2 / 8
2.何も知らない
しおりを挟む
「来たる林間学校!」
朝からテンションの高い同じクラスの松嶋颯斗今回の林間学校での同じ班員でもある。
これから約3時間私たちはバスに乗って曾矢岳という山の麓にある宿泊施設へ向かう。バスでも班員と近くにいなくてはいけない。お陰で京の隣の席になった。担任の山辺先生の出欠確認も終わりバスガイドさんの甲高い声が車内に響く。
「朱羅橋中学校2年3組の皆さまおはようございます」
そのスラスラと述べられた決まり文句のあと、今度は隣から声がした。
「ぼくはバスに乗ったのが初めてです。」
「そうなんだ。」
私がそう返事をした5秒後ぐらいにバスは発車した。しばらくすると田舎者の私たちはあまり見ることのできない右にも左にも高いビルが並ぶ道路に出た。左に見えるのがなんとか、右に見えるのがなんとかと合わせてバスガイドさんが言うたびに私たちは左へ右へと首を振る。なんだか酔ってしまいそうだ。
「なんだかゆりかごに乗ってるみたいですね。」
「そう?私は酔いそうだよ。」
「お酒はダメですよ!」
そう言って真面目に私のことを覗き込む京がなんだか可愛らしく見えた。
ずーっと高速に乗って昼頃には曾矢岳についた。ゆりかごに揺られスヤスヤと寝ている京を起こし宿の食堂で昼食をとる。もちろん班ごとで食べる。入浴・食事係という一番めんどくさい係を任命された私は人数分の食器を班員に私揃ってバイキングに行くよう促した。
「ダメだ、気持ち悪い。」
私は久しぶりの長時間のバス移動とバスガイドのアナウンスのお陰で見事にバス酔いをしてしまった。隣で黙々と地元飯を平らげていく颯斗を横目に私は少しのご飯とおかずにノックダウンした。
日本式のバイキングが初めてなのか京は目をキラキラさせてお皿を持って食事が並べてあるところへ歩いていく。
食事が終わると班別のスタンス発表の練習。そのあとおやつを食べて発表会本番、そのあとにお風呂に入るというスケジュールだ。フリータイムはお風呂の前に30分。まぁ色々準備もあるし、私には入浴・食事係という役割がある。あまり遊んでる暇はない。
スタンスの発表。私たちは西遊記の劇をやる。私の役は三蔵法師だ。特に反論はなかった。主役はもちろん京だ。本番中はみんな京に釘付けだし、わたし自身普段あまり流暢に話さない京が台本をスラスラ喋るのは演ってて面白かった。
練習のお陰でスタンスは成功した。これからフリータイムだもちろん男女部屋は別だから同じ班の女子嶺岸純恋と女子部屋に戻る。今となっては珍しいらしいが男女1つずつ大部屋があるスタイルである。京は颯斗が連れて行ったのだろう。
しばらく話しているとお風呂の時間になった。大広間に班ごとに整列する。他の班は続々と人が集まる中うちの班は1人のメンバーがいつになっても来なかった。
「京は?」
私は同じ部屋にいたはずの颯斗に尋ねる。
「一緒に来たんだけどトイレ行くって言って走ってったよ」
しょうがなく先生の元へ行き颯斗の言ってたことを伝えてみる。
「あいつの事だから案内が読めなかったのかもな、、、」
そう言うと先生は私たちに捜索するように伝えみんなを連れて浴場へ向かった。
私たちの班は京の捜索へ向かう。
私は浴場のある階を行ったり来たり。探せば探すほど心配になっていく。あまり会話をしていなかったけど、いや、あまり会話がなかったから、京の1つ1つの言葉が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
その時
「きゃあ!」
誰かが私の腕を引っ張った。目の前には京の顔があった。
「京!なにやってんの!?」
「探してた。」
「こっちのセリフだよ大広間はこっち」
そう言って京の腕を引っ張る。
しかし京は少しも動こうとしない。
「おーひろまじゃなくて」
「ん?」
「美空のこと探してたの。」
何でか尋ねる前に京がゴソゴソとジャージのポッケをあさる。
「これ。」
そう差し出した京の手には手紙が入っていると思われる封筒があった。
それを開けようとした瞬間京がおもむろにジャージを脱ぎ出した。
「なにやってんの!?」
「手紙読んで」
ジャージの下のTシャツを脱ぎながら私に言う。
そこには1枚のワープロで書かれた文書が入っていた。
《拝啓 美空様》
いつも京がお世話になっています。京の父です。今回美空様にお願いがあってこのような手紙にしました。一緒にがっこう生活を送っていてわかるように京はあまり日本語は達者ではありませぬ。なにせべつのくにから北もので、英語もロクに話せません。
お願いというのは言うまでもなくケイのことです。けいには秘密がいくつかあつて。1つは焼印について......
