【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

文字の大きさ
上 下
128 / 142

最終戦争

しおりを挟む
「じゃあ行ってくるよ!」
「頑張ってください! 我が主!」

 俺はゴブくんに目配せをしてから隣で座り込んでいるドラの首根っこを持つ。

「俺は絶対に行かない! プリンを食べるまで絶対に行かないぞ!」

 俺がどうにか立たせようとするも、ドラはまるで子供のように意地を張っている。
 正直プリンに関しては俺に非がある。いや、俺にしか非がない。
 何故先にプリンを買っていなかったのだろうか。ってかそもそもプリンってオースガイアにあったっけ?

「まぁ油揚げも美味しいからさ」

 俺はそう言ってドラの手中にある油揚げを食べさそうとする。
 まぁ何も食べないよりはましだと思ったのだろう。
 ドラは渋々油揚げを口にした。

「…………え? 美味しいかも」
「…………だ、だよね? プリンはまた買っとくからさ」
「しょうがない。今はこれで我慢する」

 と拗ねた様子も見せながらドラは一気に大きい油揚げを食べ終えた。
 ちょっとだけその様子が可愛いと思ってしまうのは病気だろうか。

「じゃあ行くよ」
「分かった」

 俺が呼びかけると今度は素直に立ち上がった。
 そして、俺の手を握ってくる。

 俺は神獣が通ったはずの魔力残滓をもう一度確認してから魔法を行使した。

「【テレポート】!」

 その瞬間視界から色が失われ真っ暗に染まっていった。



 視界に色が取り戻され、一番最初に視界に映ったのは神獣だった。

「あ~。まさかここまでやってくれるとはね」

 神獣は気だるそうに俺たちを見て言った。
 その表情からは少し疲労が垣間見える。
 そして、あたりを見渡すが神獣以外に生命反応は見つからない。

「ラン君はどこだ!」
「ラン君? あぁランドロフな。それはそこにいるじゃん」
「…………ん?」

 俺は神獣が指をさした後方へとゆっくりと視線を移す。
 だが、そちらの方向には誰もいなかった。あるのは花畑だけだ。

「誰もいないじゃないか!」
「主…………アレじゃないか?」

 俺は神獣にそう言い返すと隣にいるドラが神獣と同じように指をさした。
 俺はゆっくりとその場へと近づいていく。

「…………ら、ラン君!?」

 花で覆いかぶされていたため認識することが出来なかった。
 ランドロフは立っていたのではない。花畑の中に寝かされていたのだ。
 その容姿を見ただけで分かる。

「お前…………ラン君を殺したのか?」

 ランドロフの右腕と左腕はなくなっていた。止血はされているものの、万能薬エリクサーがなければ再生しないと思われるほどえぐれている。
 更に上半身に深く刻まれた跡があった。内臓にも余裕で達するほどの

「息がない…………お前、ラン君をいつ殺した?」
「えっとね。三十分ぐらい前かな? 結構粘ったからめんどくさかった」

 俺の問いに神獣は呆気なく答える。その表情は殺人をこなした奴の表情ではなかった。
 俺はすぐにドラに命令を出す。

「ドラ! 結界を張って!」
「了解! 火の加護のもとに………………………………【火炎地獄ファイアボルノーバ】!」

 俺の命令通り、ドラはこの花畑周辺に領域結界を張った。

 この場所は花畑に真っ青の空が広がっていた。
 しかしドラの魔法によって一瞬で地獄とかす。

 周りを見れば火、火、火。
 俺たちにはダメージが入らないが見ているだけで熱い。本物の地獄のようだ

 神獣には持続的に熱風と灼熱が襲っているはずなのだが、余裕の表情を浮かべている。
 火炎耐性か無効でもあるのだろう。

 もし、ランドロフの魂がこの世界に引き留めれていなかったら蘇生は不可能だ。
 そのため、結界を張ってランドロフの魂の粒子をこの世に留める。まぁ応急処置でしかない。
 あのランドロフの父に引き続いて息子が死ぬなんてことはあってはいけないのだ。

「お前…………俺に殺されても文句言うなよ?」
「ふんっ。お前みたいなガキに俺っちが殺されるわけないだろ」

 こうして世界大戦の最後の戦いの火蓋が切られようとしていた。
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...