【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

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神獣の獣化

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「ラン君! リーシャと二人で行動して! 俺は兄ちゃんと行動する!」
「分かった!」

 神獣の行動パターンはなんとなく予想がつく。一人ずつ潰していくつもりなのだろう。
 どうやら何か焦っているのかもしれない。少し行動が大雑把にも見える。

「【陽炎】!」

 まず、ランドロフがリーシャを分身体を魔法で発現させた。計十人である。
 普通の魔法ならにただの偽物なのだが、ランドロフの魔法の場合、魔力までコピーしてしまうのだ。
 そのため、その分身体からも魔法が放たれるということである。
 狐族最強の秘術とも言っていいだろう。

 そして、分身体が増えたリーシャはというと。

「影の加護のもとにぃ! 我が眷属の至高たる死刑執行者ぁ! ここ庭が魔力を持って顕現せよぉ!」

 リーシャが唱えている術式は影属性の究極魔法。俺が使う空間属性の究極魔法である【次元空間圧縮砲《アトミックキャノン》】と同じレベルの魔法だ。

 リーシャも魔力は多いが、それ以上に魔力を伴う魔法である。
 もしかしたら、魔力欠乏で死ぬ可能性もある危険な魔法なのだ。それほどの覚悟で神獣に挑まなければ負ける。そう思ったのだろう。

 俺は自分の魔力を契約のつながりを辿ってリーシャへと譲り渡す。俺はどれだけ減っても特に問題になることはない。
 すると、大量の魔力が流れてきたのが分かったのか、リーシャは詠唱中にこちらを向いてへへぇと笑みを浮かべた。

 それもつかの間。直ぐにリーシャは真剣な、しかしどこか嬉しげな表情を浮かべ、究極魔法を行使する。

「…………【影の執行者サタナエル】!」

 今までの影の軍勢を出す魔法とは違い、これは一人の強力な死神を出現させる魔法だ。
 その力は術者であるリーシャを上回るほどである。

 それがランドロフの能力により、十体も出現している。

「君たちぃ! あの神獣を仕留めろぉ!」

 リーシャの命令のもと、死神たちは突進してきている神獣に向かって突進し始めた。
 双方は激しい音をたてて両突する。

「……………くッ!」
「「「……………」」」

 流石の神獣も十人の相手をするのは骨が鳴るだろう。
 その様子を見て四人は少し安堵の息を漏らしそうになる。だが、漏らせない。

「…………【獣化】」

 死神が囲っていた中心から眩い光が溢れ出る。
 その様子を見てランドロフが表情をひきつらせた。俺もそれは同様だ。

 俺もこの魔法は見たことがある。ランドロフが巨大な化け狐になったのだ。
 確かあれはランドロフが父を亡くしたショックで酒を飲み、酔っ払って暴れた時のこと。
 
『通常時では僕には発動できない。何かの感情のトリガーが必要なんだと思う』

 あの時のランドロフを止めるのに準魔王級が二十人も必要だった。
 それほどその【獣化】の魔法は強力なのである。

「…………おらよっ!」

 金色の短髪は長髪に変わり、細身だった容姿も筋骨隆々になった。
 ただ見た目が変わっただけではない。魔力が何十倍にも増幅している。

「うそぉ…………」

 先ほどまで自信ありげだったリーシャの表情が青白く染まった。
 一瞬で十人の執行者が消されたのである。

「はぁ。危ない。舐めてたら普通にあぶねぇな…………もう計画に移行するか」
「…………計画?」

 その計画という言葉に俺は寒気を覚える。
 神獣がそれほど大事にしている計画だ。とてつもない計画なのだろう。
 そう思って矢先、

「【強制人形操作マリオネットリーション】!」

 先ほどの幹部たちに行使した【人形操作マリオネーション】とは比べ物にならないほどの歪な鎖が発現した。
 その鎖の数は空中で何千、何万にも分裂する。

「これはまさか…………」

 ここでやっとこの魔法の意味を理解した。
 俺と同じようにキールもリーシャも理解したのか同じように表情をひきつらせる。

「そうだ。これは世界中の獣人を強制的に操る魔法だ。まぁ何百年分の魔力を消費するからまぁ最期の一手だよ」
「そんなことしたら世界が滅びるじゃないか!」

 キールが神獣に向かってそう吠えた。
 それもそうだ。数百万の獣人が操られ暴挙の限りに行動すれば、この星の方が耐えられなくなってしまう。

 すると、神獣は少し歪な笑みを浮かべて言ったのだった。

「こんな世界、滅びたらいいんだよ。だいたいこういうのって悪者が負けるけど、たまにはテンプレ、、、、をぶち壊す悪者がいてもいいだろ?」
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