【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー～今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い～

兄との再会

「ごめん。ちょっと衝動的に動いちゃった」

　俺は騎乗位になるようにして兄に飛びついてしまった。
　俺はその子供のような行動に恥ずかしくなり、少し頭をかきながら元の席に座る。

　しかし、何故だろうか。
　隣にいたエリスが少しよだれを見せながら俺たちを見ていた。
　何か美味しいものでもあったのだろうか。

「ん？　ああ、大丈夫ですよ。最初はちょっと驚いちゃったけど…………ってか君の兄と僕って似てるんですか？」
「あ…………そうか」

　どうやら、兄はまだ俺がアレンだと気づいていないようだ。
　先ほどランドロフに魔法をかけてもらったので容姿が全く違うのだ。
　そもそも、自分の弟が魔族の格好をしているなんて気づくはずもない。

「【解除】」

　俺はランドロフにかけてもらった【偽装フェイク】を解除する。
　すると、物理的に化けの皮が剝がれたように元の姿に戻った。

「……………………は？」

　ガタンッ！

　すると、兄は驚愕を通り越してしまったのだろう。
　は、という一言だけを残して、椅子に座ったばかりにもかかわらず頭から後ろに倒れてしまう。
　そして、白目になって気絶してしまった。

「ドウイウコトデショウカ？」

　エリスは俺の様子を見て片言でそう言った。
　魔族だと思っていた奴が実は人間だった？　そりゃあ信じられるはずもない。
　それに加えて兄の場合、三年間行方不明だった弟だったら気絶してしまうのも納得がいく。

「あ、キールの弟のアレンです」
「…………あれ？　確かこいつは弟は死んじゃった可能性が高いって」
「あ～。俺、魔大陸で二年間暮らしてたんですよ」
「え、えええええええぇぇ!?　あのディルガイナで？　どゆこと!?　普通にキャンプ生活ってこと!?」
「あ、魔王城に住んでました」
「は、あっはっは。君、面白いんだね」
「ちなみに、形式上は魔王の息子ってことになってます」
「……………」

　バタッ！

　席を立って俺に迫って聞いてきたエリスだが、脳がパンクしたようで、そのままテーブルにバタッと倒れた。
　頭から煙が出ている。急に情報を出し過ぎただろうか。

　だが、俺はこの時確証を得ていた。この人たちが悪者ではないとい確証を。
　あのキール兄が主と呼ぶのだ。勇者パーティーもまともなパーティーなのだろう。
　ということは信頼にあたる人物たちということだ。

　すると、倒れていた兄がむくりと起き上がり、俺に少し疑いの目を向けてくる。

「なぁ…………君のその化け物の力で僕の心を読んでアレンになったとかいうことないよな？」
「うん。俺は正真正銘のアレンだよ！」
「じゃあ母さんの料理は？」
「クソまずい」

　俺が兄に駆けられた謎の質問に病で答えると、兄は疑いの目を止めた。
　そして、

「…………うわあああああぁぁ！　アレン！　生きてたのかぁ！」

　先ほどとの俺と同じように兄は飛びつくように抱き着いてきた。
　俺も先ほど止まったばかりの涙腺を決壊させて兄を抱きしめる。

　こうして俺たちは草原に二人、三年間という狭間を少しでも埋めるように兄弟の時間を過ごしたのだった。





「いつまで抱き着いてるんですか。まぁ眼福ですけど」
「「……………………」」

　十分ぐらい経っただろうか。自分から離れるのもなんだと思った。
　そのため、兄が離れるまで同じ体制でいた俺だが、兄もなかなか話そうとしてくれなかったのだ。

　そんな俺たちを近くでにやけたエリスがじろじろと見ていた。
　俺たちはそのエリスの言葉で少し落ち着きを取り戻し、先ほどの椅子に座る。

「それで、なんでアレンが魔族の格好なんかしてたんだ？　ってか三年間どこで何してた？」

　兄は平常心を装っているが、今にでも泣き出しそうな目をしている。
　そのため、俺は大事なことだけ簡潔に言うことにした。

「えっと……まず魔王の息子になって」
「「…………？」」

「配下が二万ちょっと増えて」
「「…………は？」」

「それと彼女が出来て」
「…………はああああぁぁぁ!?」

　こうして俺は二人に向かってこの三年間の日常の話を日が暮れるまでしたのだった。