その先にも文章は続いていたがこのことは確認せずにはいられなかった。
京の上半身を見ても目立つような焼印はない。
「背中」
そう言って半回転した。
「なに...これ.....」
京の背中にはクッキリといびつな丸い形をした焼印が7個あった。
「つづき。」
京の片言ながら力のある言葉に促され手紙のつづきを読む。
…………北斗七星の焼印は我が一族がこの国に来る時にめじるしとナルヨウに王がまだ京が小さい時に彼の背中に焼き付けました。美空さんにはこの焼印のことを隠すのを手伝って欲しいと思いまして。京はこの焼印をコンプレックスと思っていて、見つかってしまうと多分誰とも仲良くできなくなってしまいます。幼い時にそのような経験をしていて、私も2度と京をそのような目に会わせたくないのです。まだ会ったことのない私が言うのもおかしな話なのですが京の恋人を演じて欲しいとお願いしたいです。それで京のそばにいて京を守って欲しいのです。
「はっ!?突然すぎてよくわからないんだけど、えぇーっと。」
混乱した頭の中を整理しようと頭を抱える私を見て、京は心配そうな顔をする。
そもそも京はこの手紙の内容を100%りかいしてるのか?
京に対する質問と疑問が頭の中で錯綜する。
「京はこの手紙読んでから私に渡したの?」
「読めないもん。」
そうだよな。バカな質問だった。
「今までどうやってこれ隠してたの?」
京がスポーツ用のピチピチのインナーを私に見せる。
「これ着てるの。」
「あ、そう。」
「だからお風呂みんなと入りたくない。」
「わかった。」
子犬のような目でそう言って私を見つめる京にそれ以外の答えをする事なんて出来なかった。
「美空は僕のこいひと。」
「恋人ね、、、じゃなくて!んーー。まぁ恋人か。」
今まであんまりそう言うことに足を踏み入れなかったので反応にこまる。普通の女子ならここで飛び跳ねて喜ぶのだろうか。
そんなことを脳みその表面で考えてみる。
朝からテンションの高い同じクラスの松嶋颯斗今回の林間学校での同じ班員でもある。
これから約3時間私たちはバスに乗って曾矢岳という山の麓にある宿泊施設へ向かう。バスでも班員と近くにいなくてはいけない。お陰で京の隣の席になった。担任の山辺先生の出欠確認も終わりバスガイドさんの甲高い声が車内に響く。
「朱羅橋中学校2年3組の皆さまおはようございます」
そのスラスラと述べられた決まり文句のあと、今度は隣から声がした。
「ぼくはバスに乗ったのが初めてです。」
「そうなんだ。」
私がそう返事をした5秒後ぐらいにバスは発車した。しばらくすると田舎者の私たちはあまり見ることのできない右にも左にも高いビルが並ぶ道路に出た。左に見えるのがなんとか、右に見えるのがなんとかと合わせてバスガイドさんが言うたびに私たちは左へ右へと首を振る。なんだか酔ってしまいそうだ。
「なんだかゆりかごに乗ってるみたいですね。」
「そう?私は酔いそうだよ。」
「お酒はダメですよ!」
そう言って真面目に私のことを覗き込む京がなんだか可愛らしく見えた。
ずーっと高速に乗って昼頃には曾矢岳についた。ゆりかごに揺られスヤスヤと寝ている京を起こし宿の食堂で昼食をとる。もちろん班ごとで食べる。入浴・食事係という一番めんどくさい係を任命された私は人数分の食器を班員に私揃ってバイキングに行くよう促した。
「ダメだ、気持ち悪い。」
私は久しぶりの長時間のバス移動とバスガイドのアナウンスのお陰で見事にバス酔いをしてしまった。隣で黙々と地元飯を平らげていく颯斗を横目に私は少しのご飯とおかずにノックダウンした。
日本式のバイキングが初めてなのか京は目をキラキラさせてお皿を持って食事が並べてあるところへ歩いていく。
食事が終わると班別のスタンス発表の練習。そのあとおやつを食べて発表会本番、そのあとにお風呂に入るというスケジュールだ。フリータイムはお風呂の前に30分。まぁ色々準備もあるし、私には入浴・食事係という役割がある。あまり遊んでる暇はない。
スタンスの発表。私たちは西遊記の劇をやる。私の役は三蔵法師だ。特に反論はなかった。主役はもちろん京だ。本番中はみんな京に釘付けだし、わたし自身普段あまり流暢に話さない京が台本をスラスラ喋るのは演ってて面白かった。
