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何してんのアレン君?

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「………はぁ。はぁ。はぁ。所詮バカ息子だ。俺に勝つなんてまだ百年早いんだよ」
「……………………クソが」

 バタッ!

 俺はギリギリ踏ん張っていた足腰から力が抜け、仰向けになる。

 第二ラウンドはすぐに決着がついた。
 やはり、風魔法の方が繊細な動きができ、行動の幅も広い。

 俺と親父は空中で戦闘を繰り広げた末…………親父が勝利した。
 やはり、俺には経験が圧倒的に足りなかった。

 自分より強者と戦うという経験が。

 俺は親父を全身を真っ赤に染めさせてやったが、それでも何か足りなかった。
 俺ならあれほど血を流していたら死んでいてもおかしくない。
 そこだけは流石、八魔獣と言えるだろう。

 すると、親父も地に座り急に口を開いた。

「俺はなぁ…………どうしてもお前たちに、この町に残ってほしかったんだ。俺はこの強い力のせいでいつも独りだった。だからお前にも俺の隣に立てるほど強くたってほしかった」
「……………………」

 親父は最後の力を振り絞るように言った。

 拳を交えれば相手の考えが分かる。そんな生半可なこと出来るはずもない。
 だが、俺は親父と初めてまともに拳を交えたことで分かったことが一つあった。

 本当に俺の父親なんだと。

「サーナのことは本当にすまないと思ってる。まさかあそこまであいつに負荷をかけていたなんて気づかなかったんだ」
「……………………それは俺にだって非がある。親父だけのせいじゃない」

 俺は雲一つない空を見上げながらそう口にする。

 何故だろう。俺は親父に言ったやりたかった。
 お前のせいで母が亡くなったんだと。お前があんなことしなければ今でも母は幸せに生きることが出来たのではないかと。

 しかし、なぜか今の親父に罵声を浴びせる気はとっくに雲散していた。

「お前が強くなったのは理解した。お間の意見だって少しは尊重してやる……………………だが、あのガリ魔族につくのだけは納得がいかねぇ」
「……………………」

 生まれて初めて父から認められたという高揚感と魔王に託された使命を果たせそうにない罪悪感が俺の心でうずまく。
 そして、俺たちの間に何か気まずい空気、でも、どこか心地よい空気が流れた。

 しかし、すぐにその感慨に浸っている俺たちを妨害するように、そのガリ魔族の息子がやってきた。

「大丈夫ですか先輩! あ、先輩のお父さんも重症じゃないですか! ちょっと待ってくださいね……………………そりゃっ!」

 何故か、餓狼族ヴェアウルフの背中に乗って駆けつけたアレンは俺たちの状態を見てすぐに【インベントリ】から回復薬ポーションを取り出し、俺たちに投げつけた。
 すると、すぐに裂けていた肉が再生し、疲労感まで回復し始める。

「グレーあれは何もんだ?」
「………ん? あの子、アレンは魔王様の息子だよ」

 急に真剣な表情になって真面目なトーンで口を開いた親父に俺は少し驚きながらもそう答える。
 親父は俺の答えを聞くと、頭を抱えながらアレンを運んできた餓狼族ヴェアウルフたちに言った。

「…………おい! お前らなんで魔族の子なんかと気安く接してるんだ!」

 いつもなら平謝りをして怒りを鎮めようとする餓狼族ヴェアウルフたちだが、今回はいつもと様子が違った。
 何故か申し訳なさそうに苦笑いしながらその場に立っている。
 そして、五体の魔獣が一斉に、

「「「僕たちアレン様と契約しちゃいました!」」」
「「……は、はあああああぁぁ!?」」

 俺と親父は餓狼族ヴェアウルフと同じように苦笑いして、頭をかきながらこちらの様子を窺っているアレンを見て只々唖然とすることしか出来なかった。
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