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可哀想なドラ
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「余程のことがない限り、使ったら駄目だったんだが……………………これは許せることじゃないよな?」
「母上! お下がりください!」
ドラは頭をかきながら何もない空間に人差し指で一本の横線をゆっくりとひく。
それを見たランドロフは何か感じたのか、サルバディの腕をとり、後ろに大きく跳躍する。
スパッ!
「……………………え?」
空気がバッサリと切れる音に、サルバディは驚いたような、ありえない様な表情になる。
先ほどまでサルバディが立っていた場所に不可視の斬撃が繰り出されていた。
それは準魔王級のサルバディの肌などやすやすと切り裂くような斬撃である。
ドラは少しダルそうな、しかし心の底では怒りの感情を上手く抑えながら口を開き、魔王の規制を解除することによって本能をさらけ出す。
「……………【規制解除】」
ランドロフは一瞬で理解した。竜神族は準魔王級でも、ましてやそこらの魔族とは格が違う。こちら側の住人。
魔王級であると。
そのドラの目に宿るただただ怒り狂っている感情に同じ魔王級であるランドロフでさえ腰を抜かしそうになった。
そして、それがプリンによって起きたことだと理解すると、さらに恐怖が込みあがってくる。
ちなみにそのプリンは今、地面でつぶれ、跡形もなくなっていた。
「あ、あなた達! 今すぐあいつを拘束しなさい!」
「「「はッ!」」」
一瞬、その衝撃に固まっていたサルバディはただ指示を待ち続ける人形(魔獣、魔族)たちにそう命令する。
それを聞いた魔族たち、魔獣たちは特攻隊のように能無しにドラに突撃し始めた。
しかし、
「お前らには用はない」
「「「……………………ぐはッ!」」」
長剣や鍵爪、鍛え上げたこぶしなど各自が自慢の武器を持って、ドラに攻撃を仕掛けようとした。
しかし、ドラはその倍、数十倍の速さで受け流し、反撃を繰り出す。
そのため、ドラの周辺には少しずつ気を失った魔族、魔獣たちが増え始めた。
流石にドラでもキレていたところで、関係のない者は殺さない。
そして、
「【憑依武装】! 魚骨族!」
ドラはそう叫び、隣に魔族である一人の魚骨族を出現させる。
そして、その魚骨族の身体は急に分解され始め、一本一本の骨がドラの防護服となっていく。
また、鋭い部位は右手の先に集められ、一本の片手剣が作られた。
そして、最終的には骨の甲冑を装備し、今までの力が何倍以上に増大する。
「母上、お手をお借りしても?」
「ええ。私たちで一緒に――」
その様子を見て、ランドロフはサルバディの手を借りようとする。
当然。サルバディはその提案に快く了承した。
しかし、手を借りるとはそのままの物理的の手を借りるという意味だった。
そして、その瞬間ランドロフはサルバディの手を握り、早口で魔法を行使する。
「【テレポート】!」
サルバディはそのランドロフの行動の理解をし、ものすごい悔しそうな表情を残す。
そして二人は逃げるようにしてこの場から去っていった。
「……………………ちッ! まぁいいか。ここにいる奴らで我慢するか」
「調子に乗る――うッ!」
すると、一人の魔族がドラに切りかかるように背後から長剣を振り下ろそうとしてきた。
しかし、ドラは後ろを振り向くことなく、骨の剣をわき下から通し、背後の魔族のみぞおちに柄を刺す。
「じゃあ。大掃除を始め……………………ん? なんだこの魔力は?」
かっこよくセリフをきめようとしていたドラを遮るような、そんな巨大な魔力をドラは検知した。
ドラとそこにいる六万の魔族と魔獣はゆっくりと後方を振り返る。
すると、
「お前らぁ! 魔王軍を敵に回すとか頭いってんのか?」
「そうだそうだ! 反乱軍の息の根をここで断つぞ!」
「可哀想な人たちだね!」
砂埃を発生させ、本気で走りながらこちらに向かって来ている魔王軍が見えた。
その表情はまるで鬼の形相である。
その数総計、五百と言ったところか。
ドラが誘拐されたことに誰かが気付いたのだろう。
全員ドラと同じように【規制解除】をしているため、三段階になっている。
「【解除】」
ドラは換装を解き、魚骨族を元居た場所に戻した。
わざわざ残りの魔力を全部使用したのに、あまり意味がなかったようで、少しドラは悔しそうな表情を見せる。
すると、一人の魔王軍の魔族がドラを見て、大声で言った。
「ドラを見つけたぞ! 数人こちらに集まってくれ!」
その掛け声のもとに数人の魔族が集まった。
そして、他の魔族は魔獣たちと戦いを始める。
流石に魔王軍と反乱軍との人数差があるため、現状維持といったところか。
「おお。助けに来て――」
その光景を見てドラは少し安心をしようとした。
まぁあの脳筋のドラでも少し一人でさみしかったのだろう。
しかし、ドラだ。あのドラなんだぞ?
