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けめはめ波
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「二人とも! 少し時間稼げる?」
俺が離れている二人に聞こえるような大きな声で言った。
すると、二人とも辛そうな表情から一変、こちらを振り向きながら無理矢理に笑顔を作って頷く。
「はい! お任せください!」
「当たり前だろうが! 俺に任せとけ!」
先ほどまで肩で呼吸をしていたにもかかわらず、二人は声を荒げながらランドロフに向かって突進した。
あの勢いならあれほどの実力差があったとしても数分は稼げるだろう。
俺はその隙に、脳の片隅にある記憶を引きずり起こす。
あれは、俺が日課であるアニメを見ていた時だ。
どんな窮地に陥ったとしてもアニメの主人公は必殺技を使うことでその立場を逆転することが出来る。
そのことを学んだ俺は、一つのアニメの必殺技を見て、俺も使えるのではなかろうかと思ったことがあった。
「……………………あッ! あれだ!」
俺はその名を思い出すことに成功し、一人でガッツポーズをする。
そう。その必殺の名は、『けめはめ波』だ。
それは自分の手からどんな障壁も相殺し、相手に決定的な致命傷を与えることの出来る光線を出す必殺技である。
最初の頃は俺は空間魔法以外の魔法が使えないため、諦めて、一人悲しんでいたものだ。だって、必殺技なんて男のロマンだろ?
そのため、俺は諦めることが出来ず、グレードたちを配下にしたときから毎日、ひたすら試行錯誤していた。
そして、つい最近、完成したのだ。
「……………………ふぅ」
俺は一度、深呼吸をしてから全身の乱れている魔力を統制させる。
この魔法は今まで使うどの魔法よりも扱いが難しく、失敗する可能性が高い。
正直に言うと今まで一回も成功したことがない。
もし、この状況で一回でも失敗してしまえば、俺たちの負けだ。
「……………………ふぅ……はぁ」
俺は両手を広げ統制された魔力を右手と左手に集中させる。
次に、その両手を上下合わせ、花のような形を作った。
最後に、その両手を右腰に溜めるようにして引く。
そして、俺は的であるランドロフに視線を移した。
「雷の加護のもとに…………【雷鎖】!」
「風の加護のもとに…………【風鎖】!」
ラークとグレードは双方から拘束魔法をランドロフに向けて放つ。
その瞬間、ラークは空中維持をすることが出来なくなり垂直落下。グレードも同じように気力切れでうつ伏せになって地面に倒れた。
二人とも全力を尽くしてくれたのだろう。全身から血が流れており、疲弊感が見ているだけでも感じてしまいそうになる。
そして最後に死力を尽くして放った魔法は、
「ちッ! 邪魔くさいな!」
ランドロフに的中したようで、雷で出来た鎖と風で出来た鎖がランドロフの行動を封じている。
しかし、それでもちょっとずつひびが入っているように見えた。
時間をかけてしまえばすぐに抵抗されるだろう。
「……………………流石、あの二人だね」
俺はその隙を逃さないように腰を低くし、魔力を手のうちに凝縮させた。
そして、その魔力は俺の手の中で渦巻いており、一瞬でも気を抜けばその魔力は空中に雲散するだろう。
「…………はッ! 所詮子供の魔法! 限界突破している俺に効くわけがないだろ!」
俺とランドロフまでの距離は五百メートルぐらい離れている。
そこまで届かせるために今、俺はけめはめ波の構えをキープしたまま魔力を溜めに溜めまくっている。
そして、
「…………よし! いきます!」
俺の全魔力を手の中に凝縮させると、少し神々しい銀色の玉が出来た。
すると、完成した途端、聞こえていた雑音や騒音が一切聞こえなくなる。
これが集中するということなのだろう。
前方を見るとランドロフが挑戦的な表情をして待ち構えていた。
俺はその様子を見てにんまりと口角を上げ、あのアニメの主人公と同じように全魔力を放出する。
「あッはッは! どんな魔法も俺には――」
「…………【次元空間圧縮砲】!」
「……………………は、はいッ!?」
俺はその玉をランドロフに向けて押し出すようにしながら吠えた。
すると、俺の手の中から眩い光が溢れだし…………
俺が離れている二人に聞こえるような大きな声で言った。
すると、二人とも辛そうな表情から一変、こちらを振り向きながら無理矢理に笑顔を作って頷く。
「はい! お任せください!」
「当たり前だろうが! 俺に任せとけ!」
先ほどまで肩で呼吸をしていたにもかかわらず、二人は声を荒げながらランドロフに向かって突進した。
あの勢いならあれほどの実力差があったとしても数分は稼げるだろう。
俺はその隙に、脳の片隅にある記憶を引きずり起こす。
あれは、俺が日課であるアニメを見ていた時だ。
どんな窮地に陥ったとしてもアニメの主人公は必殺技を使うことでその立場を逆転することが出来る。
そのことを学んだ俺は、一つのアニメの必殺技を見て、俺も使えるのではなかろうかと思ったことがあった。
「……………………あッ! あれだ!」
俺はその名を思い出すことに成功し、一人でガッツポーズをする。
そう。その必殺の名は、『けめはめ波』だ。
それは自分の手からどんな障壁も相殺し、相手に決定的な致命傷を与えることの出来る光線を出す必殺技である。
最初の頃は俺は空間魔法以外の魔法が使えないため、諦めて、一人悲しんでいたものだ。だって、必殺技なんて男のロマンだろ?
そのため、俺は諦めることが出来ず、グレードたちを配下にしたときから毎日、ひたすら試行錯誤していた。
そして、つい最近、完成したのだ。
「……………………ふぅ」
俺は一度、深呼吸をしてから全身の乱れている魔力を統制させる。
この魔法は今まで使うどの魔法よりも扱いが難しく、失敗する可能性が高い。
正直に言うと今まで一回も成功したことがない。
もし、この状況で一回でも失敗してしまえば、俺たちの負けだ。
「……………………ふぅ……はぁ」
俺は両手を広げ統制された魔力を右手と左手に集中させる。
次に、その両手を上下合わせ、花のような形を作った。
最後に、その両手を右腰に溜めるようにして引く。
そして、俺は的であるランドロフに視線を移した。
「雷の加護のもとに…………【雷鎖】!」
「風の加護のもとに…………【風鎖】!」
ラークとグレードは双方から拘束魔法をランドロフに向けて放つ。
その瞬間、ラークは空中維持をすることが出来なくなり垂直落下。グレードも同じように気力切れでうつ伏せになって地面に倒れた。
二人とも全力を尽くしてくれたのだろう。全身から血が流れており、疲弊感が見ているだけでも感じてしまいそうになる。
そして最後に死力を尽くして放った魔法は、
「ちッ! 邪魔くさいな!」
ランドロフに的中したようで、雷で出来た鎖と風で出来た鎖がランドロフの行動を封じている。
しかし、それでもちょっとずつひびが入っているように見えた。
時間をかけてしまえばすぐに抵抗されるだろう。
「……………………流石、あの二人だね」
俺はその隙を逃さないように腰を低くし、魔力を手のうちに凝縮させた。
そして、その魔力は俺の手の中で渦巻いており、一瞬でも気を抜けばその魔力は空中に雲散するだろう。
「…………はッ! 所詮子供の魔法! 限界突破している俺に効くわけがないだろ!」
俺とランドロフまでの距離は五百メートルぐらい離れている。
そこまで届かせるために今、俺はけめはめ波の構えをキープしたまま魔力を溜めに溜めまくっている。
そして、
「…………よし! いきます!」
俺の全魔力を手の中に凝縮させると、少し神々しい銀色の玉が出来た。
すると、完成した途端、聞こえていた雑音や騒音が一切聞こえなくなる。
これが集中するということなのだろう。
前方を見るとランドロフが挑戦的な表情をして待ち構えていた。
俺はその様子を見てにんまりと口角を上げ、あのアニメの主人公と同じように全魔力を放出する。
「あッはッは! どんな魔法も俺には――」
「…………【次元空間圧縮砲】!」
「……………………は、はいッ!?」
俺はその玉をランドロフに向けて押し出すようにしながら吠えた。
すると、俺の手の中から眩い光が溢れだし…………
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