67 / 142
蹂躙の始まり
しおりを挟む
「ちッ! あのクソ魔族が! 予定が狂っちゃったじゃないか!」
「ら、ランドロフ? 何処に向かっているのかしら?」
ランドロフは魔王城の地下に転移し、螺旋階段をサルバディの腕を無理矢理ひきながら下り続けている。
ランドロフは今まで、サルバディの意志を優先し、まるで執事のように従えてきた。
そのため、この変わりようにサルバディはただただ恐怖がこみ上げてきている。
そして、螺旋階段が終了し、目の前に身長の五倍以上もある巨大な扉が現れた。
「この部屋は何なの? 今まで聞いたことのなかったのだけれど」
「…………僕が念のために作っておいた秘策です」
少し説明しようか、ためらったもののランドロフは少し表情を険しくしながら言った。
そして、ランドロフがその巨大な扉に人差し指で触れた。
すると、
ゴゴゴゴゴゴ!
「母上。目を閉じてください」
「わ、分かったわ」
巨大な扉がゆっくりと音をたてて開け始めた時、そうランドロフは忠告する。
今までなら理由を聞いてから了承する場面だが、この時のサルバディにはそんなことを聞く勇気がなかった。
そう。既に主従関係が逆転していたのだ。
「オオオオオオオオオオォォォ!」
「ギャアアアアアアアアァァ!」
「アアアアアアアアァァ!」
扉が解放された瞬間、断末魔と錯覚してしまうような雄たけびがあちこちから聞こえる。
「……………………ひッ!」
サルバディは目を閉じたままその雄たけびを聞き、膝を地につけてしまう。
その圧倒的な恐怖の目の前にランドロフは悠然と前に進んでいく。
「いいでしょう? 色んな魔族たちを薬漬けにしてるんですよ。薬さえあれば何でも言うことを聞く。そう! 僕が作ったこいつらの名は…………『狂戦士』です!」
サルバディは両手で耳まで押さえているためランドロフの声は聞こえていない。
しかし、そんなことランドロフは気にしていないようで、一人で満足げな笑みを浮かべている。
そして、
「母上…………行きましょう」
ランドロフはサルバディの腕を強引にとり、狂戦士たちにくぐりつけられている鎖を握った。
「【テレポート】!」
ランドロフはそう叫び、ランドロフとサルバディ、狂戦士は魔王城から転移した。
「……………これだけいれば十分でしょう」
ランドロフは転移を何度も繰り返し、そして、召喚魔法まで行使して、各地に散らばっている反乱軍である魔族を三万、魔獣を七千集めた。
本当はもっと集めるつもりだった。五万人がランドロフの目標値だったのだ。
しかし、ドラと魔王軍の精鋭に大半が消耗させられているため、この数になってしまった。
予想外の事実にランドロフは少し苛立ちをあらわにしている。
ランドロフの後ろにいる魔族と魔獣たちは綺麗に整列しており、目の前に映るディルガイナを見ている。
まぁ、サルバディの【誘惑】によって従わされているだけだが。
「ちッ! しかし、八魔獣が来ていないのはなんでですかね。あいつら準魔王級のくせに何してるんだか」
「ほ、本当にディルガイナを攻めるの?」
サルバディはランドロフを見て、最初の頃とは真逆の問いをする。
当然、サルバディの少し期待している答えとは正反対の答えが返ってきた。
「当然です……………………母上。人形たちに命令を」
「……………………」
「何をしてるんですか? 早くしてくださいよ」
もし、ここで一歩踏み出せばもう、戻ってこれないとサルバディは直感で感じた。
そして、ランドロフはもう、そちら側にいることも。
サルバディが一人、苦悩している様子を見て、ランドロフは我慢が出来なくなったのだろう。
舌打ちをしてから、一瞬でいつもの表情とは別の悪魔のような表情になる。
「……………ちッ! 【強奪】! 人形たちよ! 今すぐあの国を攻め落とせ!」
「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」」」」」
「……………………え? どういうことなの! ランドロフ!」
サルバディはランドロフの肩を揺らしながら問う。
しかし、そうしているうちに三万七千の兵はディルガイナに向かって進行し始めた。
「僕……いや、俺が権限を奪っただけだ…………ババァは黙ってろ」
「な、何言ってるの? ねぇ! ランドロフ! ……………………【止まりなさい】!」
ランドロフの変わりように再び驚くも、一瞬でこの状況を止めないといけないことを理解する。
サルバディは進行している魔族たちに【誘惑】の魔力を濃縮に込めた言葉でそう叫んだ。
しかし、
「止まるわけないだろ。邪魔すんな」
「…………痛っ!」
ランドロフはサルバディを無理矢理押しのけて、地面に叩きつける。
そして、ディルガイナに向かっている大量の魔族を眺めながら今までで一番の歪な笑みを浮かべた。
そして、大声で両手を大きく広げながら荒れ地である魔大陸に響き渡るように言った。