「今からこいつを気絶させる! 誘惑の魔法にかかってるかもしれない!」
「「「「おおおおおぉぉ!」」」」
「……………………は? は、はああああああぁぁ!?」
ドラは同じ魔王軍から襲われるという物珍しい体験にプリンを落とした時並みの声が出てしまった。
そして、魔王軍の魔族たちがドラに戦闘を仕掛け始める。
こうして、反乱軍とドラ対魔王軍の南北戦争の一角が始まろうとしていた。
********************
補足説明
魔王は武力を嫌うため、ディルガイナ出身の魔族全体に【規制】をかけている。
それに気づいているのは魔王軍の精鋭と幹部だけである。
そのため、魔族と魔獣では一段階分の差がある。
そのため、ディルガイナの外から来たゴブくんは二段階だが三段階の実力がある。
そして、半族半獣のグレーは…………準魔王級の力があるということです。
ということは。魔王は…………
「母上! お下がりください!」
ドラは頭をかきながら何もない空間に人差し指で一本の横線をゆっくりとひく。
それを見たランドロフは何か感じたのか、サルバディの腕をとり、後ろに大きく跳躍する。
スパッ!
「……………………え?」
空気がバッサリと切れる音に、サルバディは驚いたような、ありえない様な表情になる。
先ほどまでサルバディが立っていた場所に不可視の斬撃が繰り出されていた。
それは準魔王級のサルバディの肌などやすやすと切り裂くような斬撃である。
ドラは少しダルそうな、しかし心の底では怒りの感情を上手く抑えながら口を開き、魔王の規制を解除することによって本能をさらけ出す。
「……………【規制解除】」
ランドロフは一瞬で理解した。竜神族は準魔王級でも、ましてやそこらの魔族とは格が違う。こちら側の住人。
魔王級であると。
そのドラの目に宿るただただ怒り狂っている感情に同じ魔王級であるランドロフでさえ腰を抜かしそうになった。
そして、それがプリンによって起きたことだと理解すると、さらに恐怖が込みあがってくる。
ちなみにそのプリンは今、地面でつぶれ、跡形もなくなっていた。
「あ、あなた達! 今すぐあいつを拘束しなさい!」
「「「はッ!」」」
一瞬、その衝撃に固まっていたサルバディはただ指示を待ち続ける人形(魔獣、魔族)たちにそう命令する。
それを聞いた魔族たち、魔獣たちは特攻隊のように能無しにドラに突撃し始めた。
しかし、
「お前らには用はない」
「「「……………………ぐはッ!」」」
長剣や鍵爪、鍛え上げたこぶしなど各自が自慢の武器を持って、ドラに攻撃を仕掛けようとした。
しかし、ドラはその倍、数十倍の速さで受け流し、反撃を繰り出す。
そのため、ドラの周辺には少しずつ気を失った魔族、魔獣たちが増え始めた。
流石にドラでもキレていたところで、関係のない者は殺さない。
そして、
「【憑依武装】! 魚骨族!」
ドラはそう叫び、隣に魔族である一人の魚骨族を出現させる。
そして、その魚骨族の身体は急に分解され始め、一本一本の骨がドラの防護服となっていく。
また、鋭い部位は右手の先に集められ、一本の片手剣が作られた。
そして、最終的には骨の甲冑を装備し、今までの力が何倍以上に増大する。
「母上、お手をお借りしても?」
「ええ。私たちで一緒に――」
