【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

文字の大きさ
上 下
65 / 142

因果応報

しおりを挟む
「な、なんで逃げたのよ!」
「母上。あれは…………僕が少し本気を出して同レベルの相手です。あそこで戦えば母上に被害が及びます」

 ランドロフは絶対に負けることはないと確証している。
 しかし、準魔王級であるサルバディに被害が及ぶことは絶対に許されない。
 そう考え、一度、偽魔王城に避難してきたのだ。

「しかし、あの魔法は制限型の魔法でしょう。数十分して、戻ってみればもう竜神族ドラグニルは疲労で行動できていないはずです」

 この時のランドロフはドラの先程の魔法を【限界リミッター解除】だと考えていた。
 それはそうだろう。
 最初から魔族全体に一段階も弱くする規制がかかっているなんて信じれるはずもなく、その考えにいたるはずもない。

「…………ま、まぁ少しは予定が狂いそうだけど一応大丈夫。本当にあの魔王の顔が恐怖に染まる瞬間が楽しみでしょうがないわ!」

 サルバディは歪な口角を上げながらそう言った。
 ランドロフもその表情につられてにんまりを口角を上げる。
 そして、その二人を祝福するように鋭い三日月が偽魔王城を照らしている。

 しかし、そんな、まがい物の運命を否定するような少し高めの声が魔王城に響き渡った。

「まぁその魔王が来ることはないんですけどね」
「「……………………ッ!!」」

 ゆったりと玉座に座っていたサルバディとその隣で立って話をしていたランドロフの二人は一瞬にして戦闘態勢に入る。
 そこは、流石、準魔王級と魔王級といったところか。

 そして、その声の主とは別の声が偽魔王城に響く。

 パリンッ!

「なんだぁ? 主の化け物魔力が感じられないぞ? 誘拐されたんじゃなかったのか?」

 高そうな彫刻がされたガラス窓を突き破り、低音の声の主が入ってきた。
 そして、先ほどの高い声の魔獣の隣に立つ。

 そして、金髪の魔獣と銀髪の魔獣が二人、怒りの眼差しを宿しながら言った。

「私はあまり戦闘は好まないんですよ」
「いやぁ。主が誘拐なんぞされたら黙ってみてるわけにもいかねぇんだわ」

 その光景に二人は唖然としてしまう。
 あの天下の魔王城に侵入者。それも、二人とも人型の魔獣という見たこともない種族であった。

 しかし、二人はそんな元女王と元王子を放って声を合わせるようにして言う。

「「主の場所はどこだ・・・・・・・・」」
「………………ひっ!」

 サルバディはその威圧により、腰を抜かしてしまい、玉座にもたれ掛かるように座った。

(どこで!? どこで私は間違えたのかしら!? 絶対に成功する二十年かけた作戦だったのに! なんで!? なんで!?)

 サルバディは一人、心の内で今までの行動を見直そうとするも、自分たちの非が見当たらない。

 二人はディルガイナの軍政調査も何度も行い、シュミレーションも何度も繰り返し、試行錯誤した。
 その一心は魔王の怯えた表情を見るために。

 しかし、その作戦が一昨年、ディルガイナに訪れた一人の人間の少年によってすべて覆されるなど誰が想像できるだろうか。
 出来るとしたら…………全知なる神だけだ。

「………………さっきからさァ! なんなのまじでェ! ふざけるのもたいがいにしろよ!」
「…………ら、ランドロフ?」

 その雰囲気の変わりようにサルバディは驚いたような声を出す。
 ランドロフは優しく、サルバディに従順な性格だったが、今はかけ離れている。

 バンッ!

「「王子。お下がりを」」

 何か違和感を感じたのだろう。
 下の階層から二つの物影が急いで上がってきた。

 そう。元女王の奴隷人形となった八魔獣の邪蛇族カースナーガ土竜族サンドモールがランドロフの前に立ちはだかる。

 すると、少しは落ち着きを取り戻したのか、ランドロフは頭を抱えながら了承した。

「ああ。頼む。俺は…………いや、僕はディルガイナを滅ぼしに行く」
「………………え?」

 その、ランドロフの真意のこもった態度に流石のサルバディも驚いた。
 しかし、ランドロフはその様子に逆にキレる。

「何を驚いてるんですか母上! 最初からこうしておけばよかった! あんな奴らさっさと殺しておけばよかったんだ!」

 そう言うとランドロフはサルバディの腕を強引にとる。
 サルバディが現状を理解できないままにランドロフは魔法を行使した。

「【テレポート】!」

 こうして、二人は魔王城から消え去った。
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...