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おじいちゃん

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 あの後、俺たちは冒険者カードの記入を手短に済ませ、祖父に連れられて人気のない路地裏に来た。
 そして、冒険者カードには何故かテイマーではなく魔術者メイジと書くように祖父に命令されたのた。

「おじいちゃんはなんでこんなところに? てっきり一族全体で引っ越ししたのかとともってたよ」

 俺とランドロフは路地裏の石段に腰をかけ目の前に見える祖父に向かって言う。
 すると、祖父は一瞬ハッとした表情になったが、すぐにいつもの優しそうな表情に戻った。
 そして、その口から重い言葉を放つ。

「…………わしとキール、そして予測だがリンクしかもう一族は生きておらん」
「……………………そうなんだ」
「…………え? そこって驚く場面だよね? アレンは特に反応が大きいほうなのに」

 そんな唐突な言葉に俺は特に驚くことなく答えた。
 その光景にランドロフはいつものようなスカした表情ではなく、心の底から驚いたような表情を見せる。

 昨日、一族が住んでいた場所に何もなかった。
 それを俺は引っ越しと例え、今も祖父にそう聞いたが、それは絶対にありえない。
 
 あの場所には絶対的な守護獣が祭られているのだ。
 その守護獣の力は何度も言うが絶対的。大のリアリスト性格の現族長があの土地を手放すわけがない。
 そう思った俺は守護獣の祠が祭られている族長の間があった場所を確認しておいた。
 まぁ俺の最後の期待を裏切るように、祠は粉砕され跡形もなかった。

 しかし、兄二人が生きていたのは少し驚いたかもしれない。
 キール兄ちゃんは絶対に生きているとは信じていた。だって何でもできて、誰からの期待も裏切らない勇者のような兄だから。
 だが、リンク兄は違う。自分の非は全て誰かに押し付け、弱いものは積極的に虐める。
 一番最初に死ぬと思っていたのだが、ゴブくんがあそこで逃がしたことが逆に功を奏したか。

 まぁ俺は、キール兄ちゃんが生きてくれただけでも嬉しい。
 そして、唯一、キール兄ちゃんと一緒に俺の味方をしてくれた祖父も。

 すると、祖父は俺の反応を予想していたのか、話を続けた。

「君がアレンの隣にいるということはアレンはこの混乱の主導者は知っているのかい?」
「…………なッ! お前! 何者だ!」

 ランドロフはその祖父の言葉に目を見開いて驚き、一瞬で跳躍して距離をとる。
 そして、長剣の鞘に手をかけて、声を荒げながら聞いた。

 それはそうだろう。【偽装フェイク】の魔法を見破ったということになるのだから。
 すると、祖父はランドロフをなだめるように口を開く。

「ずっとわしはアレンのことを観察しておいたからの。ほれ、戻っておいで」
「……………………うわッ!」

 俺の頭上で何かがごぞごぞと動き、少しずつ肥大化しながら祖父の手のひらに飛んでいった。
 それはまるでテントウムシの巨大バンのような容姿である。

「これはわしの契約虫『ブラッドダニ』。君たちのことはずっと観察させてもらっとったわい」
「…………え? もしかして俺が一族を追放された時から?」
「そうじゃ。魔王様と会合した時はこいつ越しじゃったがちびりそうになったわい」

 まるで昔のことを思いだすかのように祖父は語る。
 その様子を見て、殺意丸出しだったランドロフも少し落ち着きを取り戻してきた。

「あのリーシャとかいう小娘も怖かったのう。すんごい睨んできよったわい。魔王様が説明しなければこいつは死んでおっただろう」
「…………アハハ」

 俺はその祖父の言葉に苦笑いする。
 あのリーシャのことだ。独占欲が強いため、自分以外の輩が俺の血を吸っていたとなると激怒するだろう。

 サルバディの時ですら【誘惑テンプラー】の痕跡を見つけ、反省と称し、俺の血を限界まで吸ってきたのだ。
 まぁ血を吸われるのは何か効果があるのか、痛いとかは全くなく逆に少し心地よい時もある。

 祖父は俺の方をじろじろと見つめ、近づいてきた。
 そして、

「ちょっとわかりづらいから解除させてもらうぞ。【解除】」

 祖父が俺に向けて手をかざして魔法を行使する。
 すると、仮初の容姿からは一転、今までのアレンの姿に元通りに。

「ランドロフさんはアレンがテイマーだとバレるのを恐れて【偽装《フェイク》】をかけてくれたんじゃろうが、大丈夫。アレンを知っている人間はそうおらん」
「…………え? テイマーってバレたらだめなの?」

 俺は予想外な理由に少し驚いてしまう。

「相手は獣人。となるとテイマーに責任を押し付ける輩がいるんじゃよ。アレンがいなくなったこの二年間のことをまずは説明しようかのう。そして兄弟たちのことも…………」

 祖父は少し悲しげな、しかし後悔はしていないような表情で言ったのだった。
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