その様子を見て、ランドロフはサルバディの手を借りようとする。
当然。サルバディはその提案に快く了承した。
しかし、手を借りるとはそのままの物理的の手を借りるという意味だった。
そして、その瞬間ランドロフはサルバディの手を握り、早口で魔法を行使する。
「【テレポート】!」
サルバディはそのランドロフの行動の理解をし、ものすごい悔しそうな表情を残す。
そして二人は逃げるようにしてこの場から去っていった。
「……………………ちッ! まぁいいか。ここにいる奴らで我慢するか」
「調子に乗る――うッ!」
すると、一人の魔族がドラに切りかかるように背後から長剣を振り下ろそうとしてきた。
しかし、ドラは後ろを振り向くことなく、骨の剣をわき下から通し、背後の魔族のみぞおちに柄を刺す。
「じゃあ。大掃除を始め……………………ん? なんだこの魔力は?」
かっこよくセリフをきめようとしていたドラを遮るような、そんな巨大な魔力をドラは検知した。
ドラとそこにいる六万の魔族と魔獣はゆっくりと後方を振り返る。
すると、
「お前らぁ! 魔王軍を敵に回すとか頭いってんのか?」
「そうだそうだ! 反乱軍の息の根をここで断つぞ!」
「可哀想な人たちだね!」
砂埃を発生させ、本気で走りながらこちらに向かって来ている魔王軍が見えた。
その表情はまるで鬼の形相である。
その数総計、五百と言ったところか。
ドラが誘拐されたことに誰かが気付いたのだろう。
全員ドラと同じように【規制解除】をしているため、三段階になっている。
「【解除】」
ドラは換装を解き、魚骨族を元居た場所に戻した。
わざわざ残りの魔力を全部使用したのに、あまり意味がなかったようで、少しドラは悔しそうな表情を見せる。
すると、一人の魔王軍の魔族がドラを見て、大声で言った。
「ドラを見つけたぞ! 数人こちらに集まってくれ!」
その掛け声のもとに数人の魔族が集まった。
そして、他の魔族は魔獣たちと戦いを始める。
流石に魔王軍と反乱軍との人数差があるため、現状維持といったところか。
「おお。助けに来て――」
その光景を見てドラは少し安心をしようとした。
まぁあの脳筋のドラでも少し一人でさみしかったのだろう。
しかし、ドラだ。あのドラなんだぞ?
「今からこいつを気絶させる! 誘惑の魔法にかかってるかもしれない!」
「「「「おおおおおぉぉ!」」」」
「……………………は? は、はああああああぁぁ!?」
ドラは同じ魔王軍から襲われるという物珍しい体験にプリンを落とした時並みの声が出てしまった。
そして、魔王軍の魔族たちがドラに戦闘を仕掛け始める。
こうして、反乱軍とドラ対魔王軍の南北戦争の一角が始まろうとしていた。
********************
補足説明
魔王は武力を嫌うため、ディルガイナ出身の魔族全体に【規制】をかけている。
それに気づいているのは魔王軍の精鋭と幹部だけである。
そのため、魔族と魔獣では一段階分の差がある。
そのため、ディルガイナの外から来たゴブくんは二段階だが三段階の実力がある。
そして、半族半獣のグレーは…………準魔王級の力があるということです。
ということは。魔王は…………
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