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テイマー
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俺の視界の色が徐々に取り戻される。
「…………え?」
そして、目の前の光景がくっきりと見えるときにはそんな声を漏らしていた。
あの大量の獣人たちがいなくなっていたのだ。
その代わりと言っては何だが、
「あ、主! 無事で何よりだ!」
「おい、クソドラゴン。敬語を使え、敬語を」
「ほんとお前って、主が目の前にいると態度がでかくなるよな」
ドラとゴブくんの視線がバチバチと音を鳴らしている。
いつもならすぐに俺がなだめるのが役目なのだが、そんなことをできるほど俺の脳には余裕がなかった。
「これ…………ドラがやったの?」
「あ~。これは違う。俺の指揮下にある軍に鎮圧させたんんだ」
「…………軍?」
俺たちの目の前には何十万人もの獣人が重なった山がある。
あの絶望的な光景は俺の前にはもうない。
それにしても軍とは何だろうか。そんなもの作った覚えがないのだが。
「オースガイアには一万ほど。ディルガイナの国境付近に六千ほど準魔王級を配置してる」
「…………へ~。ドラも成長したもんだ。俺の配下を自由に使うとはね」
「い、い、いやぁ。そ、そんなことはないっすよ?」
ドラは笑顔で見ている俺から視線を逸らして苦笑いをしている。
俺の少し皮肉気味に言ったが別に悪意はない。その行動に助けてもらったのは事実なのだから。
「父さんは何か言ってた?」
「いえ、どうしても戦争に関わりたくないようで何も言ってくれませんでした。『この世界が好きだからしょうがない』とは言ってましたね」
俺の問いにすぐにゴブくんが答えてくれる。
そのセリフ、どこかで聞いたことがあるような…………
そう言えば、ドラも何か一回り強くなっているような気がする。
「ドラは進化したの?」
「ああ。炎竜王になってる。魔王級だな。そこの小悪人より一段階上だ」
おおよそだが、リーシャもそうであろう。
となるとグレードとラークの階級も気になってくるが、ここにはいないようなので少しの間の我慢だ。
ここまで来ると、配下の心配ではなく、この星の心配をしなければならないかもしれない。
「ちっ! 貴方という人間は本当にうざいですね」
「主様の前だぞぉ? そんな話し方していいのかぁ?」
二人は取っ組み合いになりかけながら口々にする。
その光景がどこか懐かしくて、それで面白くて…………
「…………あっはっはっは!」
「「…………ん?」」
急に笑い出した俺を見て二人は不思議そうな表情をする。
「やっぱり二人が俺の相棒だよ。これからもよろしくね」
俺は二人に満面の笑みを浮かべながら言った。
一人にならないといけない時もある。だが、やはり皆でいるときの方が楽しい。
「もちろんです!」
「当たり前だろ!」
二人も満面の笑みで俺の思いを倍以上にして返してくれる。
どれほど離れていたって、どれほど会えなかったって絆は消えない。
それはこれからも同様だ。二人が…………俺の配下たちがいない世界なんて考えられない。
「あぁ…………」
あとは神獣だけである。
神獣さえ正気に戻せば、世界は一度落ち着くことができる。
「…………テイマーで良かった」
最初は恨みに恨みまくった。
俺がテイマー一族から生まれてしまったことを、才能のない俺が才能のある皆に囲まれることにストレスを溜めていた。
だが、今は違う。心の底からテイマーで良かったと思える。
それは俺に実は才能があったからでも、ちやほやされるからでもない。
俺は思う。テイマーと運命は切っても切れない縁があると。
その運命が俺にはあった。ゴブくんと出会えて。ドラと、リーシャと、魔王と出会えて。更には他種族とも仲良くできて。
そして、その中で契約という物理から絆という精神に成長することが出来る。
それは攻撃者にも治癒者にも魔術者にも出来ない。
