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ニンゲンの現状

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「なんだよ…………これ」
「……………………」

 俺は跡形もない国を見てそんな言葉を漏らしてしまった。
 ランドロフはただ沈黙して、瓦礫と死体が積まれている光景を見続けている。

 今、俺たちが来ている場所はオースガイアにある五大国のうちの一国『アレクドリア』。
 アレクドリアは俺が暮らしていたテイマー一族から一番近い国であり、五大国の中で一番農業が栄えている国であった。
 そのため、火の移りも早かったのだろう。

 国全体が焼けており、家々は全て崩され、そして、その瓦礫の頂上。王城の屋根の先には王であろう死体が突き刺さっていた。
 そして、その下の城下町には直視することも辛くなるほどの死体と異臭で溢れかえっている。

「なんでこんなことに…………」
「…………僕とは別の幹部がやったんだろうね。どうやら成功しているようだ」
「…………は? 成功? 何言ってんの?」

 俺はランドロフの胸ぐらを掴んで至近距離で淡々と言った。
 すると、ランドロフは俺から視線を逸らし、地面を見ながら言う。

「僕だってこんなことにするつもりはなかったし、そこまで人間に憎悪なんてなかった…………だけど、僕みたいに神獣に操られている獣人が多いからこうなってるんだ」

 ランドロフは少し難しそうな表情をしていた。
 それは魔王から聞いている。ランドロフみたいに個人操作ではなく、自分の憎悪の感情を増幅させられ、狂人と化すらしい。

 だが、何故人間がこんな目に遭わなければならないのだろうか。
 別に、そこまで人間に情があるわけじゃない。
 そもそも、俺はテイマー一族の人間以外に出会ったことがないのだから。
 いわば、俺にとっては魔族の方が家族に適しているはず。

 そのため、俺もこの一年をオースガイアで過ごせばあとは魔族の皆とディルガイナで楽しく過ごすつもりだった。
 だが、こんな状況を見たら俺だって憎悪が心の底から溢れかえってしまいそうになる。

 俺はランドロフの胸ぐらを握ったまま、怒りをぶつけるように吠えた。

「なんでだよ! 俺たち人間が何したって言うんだ! なんでこんなことされなきゃ――」
「…………本当にすまない」

 ランドロフは俺の言葉を遮りながら本心から搾り取るような声を出して謝ってくる。
 俺はその態度を見て、突き放すように掴んでいた胸ぐらを放した。

 俺だって分かっている。ランドロフを攻める理由にはならないことだって。
 でも、何万人もの死体を見ると、すぐに枷が外れてしまう。

 すると、ランドロフは少し笑みを浮かべながら俺に提案をしてきた。

「僕はこれから獣人全体を正すつもりだ。そして、僕が長の座に就く。そうなった暁には君たち魔族、人族、魔獣全てに敵対しないことを誓おう」

 それはまるで絶対に可能であるかのような確信を持った目である。
 どこからそんな自信が湧いてくるのやら。
 魔王がいなければ今でもその神獣に操られていたという可能性があるのに。

「そのためには力が必要なんだ」

 先ほど、魔王とランドロフが目配せしていたことはこれだったのだろう。
 ランドロフはゆっくりと俺の前に手を差し伸べてきた。
 そして、覚悟を持った目を俺に向けながら言う。

「アレン。君の力を僕に貸してくれ」

********************

本当に申し訳ございません。
明日から一日に1話の更新になります。

そして、それの代わりと言ってはなんですが新作を投稿しました!
初めての三人称なので拙い部分も多いと思いますが、1話だけでいいので是非、読んでいただけると嬉しいです!
まぁまだ1話しか更新してないんですが😅

「転生魔王の学院生活~仕方なく死んだ魔王は子孫たちの世界で無自覚に無双します~」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/140962851/447473173
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