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出会い
PITTO
しおりを挟む「僕はこの世界とは違う世界から来たんだよ。
パラレルワールド、平行世界
ってのは本当に存在しているんだ。僕が住んでいる世界は、この世界よりも技術がかなり発達していて、他の平行世界に行き来することが可能になったんだ。」
アーノルドの話はありきたりなSF小説にしか聞こえなかったが、突然何も無いところから現れたり、稲葉を一言で動揺させたりと、作り話にも思えなかった。
「僕が住んでいる世界はPITTOといって、この世界みたいに国というものが存在しないんだ。地球全体が、PITTOなんだよ。」
「ぴっと…。」
「国が無いから戦争も無い。戦争が無い世界は、とても穏やかで平和だよ。」
戦争なんて、何十年、何百年、地球が無くなるまで絶対に無くならないと思っていた。
欲にまみれた愚かな人間達に戦争をやめるなんて事は到底できないと思っていたが、PITTOに住む世界の人達はそれを簡単にやってのけたのだ。
技術も発達するはずだ、と俺は妙に納得した。
「PITTOに戦争は無いが、法律はある。PITTOでは他の平行世界に行くことは重罪なんだ。一度行っただけで、確実に死刑だ。」
「えっ。」
思わず声を漏らす俺に、アーノルドは楽しそうな笑顔で言った。
「そう、僕はPITTOに帰ったら死刑になるんだ。」
アーノルドの笑顔は、これから死ぬ事が確定している人間の表情とは思えなかった。
「死んでしまうのに、なんで来たんですか?」
「死ぬほど君に会いたかったからさ、シュナウザー。」
「そのシュナウザーって人が…PITTOにいる、もう一人の俺ってことですか?」
「その通り、大正解だ。あっちのシュナウザーよりも君は頭が良いみたいだな。シュナウザーは生活に支障が出るレベルの馬鹿だから君の察しの良さに驚いたよ。」
どうやら俺の頭の悪さは努力でどうにかなるものでは無かったようだ。
「シュナウザーは死んだんだ。一ヶ月前にね。」
「えっ、死んだんですか?」
「そう、事故でね。僕は医者なんだけど、身体の破損が強くて助けられなかった。でも、なんとか脳は綺麗な状態で保存ができたんだ。だから彼が死んだっていうのは少し間違いで、身体は死んでしまった。シュナウザーは今、脳だけで生きているんだよ。彼には新しい体身体が必要なんだ。」
アーノルドの話を聞いて俺は悟った。
同時に、自分の察しの良さを呪った。
なんてことをするんだ!シュナウザーに傷をつけるな!
綺麗に治らなかったら僕は君を許さないぞ!
頼むからシュナウザーに傷を付けないでくれ。綺麗な状態を保っておきたいんだ。
だって僕達は親友だろ。
アーノルドの声が、頭の中で再生される。
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