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油揚げ
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俺はあの幼い双子に連れられてこの集落に入った。
まぁ当然、最初は冷たい視線や避けられるようなことは俺も覚悟していたのだが、
「あ、人間がいるよ!」
「珍しいわねぇ。お茶でも飲んでいくかい?」
「ねぇねぇ! 外の話教えてよ!」
流石の俺でもこれは警戒が甘すぎるのでは? と思ってしまうほど獣人の皆さんは優しく接してくれたのだ。
まぁそれは一部に過ぎない。この集落で人間に気を許す人など一割にも満たないだろう。
ということで、俺は考えました!
その名も! 『餌付け作戦』!
前に一度、ランドロフがよだれをたらしかけて見ていた物を俺はしっかりと覚えていた。
そう。油揚げだ。
あの時はランドロフは未知のものに少し恐れて食べようとしなかった。
だが、種族としての本能が働いたため美味しそうに見えたのだろう。
ということで俺はサウザンドまで【テレポート】を行使して、材料を買ってきた。
あ、これ俺の自腹ですから。俺の評価上げてくれてもいいですよ?
別に売っている油揚げを買ってもよかったものの、作り方さえ知っておけばこれからも作れる。
ということで! 初めてみましょう! 三分クッキング!
当然三分以上かかるが、それは言わないお約束。
「まず、水切りした木綿豆腐を小さく切っていきます」
俺は【インベントリ】からテーブルを取り出して、路上で調理を始めた。
すると、やはり本能には抗えないのだろう。
「「「……………………」」」
興味津々の雰囲気を漂わせた獣人たちがこちらを観察し始めた。
そして、最初から優しくしてくれた人たちは俺の目の前で観察し始める。
「次に中温程度の油にじっくり揚げていきます。あ、炎とフライパン、どうしようか……………………」
別にマッチを出せばいいのだが、俺はわざとらしくそう口にする。
すると、隣で見ていた双子と先ほどまで近くで見ていた獣人のおじさんが、
「どうぞ。こんなんでいいなら使ってくれ」
「「【ファイア】なのです」」
俺はおじさんからフライパンを借りて、双子が手から火を放ち、フライパンの下に敷いている木に火をつけた。
うん。この息ピッタリさも可愛すぎて昇天しそうです。
絶対に最初にこの双子とおじさんに食べさせてあげようと俺は心の中で誓う。
グツグツグツ
「そして、色づいてきたらひっくり返して…………」
ここまでくれば俺の勝ちだ。
俺のことを警戒していた獣人たちまで他の獣人につられて近づいてきている。
「これで、キッチンペーパーに乗せて油を吸わせて……………………完成です!」
俺は完成させた百個ほどの油揚げをテーブルに並べた。
その匂いにつられて俺の周りは獣人たちに囲まれてしまう。
「「……………………ジュルリ」」
「どうぞ。食べていいよ!」
俺は隣でよだれを垂らしていた双子に一つずつ油揚げを差し出す。
すると、目にも止まらぬ速さで大きな口を開け一瞬で口の中に入れた。
「「「……………………」」」
その様子を周りの獣人たちが息をのんで観察している。
そしてその静寂の均衡を破るように二人は目に涙を浮かべながら、
「「美味しすぎやしませんか! です!」」
俺はその双子を見て心の中でガッツポーズをする。
その表情を見た獣人はすぐに俺に許可を求めようとしてきた。
「ねぇ。私も食べてもいいかしら?」
「なぁ坊主! これ、俺にも食べさせてくれよ!」
「うわぁ! これ美味しすぎるんですけど! こんなものを作れる奴は人間であろうと良い奴だ!」
俺は最初に優しくしてくれた人優先で油揚げを配る。
そうなるとどうなるか?
そう。怖くて近づいてこなかった人たちもこちらに寄ってくるのだ。
そして、今に至る。
「あ、ラン君も食べる?」
俺がそう言ってランドロフに差し出すと、周りはざわざわし始めた。
「ラン君だって? 族長あそこまで仲いいとはやはりいい人間なのか」
「族長が信頼してるなら俺らも信頼できるよねぇ~」
「初めて人間っていい種族だって知ったよ」
ランドロフはそんな想像もしてなかった光景を見て唖然としている。
しかし、勝手に手は伸び始め、油揚げをとり、大きな口を開けて食べた。
そして、
「……………………族長命令だ! 油揚げの作り方をアレンに教えてもらいなさい!」
「「「「おおおおおおおおおぉぉぉ!」」」」
周りにいた獣人たちは笑顔で吠え始めた。
俺もついその様子を見て笑みがこぼれてしまう。
やはり、どんな過去があろうと、どんな因縁があろうと、絶対に仲良くなれないことなどありえないのだ。
どんな種族でも手を握りあえる。笑いあえる。
「今からもう一回作りますよ!」
俺はそれを改めて感じたのだった。
まぁ当然、最初は冷たい視線や避けられるようなことは俺も覚悟していたのだが、
「あ、人間がいるよ!」
「珍しいわねぇ。お茶でも飲んでいくかい?」
「ねぇねぇ! 外の話教えてよ!」
流石の俺でもこれは警戒が甘すぎるのでは? と思ってしまうほど獣人の皆さんは優しく接してくれたのだ。
まぁそれは一部に過ぎない。この集落で人間に気を許す人など一割にも満たないだろう。
ということで、俺は考えました!
