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その4
4−4
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私の目は暗がりに慣れて、ようやく部屋全体を見回せるようになった。
右手、灯りが点いている机の後ろ側にファイル棚があり、そこにスタンドライトが一台あるのが見えた。窓側には畳が敷かれてあり、その逆の通路側に食堂テーブルがたたんで積み上げられているけれど、その上にあるのは薬箱かしら。
私は左手にあるキッチンに足を向けた。水道は・・・水が出た、使えるみたい。流し台の横手に顔を傾けると、スタンドライトが見えた。私はそれを手に取って、寝ている誰かのところに移動した。
「ねえ。大丈夫ですか?私も騙されてここに連れて来られたんですけど、あなたたちを看病しろって・・・」
私の声に、もぞもぞと布団代わりの布切れから顔を出したのは、若い女性で裸みたい。
私はあらためて声を掛ける。
「あなたも騙されて?そりゃそうですよね。ええっと、いつからここに?」
「わからない。もうひと月は経ってるんじゃないかしら」
すると横からもうひとりも顔を出した。やっぱり裸で、痩せて青白いその顔は・・・子どもじゃないの!
「香織さんは今日で二週間です。一ヶ月いるのは私です」
「あなた、幾つ?中学生くらいじゃない?」
「はい・・・中学二年生です」
「なんてこと!」
「この子はサヤちゃん。可哀想に、まだ子どもなのに毎日大人の相手させられて。食べ物はインスタントラーメンとパンばかり。だから身体を壊しちゃったんです」
「香織さんだっけ。あなたもしんどそうよ」
「ええ。でも先にサヤちゃんを何とかしないと・・・」
「私に何かできるかしら。恥ずかしいけど、とっても混乱してるの。何がどうなってこんなことになってるのやら、何をしたらいいのか、わからなくて」
声を震わせてそう話すと、涙が溢れてぽたぽた落ちた。
「わかります。同じこと、経験したんですから」と香織さんが慰めてくれた。
それから彼女は私たちの置かれた状況を話してくれた。
まず男たちのことから。中野と名乗っている男は本名を中山と言うんだって。次に三十代の男は金田という名前。私を脅した悪ガキが斉藤寛治。やっぱり中学生で、なんとサヤちゃんの元同級生。もうひとりはブーというあだ名しかわからないそう。
ここの工場の社長さんにお金を貸していたのが中山と金田。ブーは金田の知り合いで、寛治は金田の手下をやってる子。半年前に工場の社長さんが夜逃げして、そのあとに四人がここに住みついたのだという。
右手、灯りが点いている机の後ろ側にファイル棚があり、そこにスタンドライトが一台あるのが見えた。窓側には畳が敷かれてあり、その逆の通路側に食堂テーブルがたたんで積み上げられているけれど、その上にあるのは薬箱かしら。
私は左手にあるキッチンに足を向けた。水道は・・・水が出た、使えるみたい。流し台の横手に顔を傾けると、スタンドライトが見えた。私はそれを手に取って、寝ている誰かのところに移動した。
「ねえ。大丈夫ですか?私も騙されてここに連れて来られたんですけど、あなたたちを看病しろって・・・」
私の声に、もぞもぞと布団代わりの布切れから顔を出したのは、若い女性で裸みたい。
私はあらためて声を掛ける。
「あなたも騙されて?そりゃそうですよね。ええっと、いつからここに?」
「わからない。もうひと月は経ってるんじゃないかしら」
すると横からもうひとりも顔を出した。やっぱり裸で、痩せて青白いその顔は・・・子どもじゃないの!
「香織さんは今日で二週間です。一ヶ月いるのは私です」
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「はい・・・中学二年生です」
「なんてこと!」
「この子はサヤちゃん。可哀想に、まだ子どもなのに毎日大人の相手させられて。食べ物はインスタントラーメンとパンばかり。だから身体を壊しちゃったんです」
「香織さんだっけ。あなたもしんどそうよ」
「ええ。でも先にサヤちゃんを何とかしないと・・・」
「私に何かできるかしら。恥ずかしいけど、とっても混乱してるの。何がどうなってこんなことになってるのやら、何をしたらいいのか、わからなくて」
声を震わせてそう話すと、涙が溢れてぽたぽた落ちた。
「わかります。同じこと、経験したんですから」と香織さんが慰めてくれた。
それから彼女は私たちの置かれた状況を話してくれた。
まず男たちのことから。中野と名乗っている男は本名を中山と言うんだって。次に三十代の男は金田という名前。私を脅した悪ガキが斉藤寛治。やっぱり中学生で、なんとサヤちゃんの元同級生。もうひとりはブーというあだ名しかわからないそう。
ここの工場の社長さんにお金を貸していたのが中山と金田。ブーは金田の知り合いで、寛治は金田の手下をやってる子。半年前に工場の社長さんが夜逃げして、そのあとに四人がここに住みついたのだという。
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