年下わんこは女装系

鳴神楓

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吉川が上着をを脱いでいる間に、俺の方も靴下を脱いで時計とネクタイを外す。

「あ、そういえば最後までしても平気か?
 入れられるのがいやなら、手と口だけにするけど」
「あ……えー……いや、俺はどちらでも……」

ナンパされる気がなかったのなら当然受け入れる準備もしていないだろうとそう聞いたのだが、答える吉川は妙に歯切れが悪かった。

いくら気が弱いにしても、自分の希望くらい言ったらいいのに。

こんな場でも相変わらずの吉川に俺はちょっと呆れたが、ふと、ある可能性に気付く。

「お前、もしかしてタチの方がいいの?」
「あ…… いえ」
「ほんとに?
 俺はタチネコどっちも出来るから、お前が好きな方選んでいいんだぞ?
 っていうか俺、相手が自分の体で感じてくれてるって実感できないと興奮しないから、お前が楽しめる方を選んでくれなきゃ困る」

吉川が自分の希望を言いやすいように多少大げさな表現にはなったが、それは本当のことだった。
俺は一晩限りの遊びの関係でも、どうせなら自分だけでなく相手にもちゃんと楽しんでもらいたいと思う方だ。
幸い俺はタチネコどっちでも感じることができるし、どっちもそれぞれに好きなので、普段からどちらがタチをやるかは相手にゆだねることにしている。
吉川がいかにも受け身の性格であることと、女装していることから、最初からやつがネコだと決めつけてしまったが、あの歯切れの悪さからすると、もしかしたらタチの方がいいのかもしれない。

「……すみません。俺がタチでもいいでしょうか」

案の定、吉川は申し訳なさそうにそう言った。

「おう、いいぞ。
 っていうか、悪かったな。決めつけて」
「いえ」
「一応準備はしてるから入れてもいいからな。
 ちょっと時間経ってるから、ほぐさないとまずいけど」
「はい、わかりました」

神妙な顔でうなずくと、吉川は緊張した表情でこちらに来た。
そのままベッドに腰掛けた俺のあごをすくって顔を近づける。

「あ、悪い、キスはちょっと」

俺がその肩を押してキスを拒むと、吉川は情けない顔になった。

「す、すみません……」
「いや、俺こそごめん。
 キスが、ってわけじゃなくて、口紅の感触が苦手でさ」

本当のところ、むしろキスは好きな方だ。
けれども好きだからこそ、生の唇の感触とは全く違う口紅の感触が苦手だった。
俺は根っからのゲイで女性とはキスしたことはないが、ニューハーフのやつとは1度寝たことがあって、その時に口紅付きのキスは経験済みだった。

「悪いな。唇じゃなかったら、たぶん大丈夫だと思うんだけど」
「……いえ、いいです。
 藤本さんがいやならやめておきます」

そう言うと吉川はキスの代わりだとでもいうように、俺の唇を人差し指と中指でゆっくりとなでた。
繊細な壊れ物を触るかのようなその手つきがもどかしくなって、俺は口を開けてその指をぱくりと咥えてやった。
吉川の腕を両手でつかんで、フェラをする時のように舌を絡ませて2本の指をじゅぷじゅぷと出し入れすると、吉川がごくりと喉を鳴らす。

綺麗に化粧されたその顔はいつのまにか雄の欲望をにじませていて、最初からこの表情だったら吉川のことをネコだと誤解することもなかっただろうと思わせた。

吉川の空いている左手が、俺のワイシャツのボタンに伸びる。
そうして襟元のボタンをはずそうとしたが、案外不器用なのか、左手だけでははずすことが出来ないようで、だんだん眉間にしわがよってきた。

そんな吉川の様子に苦笑して、俺は口に含んでいた指を解放して、吉川をベッドの上に誘った。
焦れた様子で俺のシャツのボタンをはずす吉川につられるように、俺も吉川のブラウスのボタンに手を伸ばす。
シンプルな白の角襟の開襟ブラウスのボタンを一つはずすと、白いレースのブラがあらわれた。

「えっろ……」

女物の下着なんて別に興味はないと思っていたが、実際に目にしたそれは、確実に俺を興奮させた。
下着の隙間から見える吉川の胸は薄くではあるがきれいに筋肉がついている。
その男らしい胸が詰め物で不自然に膨らんだ可愛らしい下着で覆われているのがアンバランスで、それにひどくそそられた。

「全部はずしても、いいか?」

吉川は女装のままがいいと言っていたから悪いかと思いつつ、この体をもっと見たいという欲求を抑えられなくてそう聞くと、吉川はうなずいたので、そのままブラウスをスカートのウエストから引き出して、全部のボタンをはずした。

これ以上はだめだろうと、ブラウスをはだけさせるのは我慢して、隙間から手を入れて腹筋をそっとなでると、吉川が体を震わせて吐息をもらした。

「袖……ボタンはずさせて下さい」
「ん」

そう言われて仕方なく吉川の腹から手を離し、両手を吉川に差し出す。
吉川は袖のボタンをはずすと、そのままワイシャツを脱がせた。

そうして吉川はブラウスのボタンだけをはずし、俺は一糸まとわぬ姿になったところで、俺は吉川にベッドの上にゆっくりと押し倒された。
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