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グレーの過去
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俺は餓狼族の純血ではない。
八魔獣の一人である喰狼族、親父は何故か子供が出来なかった。
何人もの餓狼族を抱いたそうだが、全く生まれる気配がなく、自分の子孫を残すことが出来ないと悩んでいたそうだ。
そこで目をつけたのが魔族の『無透族』である。
名前からも分かるように半透明の魔族だ
親父はその無透族の大きな特徴である子孫の繁殖に目を付けた。
無透族同士の子は無透族になるが、別の魔族と結び合えば、その別の魔族の特徴を全て受け継ぐというものだ。
まぁ簡単に言えば……………………いや、これは言わないでおこう。
そして、親父は一人の無透族と結ばれた。
親父は運命とか定とか言っていたが、正直そこは定かではない。
だが、まぁ母も親父のことを本心から愛しているように俺からは見えたのでそこは俺が二人の息子であったとしても口をはさむ領分ではないだろう。
そして、俺が生まれた。
俺は半族半獣としてこの世界に降り立った。
当初は親父も母も飛ぶようにして喜んでいたらしい。
そりゃあ魔族と魔獣の子だ。前代未聞の話である。
そして、俺が生まれたことによって最初のころは母を嫌っていた餓狼族たちも、本当に族長の運命の方だったのではないかと信じ始め、母を同族同然のように扱うようになった。
ここまでは完璧の物語である。
しかし、人生とはそう上手くいくものではない。
『…………え? 二足歩行ができるようになったの⁉』
俺は餓狼族の純血になる予定だった。
しかし、どうやら無透族の血も受け継いだようだ。
四足歩行になる予定が二足歩行に。まぁこれは強弱に関係することはないため、そこまで問題にならなかった。
だが、ここからが問題だ。
『なんで…………なんで魔力がねぇんだ!』
母も親父も双方、魔力は当然あった。
しかし、俺には魔力がほぼなかったのだ。
魔力量は生まれた時から固定される。
もしかしたら少しは成長するかもしれないが、そんなの一ミリ変わった程度だ。
多分、半族半獣のせいだろう。
それ以外に原因が見つからない。
そして、俺は親父から不良品と呼ばれ始める。
毎日そのストレスをぶつけるように訓練と称して俺にあたり始めた。
俺はその度に母親に泣きじゃくっていたものだ。
その頃の俺はまだ十歳。正直に言って大人の事情など知るはずもない。
だから、気づいていなかったのだ。
俺の涙を流す度に母親の心がどれだけえぐられていたのかを。
そして、俺が十二歳の時、もう我慢できなくなったのだろう。母は俺を連れてこの町からを出た。
当然、親父がそれを止めないはずがない。
不良品だとしても族長を継がせなければならない実の息子と、自称だが運命の嫁だ。
無理矢理にでも連れ戻そうと、近衛兵を出動させたぐらい本気だった。
しかし、母は自分の特徴である体が半透明という利点を使って、一週間をかけ、百キロ以上もあるディルガイナ、母国へとたどり着いたのだ。
だが、女性一人でその距離を、しかも、近衛兵からも逃げ、更にはお荷物である俺を連れてだ。
もう、母は何もかもが消耗しきっていた。
『グレー。これからは幸せに生きなさい。辛い思いをさせて………………ごめんね』
そこからは言わなくても分かるだろう。
そう。もう俺には母がいない。
そんな孤独な俺を救ってくれたのが魔王様だった。
最初は半族半獣という珍しい気を感じて俺を見つけたらしいが、事情を理解すると俺にデルターナ学園を勧めてくれた。
それで俺は寮生活をすることになる。
そして、俺は七年。ひたすら親父に復讐するためだけに毎日、戦闘訓練を続けてきた。
(だから! こんなところで負けるわけにはいかない!)
バチンッ!
