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本編

酒盛り 2

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そうやって僕が何となく暗い思考になっていると、部屋の外から「中芝、いるか?」と声がした。
「はい」と答えて襖を開けると、僕と同じく寮住まいの先輩が仕事を終えたばかりの格好で立っていた。

「よかった、いたのか。
 携帯出ないから心配したぞ」
「あ、すいません。
 マナーモードのままになってました」
「そうか。
 それはまあいいけど、とりあえず飲みに行くぞ」
「えっ、いえあの、僕、神社を首になったばかりでそれどころじゃ……」
「なに言ってるんだ。
 だから飲みに行くんだろ。
 とにかく、着替えて玄関に集合な」
 
そうして先輩に飲みに連れていかれた先は、埼玉にある大学の雅楽部の先輩の神社だった。

僕の出身大学は三重県にある私立大学の神道学科だ。
神道系の学科がある大学は全国で三重と東京にある2校だけなので、関東在住の神主は東京の大学の出身者が多く、僕と同じ三重の大学の出身者は少ない。
その分、関東在住の三重の大学出身神主のつながりは強く、同窓会組織の活動も盛んで、そこで知り合った同窓生と年齢を越えた交流がある。

埼玉の先輩も僕の5年上なので在学中に顔を合わせたことはないのだが、同窓会の関東支部の集まりで知り合い、同じ雅楽部出身だということで仲良くしてもらうようになった人だ。
先輩は宮司なのだが、まだ独身で神社の社務所で1人で住んでおり、その建物は防音がしっかりしていて飲んで騒いでも周りの迷惑にならないので、時々先輩の神社に同窓生が集まって飲むことがあって、今日もいつものメンバーが10人ほど集まっていた。
みんなお供えのお下がりの一升瓶やつまみを持ち寄って来ていて飲む気満々だ。

僕が空いている座布団に座ると、さっそく隣に座っていたこの神社の宮司の先輩から湯のみを渡され日本酒が注がれた。

「さあ中芝、いったいなんで急に首になったのか話せ」
「え、先輩なんで僕が首になったの知ってるんですか?」
「あ、それは俺が」

僕の疑問に、僕をここまで連れてきた同じ神社の先輩が答える。

「禰宜はお前が辞めさせられたって言うけど、事情を聞いても『中芝くんが悪いわけじゃないんだが、宮司とちょっと行き違いがあって』としか教えてくれないし、気になってさ。
 それでみんなに相談したら、中芝のことをなぐさめがてら話を聞いてやろうってことになって」
「と、いうわけだ。
 さあ、話せ」

先輩は強面なので、そうやって迫られるとなんだか脅されているみたいな気分だけど、先輩が僕のことを心配して問い詰めているというのはよくわかった。
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