練習のお陰でスタンスは成功した。これからフリータイムだもちろん男女部屋は別だから同じ班の女子嶺岸純恋と女子部屋に戻る。今となっては珍しいらしいが男女1つずつ大部屋があるスタイルである。京は颯斗が連れて行ったのだろう。
しばらく話しているとお風呂の時間になった。大広間に班ごとに整列する。他の班は続々と人が集まる中うちの班は1人のメンバーがいつになっても来なかった。
「京は?」
私は同じ部屋にいたはずの颯斗に尋ねる。
「一緒に来たんだけどトイレ行くって言って走ってったよ」
しょうがなく先生の元へ行き颯斗の言ってたことを伝えてみる。
「あいつの事だから案内が読めなかったのかもな、、、」
そう言うと先生は私たちに捜索するように伝えみんなを連れて浴場へ向かった。
私たちの班は京の捜索へ向かう。
私は浴場のある階を行ったり来たり。探せば探すほど心配になっていく。あまり会話をしていなかったけど、いや、あまり会話がなかったから、京の1つ1つの言葉が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
その時
「きゃあ!」
誰かが私の腕を引っ張った。目の前には京の顔があった。
「京!なにやってんの!?」
「探してた。」
「こっちのセリフだよ大広間はこっち」
そう言って京の腕を引っ張る。
しかし京は少しも動こうとしない。
「おーひろまじゃなくて」
「ん?」
「美空のこと探してたの。」
何でか尋ねる前に京がゴソゴソとジャージのポッケをあさる。
「これ。」
そう差し出した京の手には手紙が入っていると思われる封筒があった。
それを開けようとした瞬間京がおもむろにジャージを脱ぎ出した。
「なにやってんの!?」
「手紙読んで」
ジャージの下のTシャツを脱ぎながら私に言う。
そこには1枚のワープロで書かれた文書が入っていた。
《拝啓 美空様》
いつも京がお世話になっています。京の父です。今回美空様にお願いがあってこのような手紙にしました。一緒にがっこう生活を送っていてわかるように京はあまり日本語は達者ではありませぬ。なにせべつのくにから北もので、英語もロクに話せません。
お願いというのは言うまでもなくケイのことです。けいには秘密がいくつかあつて。1つは焼印について......
その先にも文章は続いていたがこのことは確認せずにはいられなかった。
京の上半身を見ても目立つような焼印はない。
「背中」
そう言って半回転した。
「なに...これ.....」
京の背中にはクッキリといびつな丸い形をした焼印が7個あった。
「つづき。」
京の片言ながら力のある言葉に促され手紙のつづきを読む。
…………北斗七星の焼印は我が一族がこの国に来る時にめじるしとナルヨウに王がまだ京が小さい時に彼の背中に焼き付けました。美空さんにはこの焼印のことを隠すのを手伝って欲しいと思いまして。京はこの焼印をコンプレックスと思っていて、見つかってしまうと多分誰とも仲良くできなくなってしまいます。幼い時にそのような経験をしていて、私も2度と京をそのような目に会わせたくないのです。まだ会ったことのない私が言うのもおかしな話なのですが京の恋人を演じて欲しいとお願いしたいです。それで京のそばにいて京を守って欲しいのです。
「はっ!?突然すぎてよくわからないんだけど、えぇーっと。」
混乱した頭の中を整理しようと頭を抱える私を見て、京は心配そうな顔をする。
そもそも京はこの手紙の内容を100%りかいしてるのか?
京に対する質問と疑問が頭の中で錯綜する。
「京はこの手紙読んでから私に渡したの?」
「読めないもん。」
そうだよな。バカな質問だった。
「今までどうやってこれ隠してたの?」
京がスポーツ用のピチピチのインナーを私に見せる。
「これ着てるの。」
「あ、そう。」
「だからお風呂みんなと入りたくない。」
「わかった。」
子犬のような目でそう言って私を見つめる京にそれ以外の答えをする事なんて出来なかった。
「美空は僕のこいひと。」
「恋人ね、、、じゃなくて!んーー。まぁ恋人か。」
今まであんまりそう言うことに足を踏み入れなかったので反応にこまる。普通の女子ならここで飛び跳ねて喜ぶのだろうか。
そんなことを脳みその表面で考えてみる。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる