【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー～今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い～

魔王の正体

　僕の意識が覚醒した時には目の前は地獄だった。

「あのな？　俺はこの世界を平和にすれば、元の世界に生きた状態で戻してくれるっていう契約でここに来てんだ。まぁ異世界転生って奴だな」
「……………………は？」

　僕は全く理解できない内容に変な声を出してしまった。
　しかし、そんな僕を放って魔王は話を続ける。

「最初はマジで詰んだと思ったわ。だってあの残虐の魔王に転生してんだ…………でもな、今考えたらそれもよかったんだって思ってるんだよ。大切な妻に、頼りになる配下たち、そして守るべき国民。今では化け物の息子もいるな…………まぁ陰キャ高校生の俺からしたらすげぇプレッシャーなんだけども」

　急に長々と語りだした魔王に僕は本当に頭が破裂しそうになる。
　なので、僕は一度止めようとするも、

「ちょっと待って。何を言ってるのか分からな――」
「だけどな。今頃お前たちがしゃしゃり出やがったろ？　妻を二十年も奪って利用して……………………やっぱり世間的にお前らはこう言うんだろうな。『悪者・・』って」　
「……………………ッ！」

　僕の言葉を遮るように魔王はそう口にする。
　そして、その悪者・・というフレーズが笑顔で言っているはずなのに今までで一番、殺気が込められていた。
　そのため、僕は一瞬、たじろいでしまう。

　しかし、そんな僕の反応も気にせず、魔王は頭をかきながらゆっくりと口を開いた。

「いやぁ。困るんだよな。お前みたいな奴らが俺の平穏な生活をぶち壊すの」
「……………………ひッ！」

　僕はその口を開いただけで僕の命を一瞬で刈り取るような殺気に怯えたような声を出してしまった。

（なんで!?　なんでだ!?　こいつと僕は同じ実力のはずなのに！）

　同じ魔王級のはずなのに、二人の間には絶対的な力の差があるのが分かる。

「まぁな？　俺はお前ら『獣人・・』のことを一瞬で潰すことぐらい可能なんだ」
「…………なッ！　なんでそのことを知ってるんだよ！」

　僕はその言葉に驚嘆としてしまう。
　そして、更に魔王は付け足すようにして口を開いた。

「お前は俺のおかげで失敗したみたいだけど。オースガイアの方は成功してるみたいだぞ？　もう五大国のうち二大国しか残ってないもんな」
「おい！　どういうことだ！　なんでそんな秘密事項知ってるんだ!?」
　
　魔王はまるですべてを知っているかのような表情をしながら僕に向けて言っている。
　それがまるで、自分の脳も見られているような感じに陥っていしまった。
　手から冷や汗が間欠泉を破裂させる勢いで流れている。

　そして、知らないうちに僕の【偽装フェイク】が解け、黄土色の毛が目だつ、狐のような獣人の姿に戻っていた。

「正直言ってお前らに悪者っぽいことされたら超困るんだ。かといって俺が潰せば意味がない……………………ってことでまず、君から更生してもらおうか」

　魔王はそう言いながら、席からゆっくりと立ち上がり、【インベントリ】に椅子を片付けた。

　ポキポキ

　そして、腕や首を鳴らしながらゆっくりとこちらに近づいてくる。

「…………は？　僕が祖国を裏切るとでも――」
「そりゃあそうだろ。お前ぐらいになれば痛覚耐性ぐらい持ってるもんな。だから拷問方法は我流でいかせてもらおう」

 魔王は僕の言葉を遮るようにそう口にした。
　すると、魔王は残虐の魔王だと一瞬で分かるような表情を浮かべ…………

　グサッ！

「あっ…………ああああああぁぁぁ！」

　魔王は僕の心臓めがけて手刀を突き刺した。

　熱い熱い熱い熱い熱い熱い！

　心臓部に急な熱が送られてくる。
　まるで、マグマをかけられているような感じだ。

「………………………」

 全力で叫んでいるつもりなのに、もう、口の感覚もないため実際は叫べていない。
 また、心臓部からの血もドバドバと流れている。

　三肢を拘束され、魔法も使うことが出来ないため抵抗も出来ず軽々と命を刈り取られる。

 僕は全身脱力し、首をガクンと落とす。
　そして、僕は意識を手の中から易々と手放してしまった。