俺は自分の顔面を両手で叩き、気合を入れなおす。
「気合を入れなおしたところで結果は勝わんねぇんだよ! 分かったらさっさとこの町に――」
「おらあああああああああぁぁぁ!」
俺は雄たけびをあげながら一つの希望に手を伸ばす。
出来るか分からない。いや出来ないかもしれない。
けど、だけどこれを成功させなければ勝てる可能性はゼロになる。
俺はこの七年間で鍛えぬいてきた自慢の筋肉に力を入れた。
八魔獣の一人である喰狼族、親父は何故か子供が出来なかった。
何人もの餓狼族を抱いたそうだが、全く生まれる気配がなく、自分の子孫を残すことが出来ないと悩んでいたそうだ。
そこで目をつけたのが魔族の『無透族』である。
名前からも分かるように半透明の魔族だ
親父はその無透族の大きな特徴である子孫の繁殖に目を付けた。
無透族同士の子は無透族になるが、別の魔族と結び合えば、その別の魔族の特徴を全て受け継ぐというものだ。
まぁ簡単に言えば……………………いや、これは言わないでおこう。
そして、親父は一人の無透族と結ばれた。
親父は運命とか定とか言っていたが、正直そこは定かではない。
だが、まぁ母も親父のことを本心から愛しているように俺からは見えたのでそこは俺が二人の息子であったとしても口をはさむ領分ではないだろう。
そして、俺が生まれた。
俺は半族半獣としてこの世界に降り立った。
当初は親父も母も飛ぶようにして喜んでいたらしい。
そりゃあ魔族と魔獣の子だ。前代未聞の話である。
そして、俺が生まれたことによって最初のころは母を嫌っていた餓狼族たちも、本当に族長の運命の方だったのではないかと信じ始め、母を同族同然のように扱うようになった。
ここまでは完璧の物語である。
しかし、人生とはそう上手くいくものではない。
『…………え? 二足歩行ができるようになったの⁉』
俺は餓狼族の純血になる予定だった。
しかし、どうやら無透族の血も受け継いだようだ。
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だが、ここからが問題だ。
『なんで…………なんで魔力がねぇんだ!』
母も親父も双方、魔力は当然あった。
しかし、俺には魔力がほぼなかったのだ。
魔力量は生まれた時から固定される。
もしかしたら少しは成長するかもしれないが、そんなの一ミリ変わった程度だ。
多分、半族半獣のせいだろう。
それ以外に原因が見つからない。
そして、俺は親父から不良品と呼ばれ始める。
毎日そのストレスをぶつけるように訓練と称して俺にあたり始めた。
俺はその度に母親に泣きじゃくっていたものだ。
その頃の俺はまだ十歳。正直に言って大人の事情など知るはずもない。
だから、気づいていなかったのだ。
俺の涙を流す度に母親の心がどれだけえぐられていたのかを。
そして、俺が十二歳の時、もう我慢できなくなったのだろう。母は俺を連れてこの町からを出た。
当然、親父がそれを止めないはずがない。
不良品だとしても族長を継がせなければならない実の息子と、自称だが運命の嫁だ。
無理矢理にでも連れ戻そうと、近衛兵を出動させたぐらい本気だった。
しかし、母は自分の特徴である体が半透明という利点を使って、一週間をかけ、百キロ以上もあるディルガイナ、母国へとたどり着いたのだ。
だが、女性一人でその距離を、しかも、近衛兵からも逃げ、更にはお荷物である俺を連れてだ。
もう、母は何もかもが消耗しきっていた。
『グレー。これからは幸せに生きなさい。辛い思いをさせて………………ごめんね』
そこからは言わなくても分かるだろう。
そう。もう俺には母がいない。
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最初は半族半獣という珍しい気を感じて俺を見つけたらしいが、事情を理解すると俺にデルターナ学園を勧めてくれた。
それで俺は寮生活をすることになる。
そして、俺は七年。ひたすら親父に復讐するためだけに毎日、戦闘訓練を続けてきた。
(だから! こんなところで負けるわけにはいかない!)
バチンッ!
俺は自分の顔面を両手で叩き、気合を入れなおす。
「気合を入れなおしたところで結果は勝わんねぇんだよ! 分かったらさっさとこの町に――」
「おらあああああああああぁぁぁ!」
俺は雄たけびをあげながら一つの希望に手を伸ばす。
出来るか分からない。いや出来ないかもしれない。
けど、だけどこれを成功させなければ勝てる可能性はゼロになる。
俺はこの七年間で鍛えぬいてきた自慢の筋肉に力を入れた。
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