「さぁ! 蹂躙の始まりだ!」
はい。ランドロフの言う通りこれから蹂躙が始まります。
「ら、ランドロフ? 何処に向かっているのかしら?」
ランドロフは魔王城の地下に転移し、螺旋階段をサルバディの腕を無理矢理ひきながら下り続けている。
ランドロフは今まで、サルバディの意志を優先し、まるで執事のように従えてきた。
そのため、この変わりようにサルバディはただただ恐怖がこみ上げてきている。
そして、螺旋階段が終了し、目の前に身長の五倍以上もある巨大な扉が現れた。
「この部屋は何なの? 今まで聞いたことのなかったのだけれど」
「…………僕が念のために作っておいた秘策です」
少し説明しようか、ためらったもののランドロフは少し表情を険しくしながら言った。
そして、ランドロフがその巨大な扉に人差し指で触れた。
すると、
ゴゴゴゴゴゴ!
「母上。目を閉じてください」
「わ、分かったわ」
巨大な扉がゆっくりと音をたてて開け始めた時、そうランドロフは忠告する。
今までなら理由を聞いてから了承する場面だが、この時のサルバディにはそんなことを聞く勇気がなかった。
そう。既に主従関係が逆転していたのだ。
「オオオオオオオオオオォォォ!」
「ギャアアアアアアアアァァ!」
「アアアアアアアアァァ!」
扉が解放された瞬間、断末魔と錯覚してしまうような雄たけびがあちこちから聞こえる。
「……………………ひッ!」
サルバディは目を閉じたままその雄たけびを聞き、膝を地につけてしまう。
その圧倒的な恐怖の目の前にランドロフは悠然と前に進んでいく。
「いいでしょう? 色んな魔族たちを薬漬けにしてるんですよ。薬さえあれば何でも言うことを聞く。そう! 僕が作ったこいつらの名は…………『狂戦士』です!」
サルバディは両手で耳まで押さえているためランドロフの声は聞こえていない。
しかし、そんなことランドロフは気にしていないようで、一人で満足げな笑みを浮かべている。
そして、
「母上…………行きましょう」
ランドロフはサルバディの腕を強引にとり、狂戦士たちにくぐりつけられている鎖を握った。
「【テレポート】!」
ランドロフはそう叫び、ランドロフとサルバディ、狂戦士は魔王城から転移した。
「……………これだけいれば十分でしょう」
ランドロフは転移を何度も繰り返し、そして、召喚魔法まで行使して、各地に散らばっている反乱軍である魔族を三万、魔獣を七千集めた。
本当はもっと集めるつもりだった。五万人がランドロフの目標値だったのだ。
しかし、ドラと魔王軍の精鋭に大半が消耗させられているため、この数になってしまった。
予想外の事実にランドロフは少し苛立ちをあらわにしている。
ランドロフの後ろにいる魔族と魔獣たちは綺麗に整列しており、目の前に映るディルガイナを見ている。
まぁ、サルバディの【誘惑】によって従わされているだけだが。
「ちッ! しかし、八魔獣が来ていないのはなんでですかね。あいつら準魔王級のくせに何してるんだか」
「ほ、本当にディルガイナを攻めるの?」
サルバディはランドロフを見て、最初の頃とは真逆の問いをする。
当然、サルバディの少し期待している答えとは正反対の答えが返ってきた。
「当然です……………………母上。人形たちに命令を」
「……………………」
「何をしてるんですか? 早くしてくださいよ」
もし、ここで一歩踏み出せばもう、戻ってこれないとサルバディは直感で感じた。
そして、ランドロフはもう、そちら側にいることも。
サルバディが一人、苦悩している様子を見て、ランドロフは我慢が出来なくなったのだろう。
舌打ちをしてから、一瞬でいつもの表情とは別の悪魔のような表情になる。
「……………ちッ! 【強奪】! 人形たちよ! 今すぐあの国を攻め落とせ!」
「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」」」」」
「……………………え? どういうことなの! ランドロフ!」
サルバディはランドロフの肩を揺らしながら問う。
しかし、そうしているうちに三万七千の兵はディルガイナに向かって進行し始めた。
「僕……いや、俺が権限を奪っただけだ…………ババァは黙ってろ」
「な、何言ってるの? ねぇ! ランドロフ! ……………………【止まりなさい】!」
ランドロフの変わりように再び驚くも、一瞬でこの状況を止めないといけないことを理解する。
サルバディは進行している魔族たちに【誘惑】の魔力を濃縮に込めた言葉でそう叫んだ。
しかし、
「止まるわけないだろ。邪魔すんな」
「…………痛っ!」
ランドロフはサルバディを無理矢理押しのけて、地面に叩きつける。
そして、ディルガイナに向かっている大量の魔族を眺めながら今までで一番の歪な笑みを浮かべた。
そして、大声で両手を大きく広げながら荒れ地である魔大陸に響き渡るように言った。
