【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

文字の大きさ
上 下
83 / 142

始まり

しおりを挟む
「父さんに話せばすぐに解決してくれるんじゃないの?」

 正直言って俺の力を借りたいというのは俺自身ではなく、その配下の力だろう。
 その苛立ちを少しだけ含みながら俺はそう口にした。

 しかし、ランドロフは首を横に振る。

「魔王様には助力はもらえなかったんだ。自分たちだけで何とかしろとのことらしい。ということは僕たちが手を組めば何とかなるということだよ」

 どれだけ魔王に調教されたのか。
 魔王の言葉が絶対だと信じ切っているランドロフはそう確信しているように言った。

 しかし、俺は知っている。
 魔王は超人でも神でもない。ただ少し桁外れに強い魔族であるということを。

「…………そうだとしても俺は今、その頼みの綱の召喚魔法を――」
「僕は一言も召喚魔法なんて言っていない」
「……………………え?」

 俺は遮るようにしてランドロフが言った言葉に唖然と口を開いてしまう。
 そんな俺を放ってランドロフは続けて口を開く。

「僕は君の配下に興味があるわけじゃない。君自身に興味があるんだ」
「いや、俺はただの人間で…………そこらの魔族に負けるほど弱いってことを知ってもそんなこと言える?」

 普通の人なら答えにくい場面であっただろう。
 しかし、ランドロフは眉一つ動かさずに首を縦に振った。

「ああ。僕はの力が欲しい。君がテイマーでなくとも僕は君に助力を願っていただろう」
「……………………それには理由があるの?」

 少し期待するように俺はランドロフに聞いた。

 いつぶりだろうか。俺がテイマー以外で認められていることは。

 正直、昔はテイマーとして認められたかった。最強のテイマーに憧れた。
 でも、配下が二万にも及ぶようになると、そんな目標はいつの間にか無くなっていた。
 伝説の龍を従えていた? 普通にドラの方が強いだろう。

 だから、心の底では望んでいたのかもしれない。
 俺自身を肯定してくれる何かに出会えることを。

 当然配下が称賛されるのも、認められるのも主にとっては喜ばしいことだ。
 配下たちはそのため必死に俺に忠義を認めてもらおうとする。

 だからって俺が評価されるわけではない。
 その配下が評価されるのだ。
 それは当たり前のことである。

 なのにもかかわらず、本当の俺はそんな現状に嫉妬なんてしてしまうテイマーとして最低な人間である。

 だが、そんな俺の思考を一瞬で拭うようにランドロフは口を開いた。

「あるよ。僕は君のカリスマ性が欲しい。種族の巨大な壁を分け隔てなく影響させるそのカリスマ性が。もしかしたら君は無自覚かもしれない。本当にその素質は素晴らしいことだと自分を認めるべきだ」

 ランドロフの淡々と言っている言葉を俺は真顔のまま聞き終えた。

 ランドロフこそ気づいていないのだろう。
 俺がどれだけその言葉を聞いて嬉しがっているのか。

 俺は認められたいから旅に出た。誰かに見捨てられたくないから強くなろうと思った。

 人が救いたいから。誰かを守れる人になりたいから。
 そんな勇者のような考え方を俺は持ち合わせていない。

 それを俺はダメなことだと思っていた。悪いことだと思っていた。

 しかし、そんな俺をランドロフは今、認めていると言ってくれのだ。
 そして、自分自身を認めろとも。

「是非、君さえよければその力を僕に少しだけ貸してくれないか? もし、僕が期待外れな行動をしたらすぐに僕を殺そうとしてもかまわない。だから僕は君の期待を裏切らないように努力するつもりだ」
「…………分かった。俺も全身全霊で力を貸すよ」

 そのランドロフの熱心な説得に俺はゆっくりと首を縦に振る。
 そして、俺はしっかりとランドロフの手を握った。

「改めてこれから頼むよ。アレン」
「うん。こちらこそ。ラン君」
「……………………」

 これが俺の弱いところであるのは理解しているつもりだ。
 ゴブくんによく忠告されていた。俺はすぐに心を開き過ぎだと。いつか酷い目に遭うと。
 だが、何事でもどちらかが折れなければ始まらない。いがみ合ったって何も進まないのだ。
 だからいつも俺は先に折れる。自分の感情を押し殺して心を開く。

 それがランドロフの言うカリスマ性なのかもしれない。

 俺はそんなことを思いながら次の五大国へ進むために何もない荒れ地とかした大陸を走り始めた。

 こうして、俺は人族、魔族、魔獣、獣人の全種族の『特異点セントラル』になる。
 その結果、その名の通り俺が中心となり、全ての種族を巻き込む大戦争に一歩足を踏み込んだのだった。
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...