上 下
55 / 142

いつものアレン君

しおりを挟む
「ちょ、ちょっと待てや! 契約⁉ どういうことだ⁉」
「……………………アレン。またお前何かやらかしたのか」

 喰狼族グーラウルフは状況が理解できていないようで、他の人の顔色をうかがっている。
 そして、グレーはため息を吐きながら頭を抱えた。

「いや、あのね? 俺は反対したんだよ? でも、ラークたちの話したらこんなことになっちゃって……………………後、俺も父さんの理由を破ってでも契約したいなって思う事情が出来ちゃってね…………」
「おい坊ちゃん。ラークってのは誰だ?」

 少し先ほどとは違い興味深そうな表情をして俺に聞いてくる。

『私は大丈夫です』
「了解。ラークってのは…………【召喚コール】」
 
 どこからこの状況を見守ってくれていたのかもしれない。
 喰狼族グーラウルフがラークの名前を出した途端、急に【念話リークス】でラークが召喚コールの了承をしてくれた。

 俺は召喚魔法を行使して、俺の隣に魔法陣を発現させる。
 そして、そこから光が溢れ始め…………

「息災でしたか。喰狼族グーラウルフ

 魔法陣のところから一人、金髪の高身長イケメンが出てきた。
 所々羽毛が生え、腕はまだ羽のようになっているものの魔族と言われてもギリ納得出来そうだ。

「お、お前は紫電…………いや、誰だお前?」

 少し喰狼族グーラウルフは動揺しながらラークを見ている。
 それはそうだろ。同レベルのはずの八魔獣の一対であった紫電鳥が今や神雷鳥デックスになっているのだから。

「私は元八魔獣の一対、神雷鳥ラークです………………来い・・同胞よ・・・

 一瞬だけ表情を無に変えたラークは小さな声で、だが、何故か脳に直接突き刺さるような声を発する。
 すると、

 バタバタバタバタバタ!

 大きな翼をはためかせる音を出しながら各地に散らばっていた紫電鳥たちが上空に集結し始める。

「はあああああああああああああああぁぁぁぁ⁉」

 その光景を見て喰狼族グーラウルフは大声を出す。

「なッ! ど、どういうことだ⁉ これ全員…………紫電鳥じゃねぇかぁ!」
「もし呼ぶなら俺が召喚したのに」

 俺が少し不満げに言うと、ラークは苦笑いしながら、

「私にも少しぐらいカッコつけさせてくださいよ。一応私だってこの一万の統率者なんですから」

 その騒ぎを見た餓狼族ヴェアウルフたちもこの闘技場に集結し始めた。
 そして、その真っ暗な空を見て全員が腰を抜かす。
 いや、俺が契約していた餓狼族ヴェアウルフたちは少し唖然としているものの、敵意がないことを確信しているので腰を抜かすほどではない。

「おい! ふざけんじゃねぇぞ! これじゃ…………これじゃ八種族の均衡が保たれねぇじゃねぇか!」

 喰狼族グーラウルフはその空にいる紫電鳥たちを指さしながら言った。

 それはそうだろう。八魔獣と呼ばれ、雷電鳥たちに信仰されてきた紫電鳥。
 その伝説的な紫電鳥は今や自分たちになっているのだ。

 八魔獣からまぁ簡単に言えば…………一万魔獣?

 なんか語呂が悪いので俺はその考えを一人、心の中にしまい込む。

「だから私は貴方に提案しに来ました。アレン様の下につかないかと」
「………………あん? 頭狂ったのか? 紫電…………いやラーク。お前は俺よりも魔族のことを毛嫌いしていただろうが」

 するとラークはアハハと苦笑いをして、頭をかきながら言う。

「はい。私がアレン様と出会った時だって、あわよくば魔族たちを襲撃してやろうかと思っていました」
「え! 怖っ!」

 その話を聞いていたグレーが体を震わせながら言う。
 それを見たラークはすぐに首を横に振った。

「もう、そんなことを思っていませんよ? 私だってあなた達のように良い魔族と悪い魔族の違いぐらい理解できるようになりましたから」
「はぁ。本当にラークさんは怖いこと言うぜ」

 安堵するようにグレーは肩を下ろす。
 しかし、喰狼族グーラウルフは納得できていないような表情を見せている。
 ラークはため息を吐きながら喰狼族グーラウルフの元まで近づき、耳打ちするように何かを言った。

「彼は…………です。仮契約だけでもしてみませんか?」
「…………ッ! 分かった。一度だけならしてやる」

 ラークがそう言うと喰狼族グーラウルフ一瞬で顔色を変えた。
 そして、渋々といった表情で俺の前に立ち、前足を差し出してくる。
 俺は喰狼族グーラウルフの行動が犬のお手のようで笑いかけてしまうが我慢する。

 もしここで笑ってしまえば計画が台無しだ。

「あ、ありがとうございます。じゃあ……………………【仮契約フェイクリンク】」

 すると俺と喰狼族グーラウルフが触れ合っている部分が光始める。
 そして……………………


********************

 ここまでアレン達の物語にお付き合いいただき本当にありがとうございます!
 いつも読者様には感謝しっぱなしです!

 ちなみにこの短期間で三段階だった紫電鳥たちは準魔王級に。
 準魔王級だったラークは魔王級に進化してます。

 元々、八魔獣の中では鳥類族はあまり戦闘にならないので全員が二段階という最弱魔獣でした。
 でも、全体が一段階進化したため、他の魔獣とも対等に渡り合えるようになり、族長であるラークが色々訓練したようで、系譜として配下も一段階進化しています、
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...