「さぁ! 蹂躙の始まりだ!」
はい。ランドロフの言う通りこれから蹂躙が始まります。
0
お気に入りに追加
2,350
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……
石のやっさん
ファンタジー
虐められ自殺までした僕が異世界転移......もう知らない。
主人公である竜崎聖夜はクラスで酷いイジメにあっていた。
その執拗なイジメに耐えかねて屋上から飛び降り自殺をした瞬間。
聖夜のクラスが光輝き女神イシュタスの元に召喚されてしまう。
話しを聞くと他の皆は既に異世界ルミナスに転移ずみ。
聖夜は自殺し、死んでいたので蘇生したぶん後になったのだと言う。
聖夜は異世界ルミナスに行きたくなかったが、転移魔法はクラス全員に掛かっているため、拒否できない。
しかも、自分のジョブやスキルは、クラスの情報でイシュタスが勝手に決めていた。
そのステータスに絶望したが……実は。
おもいつきで書き始めたので更新はゆっくりになるかも知れません。
いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……
からタイトルを『ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……』に変更しました。
カクヨムコン9に出品予定でしたが、期間内に10万文字まで書けそうも無いのでカクヨムコン出品取り消しました。
勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが
別に気にも留めていなかった。
元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。
リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。
最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。
確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。
タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜
純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」
E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。
毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。
そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。
しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。
そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。
『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。
「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」
「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」
これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。
※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
『異世界は貧乳が正義でした』~だから幼馴染の勇者に追放されても問題がない~ざまぁ? しませんよ!マジで!
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのガイアにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ガイアの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人去ったのだった。
実は彼は転生者で幼馴染には全く興味が無かったからだ。
そして彼は…此処からは読んでからのお楽しみです。
『美醜逆転』『男女比』で異世界系のリクエストを貰ったので書き始めてみました。
ただ、それだと面白味が無いので少し捻ってみました。
実験を兼ねた思いつきなので中編になるか長編になるか未定。
1話はいつもの使いまわしです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる