「でも拓也も宮司やりたいんじゃないの?
 俺、こうなった以上は拓也を他の神社に移籍させるつもりなんかないから、他の神社の宮司はできないよ?」

結ばれた途端そんなところにまで独占欲を見せる倫くんにちょっとあきれながらも僕は答える。

「確かに宮司っていうのに憧れないわけじゃないけど、やっぱりこの神社の宮司は倫くんがふさわしいと思うよ。
 短い間だけど佐々木宮司を見ていて尊敬できる宮司だって思ってたから、倫之くんに代替わりしても宮司をやって欲しいな」

僕がそう言うと、倫くんはちょっと照れた様子でうなずいた。

「拓也がそう言ってくれるんなら、代替わりしても宮司は俺がやるよ。
 よく考えたら、兼務してる隣町の稲荷神社の宮司を拓也にやってもらうって手もあるしね。
 まあ、その辺は代替わりする時にまた相談しよう」
「うん」

そんな話もしながら、今日も表面上はいつもと変わらない神社での一日が過ぎていった。

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