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最弱テイマーの末路

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「な、なんだよ…………こんな数ありえていいわけがない」

 神獣は目の前で起きている現状に脳の理解が追い付いていないようだ。
 そんな神獣に続くようにレンと魔王が苦笑いを漏らす。

「これって普通に異世界人のレベルじゃないよね…………もしかすると同業者?」
「いや、アレンは完全にこっちの世界の住人だ…………しかし、ここまで配下を集めていたと…………は?」

 現在、俺たちの目の前には何万、何十万もの光の柱が見える。
 それも近辺だけではなく、世界各地。それこそ時限魔法がある場所にだ。

 【全体召喚オールコール】でも良かったのだが、目の前に何十万人もの配下が急に現れたら心臓に悪い。
 ましてや、ここから一番離れている大陸の南端など間に合うはずもない。

 また、火山地帯や氷河地帯などは俺が配下を飛ばせただけでは戸惑ったり、環境に適応できなかったりするかもしれない。
 ならどうするか。その答えは簡単だ。

「おい、アレン…………この数、本当に配下だけか? 今も増え続けてるぞ」

 魔王はどうやら俺の魔法に気づいたのか、不思議そうに聞いてくる。
 俺の配下の繋がりは現在十万程度。それに対して爆発時限魔法が五十万程度。それが世界各地に散らばっているとなると間に合うはずがない。
 
 俺は生きてきた中でディルガイナと北残国レイスなど、魔族の国にしか行ったことがない。
 そのため、オースガイアの端などには配下たちを転移させることは不可能である。

「もちろん。配下だけじゃないよ。この世界の全ての獣を一時的に契約したんだ」

 俺はテイマーだ。
 テイマーとは本来の職業であれば魔物でも魔族を使役するのでもない。

 そう。獣を使役するのだ。

「「「……………………は?」」」

 三人は俺を見て素っ頓狂な声を出した。
 魔王はあわただしい様子を見せて聞いてくる。

「す、全てってどういうことだ!?」
「この世界にいる数百万の獣だよ。時限魔法の座標は全ての獣に送っておいたから、近い個体に行ってもら事にしたんだ。時限魔法は術式を少しいじるだけで消滅するからね。獣でも十分壊せるよ」

 俺は特に焦る様子もなく答えた。
 だが、それは外面的なだけで内心は心臓バクバクしている。

 この魔法は世界をかけた魔法だ。失敗は許されない。

「…………ッ! 本当に解除していってやがる!」

 神獣は目の前に発現させていた立体的の地図を見て目を見開いた。
 俺もちらっと視線を移すが、ものすごい勢いで赤の印が消えていっている。
 
 実際この魔法は強制力のない魔法だ。俺の応答など無視してもらうことだって可能である。
 そのため通常の状態ではこの魔法は行使も出来ないし、行使をしたところで意味を持たない。

 だが、今は違う。
 そこまで知能の高くない獣にとって一番の本能は何だか知っているだろうか?
 
 ――生存本能

 これが獣にとって最大の行動理由であり、生きるための術である。
 今起きていることは世界の危機だ。自分の命を脅かす事件だ。

「さぁ。世界を救おうか」

 俺はにんまりと笑みを浮かべて言ったのだった。
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