何度も言うが俺は心の底から思う。
ああ。本当に俺はテイマーで良かったな。
「…………え?」
そして、目の前の光景がくっきりと見えるときにはそんな声を漏らしていた。
あの大量の獣人たちがいなくなっていたのだ。
その代わりと言っては何だが、
「あ、主! 無事で何よりだ!」
「おい、クソドラゴン。敬語を使え、敬語を」
「ほんとお前って、主が目の前にいると態度がでかくなるよな」
ドラとゴブくんの視線がバチバチと音を鳴らしている。
いつもならすぐに俺がなだめるのが役目なのだが、そんなことをできるほど俺の脳には余裕がなかった。
「これ…………ドラがやったの?」
「あ~。これは違う。俺の指揮下にある軍に鎮圧させたんんだ」
「…………軍?」
俺たちの目の前には何十万人もの獣人が重なった山がある。
あの絶望的な光景は俺の前にはもうない。
それにしても軍とは何だろうか。そんなもの作った覚えがないのだが。
「オースガイアには一万ほど。ディルガイナの国境付近に六千ほど準魔王級を配置してる」
「…………へ~。ドラも成長したもんだ。俺の配下を自由に使うとはね」
「い、い、いやぁ。そ、そんなことはないっすよ?」
ドラは笑顔で見ている俺から視線を逸らして苦笑いをしている。
俺の少し皮肉気味に言ったが別に悪意はない。その行動に助けてもらったのは事実なのだから。
「父さんは何か言ってた?」
「いえ、どうしても戦争に関わりたくないようで何も言ってくれませんでした。『この世界が好きだからしょうがない』とは言ってましたね」
俺の問いにすぐにゴブくんが答えてくれる。
そのセリフ、どこかで聞いたことがあるような…………
そう言えば、ドラも何か一回り強くなっているような気がする。
「ドラは進化したの?」
「ああ。炎竜王になってる。魔王級だな。そこの小悪人より一段階上だ」
おおよそだが、リーシャもそうであろう。
となるとグレードとラークの階級も気になってくるが、ここにはいないようなので少しの間の我慢だ。
ここまで来ると、配下の心配ではなく、この星の心配をしなければならないかもしれない。
「ちっ! 貴方という人間は本当にうざいですね」
「主様の前だぞぉ? そんな話し方していいのかぁ?」
二人は取っ組み合いになりかけながら口々にする。
その光景がどこか懐かしくて、それで面白くて…………
「…………あっはっはっは!」
「「…………ん?」」
急に笑い出した俺を見て二人は不思議そうな表情をする。
「やっぱり二人が俺の相棒だよ。これからもよろしくね」
俺は二人に満面の笑みを浮かべながら言った。
一人にならないといけない時もある。だが、やはり皆でいるときの方が楽しい。
「もちろんです!」
「当たり前だろ!」
二人も満面の笑みで俺の思いを倍以上にして返してくれる。
どれほど離れていたって、どれほど会えなかったって絆は消えない。
それはこれからも同様だ。二人が…………俺の配下たちがいない世界なんて考えられない。
「あぁ…………」
あとは神獣だけである。
神獣さえ正気に戻せば、世界は一度落ち着くことができる。
「…………テイマーで良かった」
最初は恨みに恨みまくった。
俺がテイマー一族から生まれてしまったことを、才能のない俺が才能のある皆に囲まれることにストレスを溜めていた。
だが、今は違う。心の底からテイマーで良かったと思える。
それは俺に実は才能があったからでも、ちやほやされるからでもない。
俺は思う。テイマーと運命は切っても切れない縁があると。
その運命が俺にはあった。ゴブくんと出会えて。ドラと、リーシャと、魔王と出会えて。更には他種族とも仲良くできて。
そして、その中で契約という物理から絆という精神に成長することが出来る。
それは攻撃者にも治癒者にも魔術者にも出来ない。
何度も言うが俺は心の底から思う。
ああ。本当に俺はテイマーで良かったな。
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