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リーシャ動きます
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XクラスがDクラスに勝った。
これは偉業である。
しかし、学園内にはそこまでこの情報は広がらなかった。
それはDクラスとBクラスの助っ人に呼ばれた生徒たちが一切口外しようとしないためだ。
その理由は察してあげてほしい。明日はDクラスの生徒、ましてや先生までもが学校に行かない予定のようだ。
それと、もう一つ理由がある。Sクラスのランキング戦についてだ。
Sクラスは所属する人数が他クラスより少ない。流石にXクラスよりは多いもののざっと四十人程度だ。
そして、今年入った新入生は二人。
その二人だけで昨日、Aクラス二百人相手に圧勝したらしい。
今日の学園内ではその話で持ちきりだったようだ。
他人行儀なのは全てミーナ先輩から聞いた情報だからである。
俺は午後の間、ひたすら先輩たちと一緒にゴブくんの説教を受け、生気を絞られていた。
俺がどれだけ怒られている間、先輩たちを恨みかけたことか。
そして、俺は屍のような状態で魔王城に帰ってきた。
時計を見ると午後八時を指している。
寝るには早いので、かといって何かする気も起きないのでだらだらと居間で過ごしていた。
「…………どうしたのぉ? そんなやつれた顔をしてぇ」
「リーシャ…………ゴブくんと先生変わってくれない?」
俺が魔王城の四階、魔王やリーシャ、ドラなど限られたものしか入ることを禁じている階層の居間にあるソファにだらしなく寝転がっていた。
目の前にある机でいつも魔王とリーシャ、ゴブくんとドラの五人で食事をしている。
今日はドラとゴブくんは新任の先生を祝う、祝宴会に行っている。
そして、魔王は今日中には帰ってこれないかもとだけ告げて朝早くからどこかへ出かけてしまったようだ。
なので、今夜はリーシャと俺の二人だけということになる。
「ゴブくんは魔族の中では優しい方だと思うけどねぇ。私の方がよっぽど怖いかもよぉ?」
天井にとまっているリーシャがにんまりと笑みを浮かべながらそう言った。
俺も寝そべったままリーシャの方を向いて笑ながら口を開く。
「アハハ。御冗談を。リーシャはいつも優し――」
バサッ!
「…………へ?」
俺は意味の分からない声を出してしまう。
俺が急な衝撃で脊髄反射によって閉じていた目をゆっくりと開けるとリーシャが目の前にいた。
それも息のかかるほどの至近距離。
俺の頭の横に手を付け、覆いかぶさるような状態になっている。
「私はあの誰からも恐れられる最恐の魔王の側近なんだよぉ?」
「は、ひゃい」
俺は脳がパニック状態に陥り、変な声を出してしまう。
そんな俺をリーシャは今まで見てきた中で一番の笑顔で俺を見ている。
「覚えてるぅ? 私が最初に飲ませた飲み物のことぉ」
「あの砂糖水みたいな…………」
いつまでこの状態でいるのだろうか。
もうそろそろ俺の鼓動が止まりそうなのだが。
「うんうん。あれねぇ。私の体液なのぉ」
「……………………はい?」
俺の聞き間違えだろう。
流石に初対面の人に出す飲み物が体液なはずがない。ってか体液って何⁉
頭の中でそう自問自答していると、リーシャが急に俺と真顔で視線を合わせてきた。
そして、
「あれぇ。これなのぉ」
リーシャはとろけるような言葉遣いをしながら俺との距離を一瞬でゼロにした。
これは偉業である。
しかし、学園内にはそこまでこの情報は広がらなかった。
それはDクラスとBクラスの助っ人に呼ばれた生徒たちが一切口外しようとしないためだ。
その理由は察してあげてほしい。明日はDクラスの生徒、ましてや先生までもが学校に行かない予定のようだ。
それと、もう一つ理由がある。Sクラスのランキング戦についてだ。
Sクラスは所属する人数が他クラスより少ない。流石にXクラスよりは多いもののざっと四十人程度だ。
そして、今年入った新入生は二人。
その二人だけで昨日、Aクラス二百人相手に圧勝したらしい。
今日の学園内ではその話で持ちきりだったようだ。
他人行儀なのは全てミーナ先輩から聞いた情報だからである。
俺は午後の間、ひたすら先輩たちと一緒にゴブくんの説教を受け、生気を絞られていた。
俺がどれだけ怒られている間、先輩たちを恨みかけたことか。
そして、俺は屍のような状態で魔王城に帰ってきた。
時計を見ると午後八時を指している。
寝るには早いので、かといって何かする気も起きないのでだらだらと居間で過ごしていた。
「…………どうしたのぉ? そんなやつれた顔をしてぇ」
「リーシャ…………ゴブくんと先生変わってくれない?」
俺が魔王城の四階、魔王やリーシャ、ドラなど限られたものしか入ることを禁じている階層の居間にあるソファにだらしなく寝転がっていた。
目の前にある机でいつも魔王とリーシャ、ゴブくんとドラの五人で食事をしている。
今日はドラとゴブくんは新任の先生を祝う、祝宴会に行っている。
そして、魔王は今日中には帰ってこれないかもとだけ告げて朝早くからどこかへ出かけてしまったようだ。
なので、今夜はリーシャと俺の二人だけということになる。
「ゴブくんは魔族の中では優しい方だと思うけどねぇ。私の方がよっぽど怖いかもよぉ?」
天井にとまっているリーシャがにんまりと笑みを浮かべながらそう言った。
俺も寝そべったままリーシャの方を向いて笑ながら口を開く。
「アハハ。御冗談を。リーシャはいつも優し――」
バサッ!
「…………へ?」
俺は意味の分からない声を出してしまう。
俺が急な衝撃で脊髄反射によって閉じていた目をゆっくりと開けるとリーシャが目の前にいた。
それも息のかかるほどの至近距離。
俺の頭の横に手を付け、覆いかぶさるような状態になっている。
「私はあの誰からも恐れられる最恐の魔王の側近なんだよぉ?」
「は、ひゃい」
俺は脳がパニック状態に陥り、変な声を出してしまう。
そんな俺をリーシャは今まで見てきた中で一番の笑顔で俺を見ている。
「覚えてるぅ? 私が最初に飲ませた飲み物のことぉ」
「あの砂糖水みたいな…………」
いつまでこの状態でいるのだろうか。
もうそろそろ俺の鼓動が止まりそうなのだが。
「うんうん。あれねぇ。私の体液なのぉ」
「……………………はい?」
俺の聞き間違えだろう。
流石に初対面の人に出す飲み物が体液なはずがない。ってか体液って何⁉
頭の中でそう自問自答していると、リーシャが急に俺と真顔で視線を合わせてきた。
そして、
「あれぇ。これなのぉ」
リーシャはとろけるような言葉遣いをしながら俺との距離を一瞬でゼロにした。
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