【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

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テイマーの本質

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「これでいっか……………………【テレポート】」

 俺は殴り書きのような文字で書かれた一枚の紙を、魔王城のリビングにある巨大なテーブルの中心に置いた。
 誰も俺のことを見ていないか周りを一度確認してから魔法を行使する。
 そして、俺の視界から色が失われ、真っ黒に染まった。




「……………………あれ?」

 俺はある場所に転移したつもりだった。
 しかし、俺が想定した場所とは全く違うその光景に俺は唖然としてしまう。

「ここで合ってるはずなんだけど……………………」
「そうだ。ここがアレンの一族が暮らしていた場所であってる」

 俺が首を傾げ独り言のように言うと、その言葉に反応するように聞き覚えのある言葉が聞こえた。
 俺はゆっくりとその言葉の主の方を向いて、溜息を吐いた。

「はぁ。なんで父さんがここにいるわけ?」

 すると、魔王は少し悲しげな表情をして言い返す。

「それはこっちのセリフだ。まだ十四歳のくせに反抗期は早いぞ?」
「べ、別に……反抗期じゃないよ」

 俺は目線を魔王から逸らしそう言い捨てるように言った。

 俺がここに来た目的はここにいるはずであった元族長に会うためだ。
 絶対にその人に会わないといけない。会わないと俺はこれから前に進めない。

 しかし、引っ越しでもしたのだろうか。
 残っていたのはただの荒れ地だった。

「グレー君から聞いたけど女の子にボコボコにされたんだって? まぁでも、学生が【魔法封鎖アンチマジック】を使うなんて俺でも驚いた。それは負けてもしょうがない」

 俺を慰めるように魔王はそう口にする。
 しかし、その言葉は今の俺にとって逆効果でしかない。
 反抗期ならもっと反抗しているだろう。

 まぁ俺を拾ってくれた魔王に反抗する日が来るなんてことはありえないと思うが。

 そんなことを考えていると、魔王はこの荒れ地に視線を送ったまま真面目なトーンで俺に聞いてくる。

「単刀直入に聞こう。アレン……………………お前は何年家出するつもりだ?」
「……………………一年かな」

 俺は少しだけ考えてそう口にした。

 もちろん、学校には一年間の休校届は出している。
 そして、先輩たちにもそれは報告済みだ。

 報告するともっと驚くかと思っていたが、三人とも特に驚いた様子なく、俺に頑張って来いとだけ告げて通常運転に戻った。
 それはもともと予想していたのか。それともただ単に魔族と人間の時間の感覚が違うのか。
 それは分からないし、特に理解しようと思っていない。

「…………【転送】」

 俺が答えると魔王も特に驚いた様子なく、魔法を行使した。
 すると、二つの魔法陣が形成され、そこから狐の魔獣のような人と、ドラが出てくる。

「アレン様! 勝手に何処に行くつもりなんですか!」

 ドラはいつもの表情とは違い、寂しそうな表情をして言った。
 俺はその変わりように苦笑いしながら口を開く。

「ちょっとテイマーについてもう一回学ぼうかと思ってね。たったの一年だから。そんな表情しなくても大丈夫だよ」

 俺がそう言うとドラは自分の顔をぺたぺたと触って急に青ざめた。
 自分がそんな寂しそうな表情をしているなんて思ってもいなかったのだろう。

「ってかゴブくんは? あいつならすぐに来そうなのに」

 あのドラが来たのだ。
 今日は夜遅くまで仕事があるリーシャとは違い、何もないゴブくんはすぐに俺のところへ駆け付けてくるかもとは思っていた。
 だが、それは自意識過剰だったのかもしれない。

 すると、ドラは少し苦笑いをしながら言った。

「アレン様に負けないようにでかい事・・・・に挑戦し始めたらしいです。だからアレン様の見送りに行く暇などないって…………あ、でも伝言は預かってます。『帰ってきたときに僕を見て驚かないレベルには成長してきてくださいね』だそうだで…………」
「へぇ。あのゴブくんが…………」

 あのいつもネガティブ思考のゴブくんが期待しておけと言っているのだ。
 俺には想像もできないようなことをしているのだろう。
 少し帰るときの楽しみが出来てしまった。

「あ、俺からも最後に言っておきたいことが…………」

 ドラは少し顔を赤くし、俺と視線を合わせようとせず、照れながらそう口にした。

 あのドラがそんなことを言ってくれるなんて明日は雪でも降るのだろうか?
 ちなみに今は三月なのでその可能性はほぼゼロだが、

 俺が少し期待しながらドラが口を開けるのを待っていると、その隣で魔王が笑っているのが見える。

「……………………ブッ!」

 何故笑っているのだろうか。そう思った時にはドラが口を開いていた。

「…………美味しそうなプリンがあれば買って来てもらえると助かりゅます」
「…………え? ……………………あっはっはっは!」

 ドラは敬語で、しかも小声の超早口でそう言った。そして最後には噛んでしっている。
 俺はその発言に一瞬驚いたいが、心の底から笑えてしまい、腹筋が崩壊するのを防ぐために押さえながら大声で笑った。
 ドラは一世一代の恥ずかしそうな顔を隠すように両手で顔を押さえている。

 やっぱり一人じゃないっていいな。

 同時に改めでそう思ったのだった。
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