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希望
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「……………………」
神獣は俺の言葉を聞いて下を俯いたまま何も口を開かない。
だが、先ほどと雰囲気が変わったのは明確だ。何か心境に変化があってくれればいいのだが。
「いい息子をもったね。魔王」
「そうだろ? 自慢の息子だ」
魔王とレンは背後で笑いながら俺を見る。
気恥ずかしいので止めてもらいたいものだ。だが、この世界のトップである二人に褒められるというのもなかなか悪くない。
そんなことを考えていると、神獣はボソッと笑いながら呟いた。
「…………あぁ…………もっと早かったらなぁ」
それは懇願するような、あの強力な神獣の声とは思えないほどのか弱い声だった。
不思議に思っている俺たちを見て神獣は少量の涙を流しながら口を開く。
「もう何もかもが遅い。だから言っただろ? 過去も未来も俺っちには変えられないんだ」
そう言って神獣は何か半透明な立体映像のようなものを発現させる。
「…………地図?」
その立体映像はこの世界の縮小された地図だった。
そして、その地図の中に数十万もの小さな赤点が記されている。
この赤点は何なのだろうか。一点に集中しているわけではなく、世界各地に広がっていた。
そんな俺の疑問に答えるように神獣は簡潔に答える。
「その赤点は俺が爆発魔法を仕掛けた地点だ。後一時間もすれば爆発する」
「「「…………なっ!?」」」
その爆弾発言に俺たちは唖然とすることが出来なかった。
もし、神獣の言っていることが正しいのであれば、これは世界が崩壊するレベルの爆発が起きる。
まぁ先ほどそんな魔法を放とうとした俺が言えることではないが。
「流石にこの数は…………」
魔王はこの地図を見て難しそうな表情を見せる。
今から急いで魔王が【テレポート】で各地に転移しても間に合わないはずだ。
また、絶対に人間が行かないような湖の真ん中や山岳地帯などにも設置されていた。
「だから言っただろ。もう遅いって」
神獣は呆れたような苦笑いをして言った。
その目は死んだ魚のようである。生きる希望を失っている目、と言ったの方が正確か。
普通に考えたらこんな数の爆発物を撤去するなど不可能だ。
一時間後には一瞬で何億の命が消し飛ぶだろう。
「…………神獣。お前はもし、これが解除されたとして、その時はどうするの?」
そんな俺の問いに神獣は呆れた笑いを返す。
「大丈夫。この時限魔法が解除されるなんてことはまず――」
「さっさと答えて! どうするの!」
俺は神獣の言葉を遮り、大声を出して聞き直す。
その言葉に神獣は一瞬、驚いたように目を丸くする。
そして、ため息をつきながら答えた。
「そうだな。もし解除されたんなら全てお前の命令通りにな――」
「よし! 父さん! ちょっと魔力分けてくれない?」
俺は冗談めいて言った心中の言葉を遮って魔王に聞く。
ちなみに今の発言は録音魔法で保存済みである。言質は確保済みということだ。
もし、解除できた際には思う存分こき使ってやろう。
「貸せるにはかせるが…………何をする気だ?」
「テイマーとして役目を果たそうかなと思ってね」
俺は魔王の手を握りながら答えた。
三人は理解出来ていなような表情を見せる。
それはそうだろう。こんな魔法は自分でも使えるか分からない。
「これで十分か?」
「うん。ありがとう」
俺は魔王から先の戦いで少し消耗した魔力分を分けてもらう。
できるだけ魔力はあった方がいいだろう。備えあれば患いなしというやつだ。
「じゃあ始まますか!」
俺は自分に秘められている全魔力を開放して言ったのだった。
神獣は俺の言葉を聞いて下を俯いたまま何も口を開かない。
だが、先ほどと雰囲気が変わったのは明確だ。何か心境に変化があってくれればいいのだが。
「いい息子をもったね。魔王」
「そうだろ? 自慢の息子だ」
魔王とレンは背後で笑いながら俺を見る。
気恥ずかしいので止めてもらいたいものだ。だが、この世界のトップである二人に褒められるというのもなかなか悪くない。
そんなことを考えていると、神獣はボソッと笑いながら呟いた。
「…………あぁ…………もっと早かったらなぁ」
それは懇願するような、あの強力な神獣の声とは思えないほどのか弱い声だった。
不思議に思っている俺たちを見て神獣は少量の涙を流しながら口を開く。
「もう何もかもが遅い。だから言っただろ? 過去も未来も俺っちには変えられないんだ」
そう言って神獣は何か半透明な立体映像のようなものを発現させる。
「…………地図?」
その立体映像はこの世界の縮小された地図だった。
そして、その地図の中に数十万もの小さな赤点が記されている。
この赤点は何なのだろうか。一点に集中しているわけではなく、世界各地に広がっていた。
そんな俺の疑問に答えるように神獣は簡潔に答える。
「その赤点は俺が爆発魔法を仕掛けた地点だ。後一時間もすれば爆発する」
「「「…………なっ!?」」」
その爆弾発言に俺たちは唖然とすることが出来なかった。
もし、神獣の言っていることが正しいのであれば、これは世界が崩壊するレベルの爆発が起きる。
まぁ先ほどそんな魔法を放とうとした俺が言えることではないが。
「流石にこの数は…………」
魔王はこの地図を見て難しそうな表情を見せる。
今から急いで魔王が【テレポート】で各地に転移しても間に合わないはずだ。
また、絶対に人間が行かないような湖の真ん中や山岳地帯などにも設置されていた。
「だから言っただろ。もう遅いって」
神獣は呆れたような苦笑いをして言った。
その目は死んだ魚のようである。生きる希望を失っている目、と言ったの方が正確か。
普通に考えたらこんな数の爆発物を撤去するなど不可能だ。
一時間後には一瞬で何億の命が消し飛ぶだろう。
「…………神獣。お前はもし、これが解除されたとして、その時はどうするの?」
そんな俺の問いに神獣は呆れた笑いを返す。
「大丈夫。この時限魔法が解除されるなんてことはまず――」
「さっさと答えて! どうするの!」
俺は神獣の言葉を遮り、大声を出して聞き直す。
その言葉に神獣は一瞬、驚いたように目を丸くする。
そして、ため息をつきながら答えた。
「そうだな。もし解除されたんなら全てお前の命令通りにな――」
「よし! 父さん! ちょっと魔力分けてくれない?」
俺は冗談めいて言った心中の言葉を遮って魔王に聞く。
ちなみに今の発言は録音魔法で保存済みである。言質は確保済みということだ。
もし、解除できた際には思う存分こき使ってやろう。
「貸せるにはかせるが…………何をする気だ?」
「テイマーとして役目を果たそうかなと思ってね」
俺は魔王の手を握りながら答えた。
三人は理解出来ていなような表情を見せる。
それはそうだろう。こんな魔法は自分でも使えるか分からない。
「これで十分か?」
「うん。ありがとう」
俺は魔王から先の戦いで少し消耗した魔力分を分けてもらう。
できるだけ魔力はあった方がいいだろう。備えあれば患いなしというやつだ。
「じゃあ始まますか!」
俺は自分に秘められている全魔力を開放して言ったのだった。
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