【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

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悪のなれ果て

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 リーシャを推してくれてた読者様! 本当に申し訳ございません!
 どうやらアレンはリーシャではなく、エリーナをとったようです。

 何故リーシャではなかったのか。それは作者の自分でもよく理解できてないです。
 でも、何故かエリーナの方がしっくり来たと言えばいいでしょうか。本当は自分もリーシャ推しだったので自分であの一話をかいてしまったことを後悔してます。

 ってことで話は変わりますが残りこの物語も2話。
 是非最後までお付き合いしていただけると嬉しいです!

 残り一話はいつも通り7時すぎに投稿しようと思います!
**************************

「…………本当全て解除しやがったのか」

 神獣は赤い点が一つも残っていない地図を見て言った。
 全ての時限魔法が解除された。それは一時間過ぎた今でも何一つ異変が起きてないことが証明している。
 
「はぁ…………疲れたぁ」

 俺はその場にどっと腰を下ろした。
 達成感か、それとも安心感か。どっと俺に感情の高波が押し寄せてくる。

 俺が世界を救った。
 その紛れもない事実が俺の感情を揺さぶる。

「…………【召喚コール】」

 俺は残りの気力を振り絞るようにして魔法を行使した。

(…………うっ!)

 これが魔力切れなのだろうか。
 今まで味わったことのないような不快感が俺を襲う。

「本当に無茶しすぎですよ。主」
「…………ありがとう。ゴブくん」

 後ろから俺の背中を支えるように一人の男が現れる。
 そして俺の身体を支えているゴブくんの手から魔力が俺に分け与えられた。
 まさか魔力操作まで身に着けていたとは。本当にゴブくんが準魔王級レベルになったのだと実感する。

「あの魔法は流石に私も驚きましたよ」
「あー。俺もあんな魔法使ってみたいぜ」

 その後ろからラークとグレードが現れる。
 俺が先ほどかかわりが深い者だけここに転移させたのだ。

「流石俺たちの主だな…………と素直に言えないレベルの魔法で少し焦ってる」
「私は言えるわぁ。流石私の彼氏だとねぇ」

 ドラは苦笑いしながら俺を見てくる。
 一時間で傷もかなり癒えてきたのか、リーシャは先ほどの寝た状態ではなく、堂々と立ったまま言った。
 リーシャが自分のことのように俺を褒めるため俺まで嬉しくなってしまう。

「…………ああ。本当に良かったよ」

 俺はゴブくんの手を握ってゆっくりと立ち上がり、水平線まで見渡せる世界を眺める。

 多くの血が流れた。多くの命が犠牲になった。
 その犠牲のおかげでなんて俺は言わない。
 でも、その犠牲分まで俺がこの世界のために働かなければいけないなと思う。

「じゃあ一度帰るか…………レンも来るか?」
「いいや、俺はいいよ。俺は俺の役目があるからね」
「また今度な。お前ら行くぞ。アレンも早く来い」

 魔王は俺と俺の配下を自分の近くに集めさせた。
 そして、すぐに転移魔法の準備を始める。

「レン様。兄をお願いします」
「ああ。今度あいつと一緒にディルガイナ行くから。その時はしっかり出迎えてくれよ?」

 俺はレンにしっかりと頭を下げておく。
 リーシャが復活しているのなら先輩たちが尽力してくれたということだ。兄も難なく傷も癒えていることだろう。

「【テレポート】!」

 魔王は俺が用を済んだのを確認すると魔法を行使した。
 そして、すぐに俺たちの視界は真っ暗に染まったのだった。






「じゃあ僕も行こうかな。君はどうするの?」
「俺っちは…………ちょっとだけ一人にさせてくれ」
「正直、犯罪者を一人にさせるのは心配だけどね。まぁ今の君なら特に何もしないと俺は信じてるよ」

 レンは神獣を見てそう言うと魔王たちと同じように一瞬で姿を消した。

 唯一広大な草原に取り残された神獣もゆっくりと口を開く。

「【テレポート】」






「ペトラ…………」

 俺っちもう一度花畑に戻ってペトラの墓石の前で跪く。

 今までに百年間積み上げてきた憎悪があの一瞬で晴らされたというわけではない。
 だが、俺っちにとってこの日が一番心を動かしたのは事実である。

「俺っちはいつから…………間違ってたんだろうな」

 今までの俺っちなら世界が間違っていた。俺っち以外の全てが間違っていた。そんな風に言っていただろう。
 しかし、あの小さな少年に言われてやっと気づいた。誤っていたのは俺っちなのだと。

 俺っちは跪いたまま懇願するように亡者に聞く。

「…………なぁ俺っちはまだやり直せるかな」

 あの少年は俺っちに生きることを強要させた。死ぬことを、逃げることを阻止した。
 今の俺っちには何十万もの怨念がのしかかっている。そんな俺っちでもまともに生きることが許容されていいのだろうか。

 そんなことを考えていると一人の声が聞こえた。

「うん。無理だと思うよ」
「…………え? だれ――」

 シュンッ!

 俺っちが反応する前に、俺っちの耳元で何かが空を切った。
 俺っちの世界が反転する。

 反転して反転して反転して反転して…………何か固いものにぶつかる。

「――――――――――――――ッ!」
「タガ。これ食べていいよ」
「まじっすか? 流石リンクの兄貴。本当に一撃っすね!」

 何が起きた。お前らは誰だ。俺はどうなってる。

 ただ俺の視界に映っているものは俺のだった首から下を一人の獣人がバクバクと食べているということだけだ。
 そんな現状を理解していない俺に説明するように一人の人間が口を開く。

「やっぱり魔力も気力も残ってませんでしたね。神獣さん」
「――――――――」

 俺も何か言おうとしても口が上手く回らない。
 俺は今喋っているのだろうか。少しずつ視界も暗転していく。

「大丈夫っす。俺がこれから獣人族を率いるので安心して逝ってください」
「その通り。貴方の怨念は俺たちが責任をもって引き取りますから…………死んでください」

 その男は俺の上に足を置き、大きく振りかぶった。
 そして…………

 ブチュッ!

「うわぁ。頭食べたかったのに」
「こんなバカの脳なんて美味しくないさ。それより力はついたかい?」
「ついたっす! 神獣とまでは及ばないっすけど数年もあれば必ず神獣を超える力を得られるっす!」
「流石はタガだな。そのスキル。本当に羨ましいよ」

 未だにタガは神獣の身体を、地面にたまっている血を食している。
 元気よく答えるタガを見てリンクは歪な笑みを浮かべた。

「待ってろ…………アレン…………キール。俺が必ず殺してやる」




 負の連鎖は絶対に絶えることはない。

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