その名も! 『餌付け作戦』!
前に一度、ランドロフがよだれをたらしかけて見ていた物を俺はしっかりと覚えていた。
そう。油揚げだ。
あの時はランドロフは未知のものに少し恐れて食べようとしなかった。
だが、種族としての本能が働いたため美味しそうに見えたのだろう。
ということで俺はサウザンドまで【テレポート】を行使して、材料を買ってきた。
あ、これ俺の自腹ですから。俺の評価上げてくれてもいいですよ?
別に売っている油揚げを買ってもよかったものの、作り方さえ知っておけばこれからも作れる。
ということで! 初めてみましょう! 三分クッキング!
当然三分以上かかるが、それは言わないお約束。
「まず、水切りした木綿豆腐を小さく切っていきます」
俺は【インベントリ】からテーブルを取り出して、路上で調理を始めた。
すると、やはり本能には抗えないのだろう。
「「「……………………」」」
興味津々の雰囲気を漂わせた獣人たちがこちらを観察し始めた。
そして、最初から優しくしてくれた人たちは俺の目の前で観察し始める。
「次に中温程度の油にじっくり揚げていきます。あ、炎とフライパン、どうしようか……………………」
別にマッチを出せばいいのだが、俺はわざとらしくそう口にする。
すると、隣で見ていた双子と先ほどまで近くで見ていた獣人のおじさんが、
「どうぞ。こんなんでいいなら使ってくれ」
「「【ファイア】なのです」」
俺はおじさんからフライパンを借りて、双子が手から火を放ち、フライパンの下に敷いている木に火をつけた。
うん。この息ピッタリさも可愛すぎて昇天しそうです。
絶対に最初にこの双子とおじさんに食べさせてあげようと俺は心の中で誓う。
グツグツグツ
「そして、色づいてきたらひっくり返して…………」
ここまでくれば俺の勝ちだ。
俺のことを警戒していた獣人たちまで他の獣人につられて近づいてきている。
「これで、キッチンペーパーに乗せて油を吸わせて……………………完成です!」
俺は完成させた百個ほどの油揚げをテーブルに並べた。
その匂いにつられて俺の周りは獣人たちに囲まれてしまう。
「「……………………ジュルリ」」
「どうぞ。食べていいよ!」
俺は隣でよだれを垂らしていた双子に一つずつ油揚げを差し出す。
すると、目にも止まらぬ速さで大きな口を開け一瞬で口の中に入れた。
「「「……………………」」」
その様子を周りの獣人たちが息をのんで観察している。
そしてその静寂の均衡を破るように二人は目に涙を浮かべながら、
「「美味しすぎやしませんか! です!」」
俺はその双子を見て心の中でガッツポーズをする。
その表情を見た獣人はすぐに俺に許可を求めようとしてきた。
「ねぇ。私も食べてもいいかしら?」
「なぁ坊主! これ、俺にも食べさせてくれよ!」
「うわぁ! これ美味しすぎるんですけど! こんなものを作れる奴は人間であろうと良い奴だ!」
俺は最初に優しくしてくれた人優先で油揚げを配る。
そうなるとどうなるか?
そう。怖くて近づいてこなかった人たちもこちらに寄ってくるのだ。
そして、今に至る。
「あ、ラン君も食べる?」
俺がそう言ってランドロフに差し出すと、周りはざわざわし始めた。
「ラン君だって? 族長あそこまで仲いいとはやはりいい人間なのか」
「族長が信頼してるなら俺らも信頼できるよねぇ~」
「初めて人間っていい種族だって知ったよ」
ランドロフはそんな想像もしてなかった光景を見て唖然としている。
しかし、勝手に手は伸び始め、油揚げをとり、大きな口を開けて食べた。
そして、
「……………………族長命令だ! 油揚げの作り方をアレンに教えてもらいなさい!」
「「「「おおおおおおおおおぉぉぉ!」」」」
周りにいた獣人たちは笑顔で吠え始めた。
俺もついその様子を見て笑みがこぼれてしまう。
やはり、どんな過去があろうと、どんな因縁があろうと、絶対に仲良くなれないことなどありえないのだ。
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