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出会い
孤独
しおりを挟む学校での何十時間にも感じる一日が終わる。
学校にいても孤独だったが、
家に帰っても俺は孤独だった。
家には基本的に誰もいない。
父、母、俺の三人暮らしのはずだが、
もう随分前から一人暮らしのような感覚だった。
心身共に疲れた体で家に帰ると、リビングは朝の風景となんら変わらず、今日一日誰もこの家に足を踏み入れなかったんだとすぐに分かる。
父も母も、仕事が忙しくあまり家に帰れないらしい。
表向きは俺にそう説明しているが、
本当のところは分からない。
二週間あまり姿を見なかった時はさすがに生死を確認する連絡を入れたが、鬱陶しそうに早々と電話を切られ、それ以来何日顔を見なくても俺から連絡する事は無くなった。
幸い生きていくには十分過ぎる程のお金は置いていてくれたので、飢えで死にそうになることは無かった。
「前にも教えたよね?ここでそんなに苦戦されると、困るなぁ。普通にしてたら簡単に分かる問題なんだけどなぁ。亜門くんじゃ、解けないかぁ。」
両親の顔よりもヤスダの顔の方が
圧倒的に見る数が多かった。
ヤスダは二日に一回家に来ては、待ってましたと言わんばかりに俺に難しい問題を出して嫌味を言う。
親が居ない事を良いことに、九十分間ろくに勉強を教えてくれず嫌味を言い続けるのだ。
俺にとっては二日に一回の貴重な勉強の場だが、ヤスダにとってはただのストレス発散の場でしか無かった。
ヤスダはまともに勉強を教えてくれないので親からしてもお金の無駄なのだが、俺から親にそれを伝える事は至難であった。
親とのコミュニケーションの取り方が日が経つにつれ分からなくなっていて、親に今の家庭教師がまともではないと伝えなければならないと思うと、ヤスダの永遠と続く嫌味に耐えた方がマシだと思えるのだ。
学校で理不尽な暴力を受け、唯一の癒しは俺に冷たく、帰っても両親はおらず家ではずっと一人きり。
そして二日に一回家にやって来る嫌味な家庭教師の相手をしなければならない。こんな孤独な生活が続くと、息を吐くように死にたいという言葉が出てくるようになった。
朝起きるとまた最悪な一日が始まったと勝手に涙が流れるし、他に話す人がいないのでテレビ越しの返事は望めない人間に話しかける日々。
誰が見ても惨めで寂しい人生だったが、俺に死ぬ勇気など無かった。
俺は斎藤の言う通り、弱虫だ。
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