【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

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最後の笑み

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「よろしくお願いします!」
「…………うす」

 俺と豚頭族オークは互いに頭を下げて挨拶をした。

 豚頭族オークの距離は数百メートルある。
 辺りを見渡すとまるで訓練場のように何もなく、あるのは円状の闘技場のようなものだ。
 いつも訓練場やランキング戦で使っている場所と同じで落ちたら負け、殺されたら負けというルールだろう。

『個人戦を始めます……………………レディーファイト!』

 アナウンスの音声が二人しかいない訓練場に響き渡った。
 そして、ゴングが鳴った瞬間、豚頭族オークは俺に向かって突進し始める。

「オオオオオオォォ!」
「……………………」

 豚頭族オークはその巨体を生かし、タックルするようにこちらに向かって来ている。
 しかし、俺はただその場に居続ける。

 今までなら召喚魔法でさっさと終わらすことが出来たものの、個人戦では召喚魔法は禁じられている。
 そのため、俺自身の力で勝たなければならないのだ。

「オラアアアァァ!」

 豚頭族オークとの距離も残り数メートル。
 このままなら吹っ飛ばされて場外ホームランになるだろう。

 俺はギリギリまで豚頭族オークを引きつけ…………

「…………【転送】!」
「……………………なッ!」

 俺は目の前まで豚頭族オークを引きつけると、俺に触れる寸前で手を伸ばし、豚頭族オークを場外へ【転送】させた。

 【転送】は手に触れるか、触れるギリギリの距離でないと発動できない。
 なので、豚頭族オークを引きつけなければならなかったのだ。

「クソオオオォォ!」

 場外の上空に【転送】させられた豚頭族オークは足をじたばたさせながら俺に向かって吠えている。
 正直言って、豚頭族オークに目は俺を完全に殺そうとしている目なので合わせたくない。
 まぁ俺もそんなことされたらキレるだろうが。

 生徒の魔族の中では羽があり、飛べるものが多い。
 なので、空間魔法系統はあまり使えないと思っていたのだが、今回は運が良かったようだ。

 このまま放置しておけばそのまま自由落下で場外に落ちるだろう。
 だが、念には念だ。

「…………【テレポート】!」 
「おい、やめ…………うッ!」

 俺は豚頭族オークの頭上に転移し、焦ってジタバタしている豚頭族オークの背中に右足を刺すようにして蹴りをいれた。
 これは何度もグレーのコンボを食らっていた時に身をもって体験しているので、相当痛いのは理解できる。

 ドガンッ!

 大きな砂埃と地響きとともに豚頭族オークは場外の地面に顔から衝突した。
 そして、すぐに豚頭族オークの体に眩い癒しの光がかけられる。

『勝者! Xクラスのアレン!』
「……よっしゃぁ!」

 すると、アナウンスの声がすぐさま響き渡った。
 俺はガッツポーズをして一人叫ぶ。

 豚頭族オークはその声で起きたのかゆっくりとその場から立ち上がり、こちらを向いて一言、

「次は俺が勝つ」

 少し怒っているような表情で口にし、俺の目の前から消えた。
 豚頭族オークが倒れていた場所は人型がぼっこりと出来ている。 

 そして、俺の視界も真っ暗に染まった。



「うわッ! 何これ!?」

 ブースに帰るとタブレットに何十個もの対戦申請が来ていた。
 それもどれも俺より上のランキング持ちである。

『すごかったねアレン! 個人戦会場がとても盛り上がっているわよ!』
「…………はい!? どういうことですか! サテラ先輩!」

 急にサテラ先輩から来る【念話リークス】に一瞬驚いたものの、その内容の方が衝撃でそのことに反応することなど忘れていた。

『さっきの豚頭族オークとの試合。会場の特大モニターで生配信されていたのよ。だから今頃たくさんの申請が来ているんじゃないかしら』
「……………………その通りです」

 俺は少しうなだれるように、しかし、内心抑えきれない喜びを隠しながらそう言う。
 もし、対面していたら『どうしたの変な顔して』なんて言われていただろう。

『まぁグレーは優しいからあんなこと言ったんだと思うよ? だから気にしない方がいいわ。今は気にするなら自分のことをした方がいいわよ』

 ブツッ

 サテラはそう言い捨てて【念話リークス】を遮断した。

「……………………よっしゃ」

 俺はもう一度、小声で一人、ガッツポーズをしながらそう口にする。
 サテラは俺の心配をしてくれていたようだが、それは不要だろう。

 俺はあの、南北戦争の一端の活躍者なのだ。
 そこらの学生に負ける気がしない。

 ってか普通、こんな状況でわざわざ心配なんてするのか?
 流石にグレーみたいに一桁を相手するのは無理だが、サテラぐらいの実力、二桁の相手は多分できる気がしている。

「よし! 今日はひたすらランキングを上げるぞ!」

 俺はそう口にしながらタブレットに再び触れた。
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